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ギルバート・グレイプ

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

1993年のアメリカ映画。アメリカ中西部の小さな田舎町。生まれてから一度も町を出たことがない青年ギルバート・グレイプが、父親の代わりに傷ついた家族を守り、出口のない暮らしの中で旅の少女と出会う姿を描いたヒューマン・ドラマ作品です。原題 "What's Eating Gilbert Grape"。

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若き日のジョニー・デップレオナルド・ディカプリオが兄弟役で共演している貴重な作品。二人とも本当に素晴らしい演技を見せていて、それだけでも観る価値があります!(当時19歳だったディカプリオは、本作の演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています)

監督は『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985年)、『やかまし村の子どもたち』(1986年)、『サイダーハウス・ルール』(1999年)、『僕のワンダフル・ライフ』(2017年)のラッセル・ハルストレム

やるせないギルバートの日常

主人公ギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)は 24歳。大型スーパーマーケットの進出により寂れてしまった、夫婦経営の小さなグロサリーストア(食料雑貨店)に店員として雇われています。

お店の常連客であるカーヴァー家の奥さんは、夫と二人の子どもを持つ主婦ですが、よくギルバートを配達に指名してきます。お目当ては、配達に来たギルバートとの “火遊び”。
恋愛関係ではないものの、拒否するでもなく、誘われるがまま応じてしまうギルバート。偶然帰宅した夫のカーヴァー氏も、薄々、妻の不倫を怪しんでいる様子。

田舎の町で、実家住まい。家族は5人。

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父は17年前に首吊り自殺。母ボニー(ダーレン・ケイツ)はそのショックから過食になり、鯨のように太ってしまって(精神的にも肉体的にも)家から出られない生活が7年間続いています。

弟のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)は知的障害を持っており、ちょっと目を離すと町の給水塔に登ってしまったりするので、いつもギルバートがそばにいて世話をしなくてはなりません。

料理などの家事は、動けない母の代わりに姉エイミーがこなしています。妹のケイトは思春期真っ盛りで、おしゃれが一番の関心事。しばしば反抗的な態度をとることも。

母、ボニーのこと。

グレイプ家の面々でわたしが一番びっくりしたのは、肥満の母、ボニー! 
ダーレン・ケイツという女優さんが演じています。

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お顔は可愛らしいのですよ♩

彼女の “鯨のように” ビッグな体型のインパクトもさることながら、夫の突然の自殺がきっかけで、家から出ず、ひたすら食べ続けた結果、リビングのソファから動けなくなる程に太ってしまった……という設定が衝撃的でした!

というのも、わたしも以前、息子を出産してからの産後太りや、メンタル不調による “やつれ痩せ” からの “反動太り” など、心の安定を「食」で代わりに満たすような太り方を何度か経験しているから。

良いとか悪いではなく、心の状態と肥満って、とても深く関係しているなぁ……と、身をもって経験しているのです。

それゆえ、本作のボニーが抱えてきた心の「痛み」「つらさ」は、いったい如何ばかりか……と感じたのが、ひとつ。

・・・

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こんなふうにソファに “でーん” と座ったまま 365日動かないんですよ。夜寝るのも、このソファ。

家族みんなでの食事タイムには、ママのいる位置までダイニングテーブルを子どもたちが移動させてくるのです。

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動かざること山のごとし!笑

そんなグレイプ家の日常を、実に淡々と、まさに日常茶飯事としてさらっと描いているのです。

この家庭には「の役割をする人もの役割をする人も不在なんですよね。

だから、長女エイミーと次男ギルバートがその代わりをするしかない。(長男もいるのですが、既に独立して家を出ています)

働いてお金を稼ぎ、家事をこなし、障害のある弟の面倒を見て、その上、動けないママのお世話やメンタル面のフォローまで……。

しんどい。しんどすぎる。涙

それもこれも、ママが心の痛手を癒せぬまま、今の “どん詰まり” のような状態まで落ちてしまったことが発端なわけで。(ママは悪くないけれど)

そう考えると、子どもたちに要らぬ苦労をかけてしまっていることについての、ママの心の中にある自責とか自己嫌悪たるや、さぞ苦しいものだろうなぁ……と。

もちろん、本来ならば、自死遺族の心のケアって、うんとうんと手厚いサポートが必要なはず。このような団体やサイトがあるくらいですから。
全国自死遺族総合支援センター
グリーフ・サバイバー

親とはいえ生身の人間ですもの。子育てする長い年月の中では、ちゃんと元気に “親(オヤ)業” ができない「状態」の「時期」もあるでしょう。

けれど、真面目な人ほど、そういう時、子どもに対して罪悪感を感じてしまうんですよね。(メンタルヘルス的には、かえって悪循環なのですが……苦笑)

今のわたしは良い感じで肩の力を抜けるようになりましたが(というより、抜きっぱなし……笑)、本作を観た当時は自分を責めるような思考の癖を持っていたこともあり、ボニーに罪悪感を投影していたのかもしれません。

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複雑なボニーの役柄を見事に演じたダーレン・ケイツさんですが、2017年にお亡くなりになっています。当時はディカプリオも追悼メッセージを寄せたりして、話題になりましたね。

ディカプリオの演技が素晴らしい!

アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた、本作のレオナルド・ディカプリオ。

本当に素晴らしいお芝居をしています!!

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わたしが一番推したいのも、そこ!
ディカプリオの演技力、卓越しています。

こちらのトレーラーをご覧ください♩

天才か!!

レオ…… 恐ろしい子!笑

本作を鑑賞済でネタバレOK の方は、こちらの「ディカプリオのシーンまとめ動画」もどうぞ♡(これ観るだけで泣けます!涙)

原題の意味(What's Eating Gilbert Grape)

本作の原題は "What's Eating Gilbert Grape"。直訳すると

「何がギルバート・グレイプを悩ませているか」

という意味です。

「ギルバート・グレイプは何を食べているか」
"What's Gilbert Grape Eating?"

という意味に間違えやすいけれど、そうではないのですね。笑

"be eating" で「イライラさせる」「悩ませる」という口語表現があるんですって!

○ 例文
"What's eating you?"
「何を悩んでるんだい?」

という具合。
洋画は英語の勉強にもなりますね♩

風を吹き込む女の子、ベッキー

トレーラーハウスで祖母と旅行中、車の故障によりギルバートの町にしばらく滞在することになった女の子、ベッキー(ジュリエット・ルイス)。

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何もかもが停滞し煮詰まったギルバートの世界に、外側から新しい風を吹き込む役どころです。

ジュリエット・ルイス
ショートヘアと、このプリッとした唇の感じが懐かしい!

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彼女の出演作はそんなに沢山観ているわけでもないのに「懐かしい!」と感じるのはなぜだろう?――と考えてみたら、『トゥルー・ブルース』(1990年)でブラピと共演していたからですね!(以前はブラピの大ファンだったので)

ブラピ、若いわぁ~。(そして細い!)

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終始やるせなさが通奏低音のように漂っている本作ですが、そんな中で救いになる要素が二つあります。

ひとつは「アメリカの田舎町の長閑な風景」。

そして、もうひとつは「ギルバートの世界に風を吹き込み、変化をもたらすベッキーの存在」。この物語の中で、とても重要な役割です。

心に残る一作

物悲しいストーリーではありますが、観た人の心に必ず残る作品だと思います。何より、ディカプリオの名演技! しつこいようですが、本当に素晴らしい。一見の価値はありますので、機会がありましたらぜひ♩


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