言の葉の庭
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2013年の日本のアニメーション映画。靴職人を目指す15歳の男子高校生と、雨の庭園で出逢った年上の女性。二人が雨の日だけの逢瀬を重ね、心を通わせてゆく姿を描いた恋の物語です。英題 "The Garden of Words"。
監督は、『君の名は。』、『天気の子』などのヒット作で知られるアニメーション作家、新海誠(しんかい・まこと)。
新海誠作品との出逢い
日本アニメーション界が世界に誇るトップクリエイターといえば、スタジオジブリの宮崎駿監督。
わたしは、この先、宮崎駿さんに続く次世代のクリエイターたちが出てきて、どんどん素敵な作品を創っていってくれるとうれしいなぁ……なんて、個人的に期待しています。
そんなところへ――
と現れたのが、本作『言の葉の庭』の作者、新海誠さんでした。
最初の「おっ♩」は、“地図に残る仕事” の名コピーでお馴染み、大成建設のCMを観た時。
新海さんは、2011年から大成建設のアニメーションCMをずっと手掛けていて、上の動画は最初の「ボスポラス海峡トンネル」篇。
とにもかくにも「画」(え)の力! 背景も、人物も、タッチが繊細で
/
超綺麗じゃないですか~!
\
かく言うわたくし、アニメーション作品の風景の美しさでは、ジブリが至高だと思っておりまして。特に、『となりのトトロ』など、多くのジブリ作品で美術監督/背景を務められた男鹿和雄さんの画が大好き!(画集も持っています!♡)
そのわたしのセンサーに「ピピッ!」と反応したのが、新海誠さんの大成建設のCMでした。
「これはぜひ、作品を観てみたいな♩」と――。
見惚れるほどの美しさ
そうして最初に観た新海誠作品が、本作『言の葉の庭』。風景描写の美しさは、CMで見初めたわたしの想像を超えていました。
本作は「雨」が重要なモチーフになっていて、監督ご本人も
とインタビューでおっしゃるほど、作品を形づくる上で大切な要素なのですが――
見て~! 「高画素カメラで撮ったのでは?」と見紛うばかりの美しさ!
滑らかな、水面!
音が聞こえてきそうな、水滴!!
干渉し合う、波紋!!!
梅雨の季節から初夏にかけての、匂い立つような樹々の緑も、これまた息を呑むほどに美しい……♡
タイルに打ちつける細い雨。雨の日の公園の匂い……。
いかがですか? 美しいでしょう~?
ご紹介した画像は、本作のシーンのごく一部。舞台となる新宿の駅や街の描写、学校や登場人物の部屋など室内の描写も、細かく描き込まれていて本当にうっとりするほど綺麗です♩
あなたは、サボったこと、ありますか?
本作の主な登場人物は、こちらの二人。
・・・
・・・
高校生のタカオ。社会人とおぼしき若い女性、ユキノ。二人が出逢ったのは午前中の雨の庭園でした。
タカオは制服姿。ユキノは OL 風のジャケットスタイル。平日の朝。駅のラッシュの人波から離れ、静かな、ひと気のない、その場所へ。――二人はそれぞれ “サボる” 時間を過ごすため、そこへやって来たのです。
雨の日の午前中、タカオは学校をサボる。
雨の日の午前中、ユキノは仕事をサボる。
・・・
「サボる」――なんと自由で甘美な響きなのでしょう!笑
あなたは、仕事や学校をサボって、自宅以外のどこかで時間を過ごしたこと、ありますか?
わたしは、あります。(キリッ!)笑
サボり歴には、なかなかの年季が入っておりますよ~。中学生の頃に始まって、会社員を辞める(2018年)まで。「なんだか今日は行きたくないなぁ……」という日が時々あって、わりとちょいちょい、サボっていました。言うなれば、ちょっとした “サボりのプロ”(?)です!笑
・・・
前にわたしが書いていた「お散歩ブログ」を見ても、その片鱗がそこここに表れています。
こちらの記事では、中高時代のサボりエピソードがチラリ。
この日も会社をサボってるし、
この日もサボってる……
果ては、ディズニーランドに行く、リッツカールトンのラウンジでお茶する―― など、“サボりのプロ” ぶりを発揮したお散歩記事を他にもいくつか発見したのですが、なんだかわたしの社会不適合ぶりが露見してしまい、好感度が下がるのも悲しいので、このへんでやめておこうっと……。(小声)
サボり時間は、人生の「雨宿り」
タカオとユキノ。彼らは、それぞれの人生で、それぞれの事情と心情を抱え、同じ時間、同じ場所にやって来た者同士。最初は偶然。そして、回を重ねるごとに「あの人に会えるかも……」という期待も芽生え――。
出逢いから始まって、だんだんと心を通わせてゆく二人の様子が、小説のように繊細な表現で描かれてゆきます。
学校。仕事。バイト。毎日毎日、行かなくてはならない場所。繰り返されるルーティン。押し流される日々の中で感じる、やるせない想い、孤独――。
作中では、もうひとつの重要なモチーフ「靴」に絡めて「歩き方を忘れた」という言葉で表現されていましたが、そんな状態になる時も、人生にはありますよね。
・・・
わたしの場合、これまで何かをサボって過ごした時間の中で、得られて一番うれしいと感じたのは
だったように思います。何かに、どこかに、“属している” 時のわたしは、どこか窮屈で、居心地が悪くて――。サボって “個” に戻った時、自由で、一番自分らしいわたしを感じられたのです。
万葉集の歌
本作には、万葉集の歌も登場します。印象的なので、ぜひ注目してみてくださいね。柿本人麻呂の、こちらの歌――
現代語に直すとこんな感じ。
万葉集に収録されているこの歌は「問答歌」になっていて、女性からの上記の歌に対して、男性からの返歌もあるのです。
きゃー! 情緒があって良いですねぇ。“恋” だなぁ! きゅんとします♩
・・・
新海誠監督の恋愛観については、のちに『秒速5センチメートル』を観て、どうにも女々しい印象が拭えず、
「解せぬ!!」
となった(笑)わたしです(それ以来、どうも新海作品には手を出せず、人気作の『君の名は。』も『天気の子』も観ていません……)が、『言の葉の庭』は、もう一度観ても良いなぁ、と思えるくらい、素敵な作品です♩
▼ 新海誠監督の関連作品
▼ 全作品インデックスはこちら
いただいたサポートは、大切にわたしの「しあわせ時間」に役立てます。いつもより多く映画館へ行けるかも♩