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スプリング・タイム・ノート

どういうわけか、知らないうちに、私達は大人になっていた。 確かにもう、10代や20代前半の頃のような無理はしない。朝まで通話ボタンを繋ぎっぱなしにしながら眠るなんてこともなく良質な睡眠を優先したいし、真夜中過ぎまで飲みすぎて楽しくなっちゃうなんてことも稀になった。焼肉食べ放題よりもちょっと良いお肉を少量ずつ食べたほうが心がちゃんと満足するようになったし、マクドナルドに行ってもバーガーを2つも頼むなんてことはもうしない。高い税金を納めながら粛々と、社会人生活を生き抜いている。

「大きい主語」が奪うものと救うもの

いつからか、主語の大きさを意識する機会が増えました。「大きい主語」という言葉の意味自体はフラットですが、「主語が大きい」「大きい主語を使わないよう気をつける」など、どちらかといえばネガティブな要素を伴った文脈で使われる表現な気がします。 実際は個別具体的な話をしているにもかかわらず、「日本人は」「男性は」など、属性の問題であるかのように一括りにして一般化するケースが典型です。ほかにも「社会人なら常識だ」「世間が許さない」など、個人の見解をあたかも普遍的な規範のごとく語るケー

十月、ジターバグ、この街の跳び方。

渋谷のハンバーガー屋さんでトイレを借りた。 ドアを開けると見たこともない光景が広がっていて、思わず尿意も引っ込む。 「好きな場所のを使ってください」って、ことなのか。それとも、トイレットペーパーを使ったアートのつもりなのだろうか。収納場所のない狭いテナントを逆手にとった「それならば魅せよう」という工夫なのだろうか。 東京は、「分からない」ことが多い。 東京とつけるだけで美味しそうにみえる”東京ナポリタン”がずるい。東京とつけるだけでちょっと高くなっても文句をいわれるこ

ハロー、ちっともエモくない29

 フリルレタスと食パンと栄養ドリンクが入ったエコバッグをぶら下げてダラダラと歩く。ああ、姿勢悪いな、歩き方ダサいな、とちょっと反省して姿勢を正し、颯爽と歩く真似をしてみる。玄関の近くで女の子を右腕に抱いた男性とすれ違う。こんにちは、と互いに頭を下げる。女の子の目の水分が多くてまんまるで吸い込まれてしまいそう。かわいいな。思わず口角が上がる。  二十九歳。たしか、私の母が、私を産んだ年齢。なにかの間違いでこの世界にハローしてもう二十九年。来年には三十歳。みそじ、って言うらしい

30歳になっても、まだ自分の可能性を捨てきれない

幼い頃にずっとテレビで観ていたヒーローたち。世界の平和を守るために悪と闘うことで、世の人たちから賞賛を得る。そんな人たちを観て育ったからか、自分もいつかは世界を救うヒーローになると信じて疑わなかった。でも、歳を重ね大人になっても、ヒーローはおろか何者かにもなれていない。 人間は自分以外にはなれない。そんな当たり前の言葉を言われても、納得できなくて、何者かになるためにもがく30歳になってしまった。 学生時代に読書感想文で賞を取ったことがきっかけで文章にハマった。それ以降、ブ

Q.引きこもりの時期のことを教えてください/ほか日記

と、質問をもらいました。質問してくださった方は、鬱の治療に向き合うことにしたところだそう。今回はちょっと長めに、引きこもりだった時期の話をしてみますね。 わたしが心身の調子を崩したのは、大学3年〜4年のころ。学校を休学したので、みんなよりも1年遅い卒業になりました。心身の調子を崩しはじめてから、なんとなく元気が出てきたような気がする……の時期まで、だいたい1年半くらいでしょうか。数字だけで見ればさほど長くは思えないけど、でもやっぱり、大学時代の1年半というのは途方もなく長く

抽象度に託された意思

「そこまで詳しく伝える必要があるだろうか?」 仕事やプライベートで、こう立ち止まる瞬間は枚挙に暇がない。何も大げさな話ばかりではなく、メールやチャットに付け加えた一言を消したり、敢えてぼかした書き方に改めるなんてことは日々無意識のうちに行っている。 詳しさとは、情報の解像度だ。被写体が何であるかわかる程度のピンボケ写真と、臨場感あふれる鮮明な写真のどちらを渡すか。とりあえずモノトーンに加工し、彩りは後から伝えるか。そもそも、彩りは伝えないか。 ここで言う解像度は、抽象度

3分だけ、独り占めさせてよ

死んだように眠っていた。こういう時は大概夢を見ないものだけど、過去の教室の風景を広がる夢の暗闇に見た。柔らかい光が窓からはいる教室で、中学のときのだっさい灰色のチェックのスカートが懐かしく、次々に昔のクラスメイトが話しかけてくる。でも、その中の一人すらわたしの現実にはもういない。彼らは今、何をしているのかもわからない。 人との会話を、脳内で反芻する癖がある。というより、臨機応変に会話のキャッチボールをすることが苦手なので、あとからゆっくり考えて消化していく作業がどうしても必

家出の先にあった、西の果ての海のこと

「もう連絡とるのやめよっか」。最近の私の心はずっと、すぐにでも崩れそうなジェンガみたいだった。下から4番目の左側の直方体。絶対崩れると分かってたのに、これを抜かれた感じ。ガッシャーーン。ひとり暮らしの部屋の四隅に音がぶつかる。余韻が響く。 君に本を返すため、とりあえず泣きやまないといけない。でも涙が止まらない。喉が渇くのに水が飲めない。お腹が空くのに何も入らない。涙が止まるのに2時間かかった。日付が変わる直前で本を返しに行った。涙を隠すために下ばかり向き、言いたいことを何ひ

届かないタイプの夢

ディズニーランドに行く。 娘の初めてのディズニー。4歳になる前に行けば安くですんだのに、わざわざ4歳になってから、入園料を払って行くディズニー。 できるだけ楽しんでもらいたくて、日夜情報を集める父母。 そうして、何日も前からディズニーを楽しみにしているご家庭はきっとこの日本にごまんとあるだろう。 なんせディズニーリゾートには夢がある。子どもが目をキラッキラに輝かせて夢をみる夢の国。 私もだいすき。一生あそこに住み着きたい。ずっと夢の国に居たい。 そう、ずっと。 仕事を辞め

メリーバッドエンドの物語「星の子」を観て、映画を観る意味を考えた。

映画『星の子』を観た。 2020年に大森立嗣監督によって映画化された、芦田愛菜主演・今村夏子原作の、宗教二世のお話である。 『もし、自分が物心ついた時に、両親が宗教信者だと分かったら』 この映画を観るまで、私は、この状況を想定したことが一度もなかった。宗教二世問題が、旧統一協会の騒動で明るみになる前の鑑賞だった。自分の周りにも、親が宗教に熱心だと漏らす友人はいなかった。 もし、映画・星の子を、あの騒動の後に知って観ていたら、得た感想は、異なっていたのだろうか。ネットの

マリナビジョンを語る2 #呑みながら書きました

ウエェねっむ、ねっむいけど書くぞ。 第13回呑みかきご参加のみなさまありがとうございまsた! こくんちには、告知には書き早稲売れたけれど、今回で4年目に突入したんです。おめでと〜!呑みかき!おめでとー!呑み書きももう3歳だね! 何かこうな。何書こう。そうだ 前回の呑み書きでやったやつ、noteでのビジョンを語るぞ! ってやっといて、結局ビジョンを語らないまま終わったやつ。ので、ビジョンを語ります。ピジョン。ふふ。それは鳩。ふふ。 よくわからんかった去年のnoteフェス

「恋をしているみたい」を英語にしたら

日本語と英語のあいだを行ったり来たりしている。家族とは日本語。外に出たら英語。ニュース、映画、絵本、メール、etcは日本語と英語どちらも。 二つの言語を使う生活で、さらに文章を書いていると「日本語も英語も中途半端だなぁ」と思い悩んだりもする。しかし外国語を通すからこそ得られる日本語の解釈があると気付かされて、ようやく両立が楽しくなってきたのがここ最近のこと。 先日、仕事で記事をチェックしていたら「恋をしているみたい」という一文に出会った。今まで意識したことなかったが、

君の思いが光るとき #真夜中インター

今年の七夕は、晴れだった。 七夕に晴れているの、何年ぶりだろう。なのに、願いごとも曖昧なまま疲れていつの間にか眠っていた。 日付も替わった真夜中に目覚めて、いつものように言葉の海に飛び込む。深く深く潜っていく。 小野 ぽのこさん作成の「もの書き100問100答」に答えるnoteを公開してから、日々ぽつりぽつりと「スキ」の通知が届いている。 同時に、記事内で引用したいくつかの記事にもぽつりぽつりと「スキ」が届いている。 そんな通知に紛れて、記事内で引用したわけではないのに、