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小説「砂の城」 

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「愛なんて積んでも積んでも崩れていく砂の城みたいだ」未映子の足下に母の死体が転がっていた。咄嗟に逃げようとし何者かに殴られ気を失ってしまう。病院で目覚めた未映子は全ての記憶を失っ…
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#中編

【連載小説】砂の城 最終話

【連載小説】砂の城 最終話

「ずっとああなんですよ」

 モニターの画面を、刑事が顔をしかめて見つめていた。

 医者が刑事に、未映子について説明していた。

 白い部屋の真ん中で、未映子は三体の人形を抱きしめて座っている。未映子は幸福そうに微笑んでいた。

 刑事が出て行ったドアから、車椅子が入ってきた。

「未映子」

 車椅子に座っている狩野は、首に包帯を巻いていた。あの時、奇跡的に助かった狩野は、一週間に一度未映子に

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【連載小説】砂の城 第12話

【連載小説】砂の城 第12話

「俺は二人とも助けたいんだ」

 狩野が叫んだ。

 この男はこんなに感情を見せる人だったのかと未映子は驚いた。

「あの女が殺されたって聞いて、俺はすぐにお前達の仕業だと気付いた。俺が出生の秘密を話してしまったから。それで未映子に会いに行った。そしたら裕真が未映子の夫として、病院にいた。守らなければと思ったんだ」

「いつもいつも未映子を守るんだね。あんたは」

「俺はお前を本当の娘だと思ってる

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【連載小説】砂の城 第11話

【連載小説】砂の城 第11話

「本当にそっくりだよな」

「気持ち悪いぐらいね」

「狩野さんはどうすんだよ」

「一緒に殺して捨てちゃえば」

 誰かが話している声が聞こえる。

 未映子は戻りつつある意識の中でもがいていた。

 未映子が目を開けようとした瞬間、唐突に記憶が溢れ出してきた。せき止められていた記憶が一気に流れ出し、未映子の血の中を巡るような感覚がした。

 映画を観ているように、幼い頃から今までの未映子が記憶

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【連載小説】砂の城 第10話

【連載小説】砂の城 第10話

 未映子は足を踏ん張り、交差点の前に辛うじて立っていた。

 狩野はいない。警察に狩野という刑事はいない。

 狩野はいったい誰なのだ。どうして刑事だと嘘をついて、未映子に近づいてきたのか。

 信号が赤に変わった。未映子は赤だろうが、青だろうがどちらでも良かった。足が動かないのだから。

 ドンっと未映子の背中が強く押された。

 未映子の身体は、スローモーションのように、交差点の中に吸い込まれ

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【連載小説】砂の城 第9話

【連載小説】砂の城 第9話

 悲鳴に近い声を発しながら、未映子はベッドから飛び起きた。

 今のはなんだったのだ。
 夢だったのか。現実にあった事なのか。

 未映子はベッドの下にガラスの灰皿が落ちている事に気付いた。どうしてこれがここに。

 やはり私が母を殺したのではないのか。いや、違う。母は刺されて死んだと狩野から聞いている。

 眠れないまま朝を迎え、霞がかかったような思考の未映子は、何もかも受け入れるしかない気持ち

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【連載小説】砂の城 第8話

【連載小説】砂の城 第8話

 家に戻ってからの未映子は、いろんな感情を押し殺して過ごしていた。

 狩野が調べてくれているはずだという安心感と、裕真が何かボロを出してくれないかという希望で、未映子の心はいっぱいだった。

 怪訝な顔で未映子を見ていた裕真だったが、昨日の自分の失態を隠すかのように、今日の裕真は優しかった。

 話す事も思いつかないので、未映子は何気に今日街で見た女の話をしてみた。

 自分に瓜二つの女がいたと

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【連載小説】砂の城 第7話

【連載小説】砂の城 第7話

 代々木警察署の前に、未映子は立っていた。
 もう一時間近く警察署の前をうろうろしていた。

 確か狩野は代々木警察に配属されていると言っていたはずだ。電話で確認しても良かったのだが、やはり顔を見て安心したいと思い、裕真が寝ている隙に抜け出してきたのだ。

 ふと未映子は、誰かの強い視線を感じた。

 急いで振り返ると、そこには未映子がいた。

「えっ、私?」

 鏡に映った自分を見ていると思うぐ

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【連載小説】砂の城 第6話

【連載小説】砂の城 第6話

 裕真の存在がとてつもなく不快だ。

 夕食が終わり、やっと一人になる事が出来た母の部屋だった場所で、未映子は抑えきれない苛立ちを持て余していた。

 退院してからずっと裕真が張り付いているこの状況が、たまらなく嫌で仕方がない。

 記憶も戻らない、豪邸に連れて来られた、遺産相続、と次から次へと未映子を襲ってくる、この状況も耐えられなかった。

 それに加えて母の部屋はケバケバしく、アルバムで見た

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【連載小説】砂の城 第5話

【連載小説】砂の城 第5話

 狩野との時間は、未映子にとって心躍るものだった。

 刑事と被害者という立場なのだが、何故か狩野はあまり事件の事に触れてこなかった。何をしにきているのだろうと思うぐらい、何も聞かないのだ。

 記憶喪失の私を気遣ってくれているのだろうか。それとも、私を疑っていて心理的に追いつめようとしているのか。

 おかしな刑事だ。

「明日、退院されるそうですね」

 狩野が窓の外を眺めながら、未映子に尋ね

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【連載小説】砂の城 第4話

【連載小説】砂の城 第4話

「何も覚えてないんです」

 そう狩野に伝えると、鋭い目が少し優しくなったように、未映子には見えた。

 その横で、未映子の夫だと言い張る高木裕真が、

「僕の事も?」

 と執拗に聞いてきた。

 聞くというよりも確認しているに近い聞き方に、未映子は違和感を覚えた。

 狩野も同じ感想を持ったのか、また目が鋭くなったように見えた。

 目が好きだなと未映子はまた場違いな感想を持った。こっちが夫だ

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【連載小説】砂の城 第3話

【連載小説】砂の城 第3話

 真っ白な世界。

 未映子は真っ白なドレスを着て、ふわふわと踊っている。五歳の未映子の姿がそこにあった。

「お母さん、可愛いって褒めてくれるかな」

 未映子は楽しそうに踊っている。前を向くと、母親が少しずつ近づいてくる姿が見えた。

「お母さん」と未映子は嬉しそうに手を振った。
 少しずつ近づいてくる母親に駆け寄ろうとした未映子の目に、眩しい光が突き刺さった。

 未映子がじっと目を凝らして

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【連載小説】砂の城 第2話

【連載小説】砂の城 第2話

 背後に誰かの存在を感じた未映子が、恐る恐る鏡越しに見てみると、鏡の奥には誰もいなかった。

 こんな状況なのだから神経がピリピリしているのだ。未映子は、擦りすぎて皮膚がめくれてきている手をタオルで拭き、また母がいるはずの居間に戻った。

 居間に戻ると、まだ母はそこで死んでいた。
 死んでいる母は醜かった。目を見開き、口をだらしなく開けている母は、もう未映子の知ってる母ではなかった。

 何気

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【連載小説】砂の城 第1話

【連載小説】砂の城 第1話

 私は、この世の中で母親が一番苦手だ。

 自分が産んだというだけで、子供を思い通りに動かそうとする人間。そして思い通りにいかなかったときは暴れる。全勢力を駆使して、私の未来を阻んでくる。

 愛なんてなくても生きていける。そんな目に見えないものは何の足しにもならない。そういう孤独な意識を、私に深く植え付けた母親。

 愛っていったいなんなんだろう。人は簡単に愛を口にするけれど、それは本当に愛なの

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