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シング・ストリート 未来へのうた

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2016年のアイルランド映画。舞台は80年代のダブリン。不況のあおりを受け、荒れた公立学校に転校した少年が、一目惚れした美少女の気を引くためにバンドを結成。音楽に没頭するうち変化していく彼の姿を、80年代のヒット曲と共に描く音楽青春映画です。原題 "Sing Street"。

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監督は『ONCE ダブリンの街角で』、『はじまりのうた』のジョン・カーニー。出演は、主人公「コナー」役にオーディションで選ばれた新人フェルディア・ウォルシュ=ピーロ。共演に、『ボヘミアン・ラプソディ』のルーシー・ボイントン、『ミッドサマー』のジャック・レイナー、マーク・マッケンナ、ほか。

あらすじ(ネタバレなし)
1985年、大不況にあえぐアイルランドの首都ダブリン。14歳の少年コナーは、父親の失業により荒れた公立校への転校を余儀なくされる。両親はケンカが絶えず、家庭は崩壊の危機。転校先の学校でも早速イジメの標的に。
最悪な毎日を過ごすコナーにとって、唯一の楽しみは、音楽マニアの兄ブレンダンと一緒に TVでミュージックビデオを観ることだった。
そんなある日、コナーは街で見かけた美少女ラフィーナの大人びた魅力に心を奪われ一目惚れ。モデルを自称する彼女に、思わず「僕のバンドのビデオに出ない?」と誘ってしまう。慌ててメンバーを集め、即席のバンドを結成して猛練習を開始するコナーだったが――。

もはや好きすぎて、何から伝えて良いのか……笑

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2019年12月からコツコツ書き続けてきたこの映画 note。のんびりペースの更新ながら、掲載している作品数も徐々に増えつつあり、おかげさまで160作品を超えました!(当記事で161作目!)

通りすがりに記事をみつけてくださったあなたも、フォローしてくださっているあなたも、みなさまに「ありがとう」♩

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こうして毎回、感想ツイートの古い順に一作品ずつ書いていると、

ほんとうに、ほんとうに、大好きな作品

のことを書く回が(まぁ、当たり前ですが)訪れます。そうするとね、困っちゃうんですよ。

あまりにも大好きすぎて、「沢山ある好きな要素を、どこから書き始めて良いのかどういう順番で記事にまとめれば良いのかわからない」から。笑

そういった作品は、過去の例でいうと、こういうの。

大好きであるがゆえの、あふれる想い収拾つけられない。笑

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――というわけで、できるだけ、わかりやすくお伝えできるよう、頑張って書いてみますね。まずは、この作品との出会いから。

本作が公開されて間もない頃、こんなツイートをしています。

その二日後には、劇場へ。直感で「コレ!」と感じた事柄に対しては、わりと行動が早いわたし。笑

鑑賞後のご機嫌な様子♩

その後も、お気に入りのサントラ曲好きなシーン、わたしなりの “推しポイント” などを折にふれてつぶやいているのですが、いかんせん数が多かったので、もう、だったら「ひとつにまとめちゃえ!」と。笑

こちらの Twitter モーメントにまとめました。じゃーん!

映画『シング・ストリート』を愛する、もりはるひのツイートまとめ

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ちなみに Twitterでは、映画関連のハッシュタグ企画に参加することが時々あるのですが、「30DayFilmChallenge」の時には「サウンドトラックが好きな映画」として本作『シング・ストリート』を挙げていますし、マイ・「オールタイム音楽映画ベスト10」にも本作を入れています。

80年代UK音楽=わたしの青春

ここで、『シング・ストリート』の公開を知った当時のツイートを振り返ってみましょう。

『シング・ストリート』という映画が何やら気になる。どこで観られるのか調べてみよう。

"何やら気になる"。わたしのアンテナは、80年代のブリティッシュ・ミュージックに反応したのでした。

本作では、80年代のヒット・ナンバーが沢山使われています。(デュラン・デュランザ・ジャムザ・キュアーホール&オーツ、等)

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Rio(1982年)/Duran Duran

うわぁー懐かしい! わたくし、まさにジャストです! デュラン世代です♡

この、デュラン・デュランの『Rio』。当時わたしもバンドでコピーしましたよー! テンポの速い曲で、イントロのところ、タムさばきが難しいんですよね。(本家ロジャー・テイラーを尊敬しちゃう♩)

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ここで、ちょっとだけ脱線エピソードを――

実はわたし、中高とも女子校育ちなのですが、当時、本作の主人公「コナー」と同じようにバンドを組んでいました。担当はドラム。文化祭でのライブに向けて、放課後も、休日も、メンバーとスタジオに集まって練習したっけ――。

せっせとバイトして、ドラムセットも買ったなぁ。憧れのドラマー、スティーヴ(*)と同じ TAMAブルーのドラムセット! 高価なプロ仕様モデルはバイト代ではとても手が届かないので、お安い入門用キットだったけれど。笑

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*スティーヴ・ジャンセン/Steve Jansen(Twitter
80年代に美麗なルックスで人気を集めた英国のバンド「Japan」のドラマー。中高時代のわたしは自他共に認める彼の大ファンで、英語の授業ではイギリス発音(British Accent)の習得にこだわり、「いつかスティーヴと結婚する!♡」と信じてやまない少女でした。笑

ところが、せっかく苦労して手に入れたドラムセットも、自宅には置けない(団地住まいなので叩けない)ので、学校の先生と交渉して、用具室のような空き部屋に置かせてもらうことになるのですが――。若気の至り。ああ、青春。

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デュランの他にも、作中ではこんな80'sサウンドが登場。

Town Called Malice(1982年)/The Jam

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In Between Days(1985年)/The Cure

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Gold(1983年)/Spandau Ballet

スパンダー・バレエ
ニュー・ロマンティック!
第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン!
(刺さる人にはとても懐かしいワード。笑)

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Maneater(1982年)/Daryl Hall & John Oates

ホール&オーツはイギリスのバンドではないけれど、80年代の洋楽を語る上で欠かせないグループですよね。わたしも大好き♩

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これらの楽曲のほか、a-haデペッシュ・モードジェネシスジョー・ジャクソン――などなど、いろんな音楽に言及するシーンも出てきたりして、わたしたちの世代にはたまらない!

フィル・コリンズを聴く男に女は惚れない

なぁんて、兄ブレンダンの独断による評価もあったりして、笑えます。(わたしはフィル・コリンズ、好きですけどね♩)

ジョン・カーニーという監督

本作の監督、ジョン・カーニー(John Carney)について少し。1972年、アイルランドのダブリン生まれ。わたしとほぼ同世代です(5つ年下)。『シング・ストリート』は、80年代をダブリンで過ごした彼の半自伝的な内容なのだそう。

YouTube のインタビュー映像より。

本作のタイトルにもなった「シング・ストリート」(Synge Street, Dublin)は、ダブリンに実在する場所で、

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主人公のコナーが転校するという設定の Synge Street CBS(シング・ストリート・クリスチャン・ブラザーズ・スクール)も、ダブリンに実在する学校です。カーニー監督自身も、ここの卒業生なんですって!

作中にも描かれていますが、これがコナーたちの結成したバンド名の由来になります。学校名の "Synge Street" をもじって "Sing Street" というわけ。

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しかも、カーニー監督は、映画監督の前はプロのミュージシャンだった方。アイルランドのバンド「The Frames」の初代ベーシストとして在籍していました。

そんなカーニー監督だからこそ、バンド活動の楽しさ創作過程や音楽への愛を描かせたらピカイチなんですよね!

ほかの代表作『ONCE ダブリンの街角で』(2007年)、『はじまりのうた』(2013年)でも、音楽を通して心通わせてゆく人々を描いています。

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わたしは本作『シング・ストリート』ですっかりジョン・カーニー作品にハマってしまい、続いて『はじまりのうた』も鑑賞。

こちらも良かった! すっごく好み

『ONCE ダブリンの街角で』はまだ観られていないので、機会をみつけて、ぜひ観たいです♩

コナーたちの青春模様に、きゅんきゅん♡

いつにも増して前置きが長くなってしまいました。「やっとかい!」と総ツッコミを受けそうですが、本作の登場人物のご紹介を。

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コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ/左から3人目)
主人公。ダブリンに住む14歳の少年。両親、兄ブレンダン、姉アンの5人家族。不況により父が失業し、学費の都合で私立校から公立校へ転校することに。転校早々、規則に厳しい校長やいじめっ子のバリーに目を付けられる。散々な初日に声を掛けてきた自称「校内コンサルタント」のダーレンと仲良くなる。街角で一目惚れしたラフィーナの気を引くため、急きょバンドを始めることに。
ダーレン(ベン・キャロラン/一番右)
「校内コンサルタント」を自称してコナーに声を掛ける。要領が良く、転校生のコナーに荒れた校内での処世術を伝授する。バンドを組んでからは、マネジメントを担当。
ラフィーナ(ルーシー・ボイントン/左から4人目)
コナーたちが通う学校の校門の前に佇んでいた謎の少女。学校には行っておらず、大人っぽい雰囲気の自称「モデル」。コナーから「(モデルなら)僕のバンドのビデオに出ない?」と誘われ、MVの制作に参加する。
エイモン(マーク・マッケンナ/右から3人目)
「楽器に万能な人物」としてダーレンがコナーに紹介。バンドに加入する。自宅でウサギを何羽も飼っていて、可愛がっている。ギター担当。コナーと共同でオリジナルの曲づくりも行う。
ンギグ(パーシー・チャンブルカ/左から2人目)
「町で唯一の黒人」としてダーレンがコナーに紹介。バンドへの勧誘理由は「黒人がいた方がクールだから」。キーボード担当。
ギャリー(カール・ライス/右から2人目)
学校の掲示板で「バンドメンバー募集」の張り紙を見て加入。ベース担当。
ラリー(コナー・ハミルトン/一番左)
学校の掲示板で「バンドメンバー募集」の張り紙を見て加入。ドラム担当。

寄せ集めのバンド・メンバーたち。中には、楽器を手にするのも初めて――という超初心者も。最初の頃の練習風景など、演奏が本当にたどたどしい。まるで、中高時代のわたしのバンドを見ているよう……笑。でも、経験者だからこそ、バンドの成長がとてもリアルに描かれているのがわかります。

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彼らの練習場所は、エイモンのお家。エイモンの父親の職業柄、楽器が豊富に置いてあるため。

大人ぶってカッコつけたくて、でも、まだどこか幼くて――という、思春期の男の子たちの様子が観ていて何とも甘酸っぱいのです。自分の青春時代と重なって、胸が “きゅん” としてしまう♩

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コナーが恋する相手・ラフィーナを演じたのは、ルーシー・ボイントン

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不景気で停滞しているダブリンを離れ、華やかなロンドンでモデルとして成功することを夢見ている女の子。ラフィーナやコナーたちの会話から、当時のアイルランドとイギリスの差、近くて遠い隣国イギリスへの憧れがうかがえます。

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数年後、大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)を観た時、フレディ・マーキュリーの恋人役の女優さんが「どこかで見たことある顔だなぁ……?」と思っていたら、後になって「あ、『シング・ストリート』の! あの人か!」と気づいて驚いた記憶が。主演のラミ・マレックと実生活でもカップルになって、話題になりましたね。

エイモン推しです!♡

『シング・ストリート』といえば、コナー少年も良いのですが、わたしのイチ推しキャラは、なんといってもマーク・マッケンナ演じるエイモン!♡

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2020年代の今となっては “ダサい” アイテムの代表選手とも言える(オタク・キャラが着ている衣装などでよく目にします)、ダブルブリッジのメガネ! そして、ケミカル・ウォッシュ・デニム! しかも上下!笑

でも、この「センス」とか「洗練」とは程遠い “ダサ可愛い” 感じが、エイモンの優しい人柄と合っていて、すごく好き♡ 彼はきっと、めっちゃ “いいヤツ”。

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お家では、たくさんのウサギを飼っている! 甲斐甲斐しく世話をしている様子のエイモン。コナーが訪ねると、ウサギを抱っこして登場♩笑

ここから続くエイモンとウサギのシーン、とても好きです♡

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もうひとつ大好きなのは、バンドのオリジナル曲 "Up" がだんだん出来上がってゆくシーン

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最初は、曲のアイディアを出し合っているコナーとエイモンの様子。そして、カメラがぐるりと回りながら、少しずつ他のパートが加わってゆき、バンド全員での演奏へ――。

ここ、ほんとに素晴らしいなぁと思います♩ ちょっと “じぃ~ん” としてしまう。

バンドで楽曲を創り上げていくことの楽しさ、その時間に対する愛しさ―― そんなものが伝わってくる、ジョン・カーニー監督らしい素敵さが詰まったシーンではないでしょうか。

バンド全員で "Up" を練習している時、エイモンのママが差し入れのお茶を運んでくるんですよね。曲にノッているママが部屋を出て行く時に、つい、いつもの調子でエイモンに “ある愛情表現” をするのですが、思春期の男子らしく、すごーく迷惑そうな反応をするエイモン――。笑

そんな描写も、大好きなポイントのひとつです♩

オリジナル・サントラ曲も粒揃い!

元バンドマンのカーニー監督が手掛ける本作のサウンドトラックも、良曲が揃った名盤です。

デュラン・デュランの "Rio" など、前述した80年代の名曲のほか、コナーたちのバンド『シング・ストリートが演奏するオリジナル曲は、こちら。

The Riddle Of The Model
Up
To Find You
○ A Beautiful Sea
○ Drive It Like You Stole It
Girls
○ Brown Shoes

・・・

わたしが特に好きなのは、80年代の香り著しい "The Riddle Of The Model" と、物語の重要なシーンで演奏される "Drive It Lile You Stole It"!

本当はぜひ動画でご紹介したいのですが、本作の大きな見どころでもあり、未見の方にネタバレなしで楽しんでいただきたいので、グッとこらえて――

観る度に “グッときて” しまう人。笑

このシーンは、ぜひぜひ本編でお楽しみください。

For Brothers Everywhere(すべての兄弟たちに捧ぐ)

主人公コナーのバンド活動や恋を中心に「音楽」や「青春」がテーマとして描かれている本作ですが、もうひとつの大きなテーマが「兄弟」。

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コナーの兄 ブレンダン(ジャック・レイナー)。彼が重要なキーパーソンなんですよね。

まだ充分若い年代でありながら未来に希望を持てず、引きこもりのような生活を送るブレンダン。

ですが、コナーにとっては “音楽の師匠” であり――

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また、不仲な両親を持つ “円満でない” 家庭においては3兄弟(長男:ブレンダン、長女:アン、次男:コナーの2男1女)の中で一番長い年月その環境を生き抜いてきたサバイバーなのです。

「俺は “イカれた家族” って密林を、たった一人で切り拓いて歩いてきた」
「末っ子のお前は、俺が切り拓いた道を辿ってきたんだ」

と、ブレンダンが感情を爆発させるシーンに、思わず涙。(わたしも二人姉弟の長子なので、上のお兄ちゃんの気持ち、痛い程よくわかります……)

この家の中で子供が経験するつらいこと――その多くを兄ブレンダンがひとりで受け止めてきたからこそ、中間子のアンや末っ子のコナーが経験せずに済んだのですね。

長子の立場、下の弟妹の立場、どちらの目線で見ても切ないエピソードで、深く心に残ります。

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全編を通して、ブレンダンの達観した発言や、家庭内での存在の大きさを感じたあと、最後に映し出される文字――

For Brothers Everywhere(すべての兄弟たちに捧ぐ)

これには胸が熱くなってしまいます。涙

この言葉には、カーニー監督の亡くなった兄である「ジム」へ……という追悼の意味も込められている、と知り、さらに胸熱。

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コナーとラフィーナが乗るボートには "JIM" の名が……!

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直感に従って劇場へ観に行って良かったなぁ、と心から思う作品です。気になった方は、ぜひ♩

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