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いつか忘れてしまう私へ

私でさえも。
私でさえも忘れていくんだ、今の私のことを。
今の私の内側で、燻っている弾けるような感情を。言葉にならないけれど、確かにある感情を。

5月の若葉が風に光って、その中に私が立っている。風の一部。地球の一部である実感。
心の中いっぱいに、そんな甘酸っぱい感覚が溢れても、それは決して言葉になんかできやしない。

こんなに毎日、身がよじれるような苦しみや絶望に耐えている。事実は小説よりも奇なりなんて、誰が言った。訳のわからないことばかり起きて、人々は右往左往している。私も一緒になって揺れている。いつからこんな私になった。
いつからこんなに息苦しいの。

通学路に揺れるランドセルの群れに、幼い頃の懐かしく甘やかな日々を重ね、そっと心を寄せている。いつから変わってしまったの。私もあの子も。

歳を重ねると、図太くなると誰かが言った。
今悩んでいることなんか、どうでもよくなるよと。そっか。強くなれるのか。
でも、忘れてしまうのは。それはいやだな。
私はたくさん悩んでいた自分のことを、こんなに愛しくて可哀想な自分のことを、生涯忘れたくなんかないのだ。
甘っちょろくて世間知らずの純粋な女の子。
素直が取り柄で、飽き性な女の子。
ことあるごとに引っ張り出して、ああ脆くて強くて儚いあの子を。
綺麗だなって眺めたいのだ。悪趣味。

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