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グラレコで解説!『進化思考』

1ヶ月に1回は、アウトプットしたいと思い記事を書いている、はるです。

今回は、Amazonビジネス・経済ランキング1位を記録している、

『進化思考』(著者: 太刀川 英輔)を、紹介したいと思います。

英輔さんの探求の叡智が512ページにギュッと詰まった大作なので、なるべく多くの人に適切に伝わるように、今回は、グラレコを用いて紹介しようと思います。

進化思考との出会い

僕自身が、進化思考と出会ったのは、2018年6月9日、山梨県にあるフフ山梨という合宿所でのことでした。

当時、教員3年目。学校での仕事を終えて、その足で、フフ山梨に向かいました。関わらせていただいていた「コクリ!」キャンプにグラフィッカーとして参加するためです。

コクリ!は、三田愛さんが主催し、日本全国から、地域の活性化や社会運動の大きなうねりを作り出しているチェンジメーカーたちが集まる貴重なプロジェクトであり、コミュニティでした。

その場にいたのが、NOSIGNER代表として、活躍されていた太刀川英輔さんでした。

本にも、書いてありましたが、この日は、進化思考が創造性教育のカリキュラムとして提供される最初の日。言い換えれば、進化思考が、産声をあげる瞬間でした。

英輔さんの口で語られる進化の歴史から学ぶ、創造(当時の僕は、デザインという認識)のワーク。

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その斬新さと、知の巨人たちの思考を読み解きつつ、関連付けて言語化されている英輔さんの思考の質の高さに驚き、それを体現する英輔さんの在り方に心を引かれていたことを強く覚えています。

その日の様子は、コクリ!のHPにレポートが上がっています。ぜひご覧ください。

その後、コクリ!キャンプ建長寺や横浜のイベントで、またご一緒してから、僕自身がすっかり英輔さんのファンになっていることに気付きました。

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そんな英輔さんが、『進化思考』のおわりの章で、読者に対して以下の3つのお願いをされています。

① 自分の手元から創造的な進化を考えてほしい

② 創造性を必要としている人に、この本をあげてほしい

③ あなたの進化思考の探求を、誰かの先生となって教えてほしい

1ファンとして、グラレコを介して、厚かましくも③のお願いをがんばって達成してみようと思います。というわけで、僕史上、初のグラレコによる本の解説、始めます。(以下、敬体から常体に変わります。)


序章・第一章:創造とは何か、進化と思考の構造

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序章

学生時代は、隈研吾さんに師事し、建築家・デザイナーへの道を進んでいた英輔さん。探求の道の一方で、創造という現象について何か大きなものを見落としているのではないかという不安に陥る。

誰が作ったかわからないものを、誰かが改善し続けてできている世界。創造性を発揮している時に幸福を感じる人の心。創造は世界と心に大きな影響を与えている一方で、創造性が専門分化し、矮小化する世界の在り方・デザイナーの在り方に疑問を持つ。

そんな原体験を通して、総合的な創造性を発揮するデザイナーを目指すことを決意。そこから生まれた、真正な問いが以下の6つ。

美しさとは何か?

発想の強度とは何か?

関係をどう捉えるか?

真に作るべきものは何か?

自然の方が創造がうまいのはなぜか?

人が創造する生き物なのはなぜか?


第一章

創造性は、一部の人が発揮するものなのか?という問いには、

「天賦の才を持たざるものでも、創造性を諦めなくていい!」と断言。

天才は、狂人性(変異)と秀才性(適応)を高速で回す癖がついているから創造性を発揮しており、それは、バクテリアを代表とする原始生物の知性にも類似する形がみられる。

そして、進化論を科学的に提示したダーウィンとウォレスの考えをもとに、

創造には、進化と同様に、変異と適応が必要なのではないかという仮説を立てる。

ここで、大事なのは、生物の進化には38億年の歴史があり、人類の創造性の発揮の歴史は、まだ5万年しかないということ。言語の発達と共に、創造性を発揮してきた人類。英輔さんが言うには、創造とは、言語によって発現した擬似進化の能力であり、進化の未完成の代用品である。

それを踏まえて、進化思考を・・・

変異と適応の2つの思考プロセスを繰り返すことで、誰の中にも眠っている創造性を発揮する思考法と定義づける。

そして、英輔さん自身のニーズとして、創造性を全ての人が発揮するために変異が軽視されがちな学校の教育自体をもう一度見直す必要の重要性を説く。


第二章:変異

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創造のプロセスの中で、両輪の1つ「変異」。ここでは、変異をさらに詳しく9つのパターンに分類し、紹介する。

世の中に、完璧な発明も、デザインも、生物も存在しない。創造は間違いに満ちている。

進化は、ランダムな変化の連続から生まれる偶然の産物。変異的な挑戦をしたものだけに訪れる壮大な結果論。

進化の核をなすDNAと創造の核をなす言語は、構造が類似している。だからこそ、進化に学ぶことで創造の構造を解き明かすことができる。

進化でも、創造でも、変異の数を生み、偶発性を高め、先鋭的に突き抜けることが必要。その時に大切なことは、変異にはパターンがあること。そして、挑戦すること。

それでは、言語的エラー・進化の中の変異から分類した変異の9パターンを紹介する。

① 変量

異常な量的な変異を発生させることで、有効な偶発は生まれる。

進化:コウモリの骨格、ミツアリの体 

創造:フェムト秒のシャッター速度を持つカメラ、椅子を長くするとベンチ

② 擬態

学ぶことは真似ること。別の形態に学び、宿すことは、理由そのものを獲得することができる。

進化:フクロウチョウ、コノハムシ

創造:ゴボウの実→面ファスナー、手紙→Eメール

③ 欠失

脳の性質として、欠失はつきもの。何かをなくすこと=生き方の哲学

進化:足のないトカゲ→ヘビ、色の欠失→アルビノ

創造:羽のない扇風機、馬のいない馬車→車

④ 増殖

言語の性質上発生しやすい。増殖する時には、共通のルールが必要。

進化:多指症、牛の胃袋、トンボの目、カタツムリの歯

創造:トランプ、鎖、図書館

⑤ 転移

場所が変わると意味が変わる。別の場所に移す勇気を持つ人だけに、新しい創造に出会う幸運は降りてくる。

進化:タンポポ、イチイヅタ

創造:腕の中にある時計→腕時計、子どもの職業体験→キッザニア

⑥ 交換

言語特有のエラー。言語もモノも交換可能性を前提としている。

進化:ヤドカリの殻、カッコウの托卵

創造:ろうそく→ガス灯、お金

⑦ 分離

概念の膜に包まれている。分離可能性は、純度を高めることにもつながり、代謝を促す。

進化:内臓、トカゲの尻尾、水鳥のワンダーネット

創造:リサイクル、弁当箱、スイッチ、ジッパー

⑧ 逆転

反対の意味の言葉のセット。常識の逆からの発想。

進化:左利き、内臓逆位、アベコベガエル

創造:スマートフォンのインカメ、潜水艦、相対性理論、アップリサイクル

⑨ 融合

言葉に備わっている足算的性質。足しても尚、シンプルな状態を保つ工夫が必要。

進化:真核生物+ミトコンドリア、人+細菌

創造:火薬、スマートフォン


第三章:適応

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変異で出てきたアイディアを磨くのが、適応。適応の中で必要になるのが、解剖・系統・生態・予測の4つによる時空観学習。関係の中に潜む物語に気づくことで、その中にある意図が自ずと形態として現れる。

① 解剖:理解

内部に秘められた機能や作られ方を理解し、モノが備えている可能性を発見すること。形態を解剖して、内部の構成要素を理解する。生理を解剖して、要素間の関係性を理解する。発生を解剖して、本来の特性を理解する。

自然淘汰:張力・最適化・生産性

② 系統:敬意

そのものがどんな経緯を辿って、どう進化を遂げてきたのか。進化図を描き、過去からどう影響を受けたのか探る。分類学で、現在の事象を収集する。系統学で、過去からの流れを理解し、進化図を描く。

自然淘汰:遺伝子プール、遺志

③ 生態:共感

動物行動学で生態系を俯瞰する方法によって、人やモノとの関係性を探り、マクロなシステムとしての構造を発見する。生態系で、人や自然の関係を確認する。5W1Hを使って、繋がりを理解する。生態系マップを使って、普段あまり意識しない繋がりに目を向ける。複雑系で、繋がりの法則性理解する。

自然淘汰:性競争、資源、天敵、赤の女王仮説、生態系の変化、寄生、共生、ニッチ、群れ、越境、ハブ

④ 予測:希望

データから導きだすフォアキャストと未来にゴールを設定するバックキャストによって、未来を現実に近づける。

自然淘汰:回避、希望


第四章・終章:コンセプト、創造性の進化

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第四章

コンセプトは、変異と適応の進化ループが何度も回ることで、自然にそれが一致する圧力が発生し、立ち上がってくる。それは、まるで一組の男女がワルツを踊るようなもの。段々と洗練され、一体化していく。

コンセプトの英語の意味を見ると、コンセプト・構想・受精とある。卵子のもつ遺伝子プール(適応)に精子のもつ多様性(変異)が受精することで出産されるということとコンセプトは、まさに重なり合う概念。

コンセプトに名前をつける時に大切なことは、変異=新しい方法への挑戦と適応=普遍的な理想への願いに分けて考えること。例えば、ナイキの「Just Do it.」は人類への励ましを願う普遍的なところからくるコンセプト。逆に、ナイキの商品名「Air Max」は、変異(特に変量)を意識して名付けられたコンセプト。

適応(WHY、母性的な愛情、好奇心)からコンセプトを作る時には、時空観学習で学んだ願いの総体(出現を待っている声なき声)を新しい言葉に編み上げることが大切。

変異(HOW、父性的な力、遊び)からコンセプトを作る時には、9つの変異パターンを用いて先鋭的なコンセプトを探すこと。そこに生じる新規性と明確さは、願いを具現化するパワーを持つ。

終章

人は、創造によって周囲の生態系を変えられるほど地球史上最強の種になったが、生態系の因果関係や持続可能な共生に関しては苦手なまま。それは、人間中心の世界を作り、遠くの関係性を見て見ぬふりをする大量絶滅時代を招いている。今こそ、利己性と利他性を繋げて、地球との共生社会の創造を最優先で進める必要がある。

それぞれの種が中心になる多中心の世界を作るには、人類が意識を個体から解き放ちどこまで遠くの関係性を見通せるか、繋がりを理解する広大な想像力を持つかが鍵になる。

創造性教育の系譜を見たときにも、今の教育が自然哲学から発生しているのは自明のことであるのに、それを忘れ形骸化している今がある。これまでの時代の中で、厄災に見舞われた時にこそ、人類は創造性を爆発させてきた。今こそ、創造性教育を作り直す時だ!


書き終えて

描き・書ききった.......

この進化思考を多くの人が身につけて、実践し続けることができれば、世界は少しづつ変わっていきそうという確信をもてる論考だった。リクルートのTTPS(徹底的にパクって進化させる)なんかも変異(擬態)と適応を合わせた進化思考の一例だよな...なんてことを考えていた。

本書の中には、様々な進化ワークが載っている。早速、「学校教育」や「職員室の在り方」「授業」などをテーマに取り組んでみようと思う。英輔さんのお願いにあった、自分の手元から創造を考える。

もう進化の第一歩目は始まっている。



使用したグラフィックの画像が見づらい場合は、twitterの方にもあげています。どうぞご覧になって、ご自由にダウンロードしてください。

また、『進化思考』を発売した出版社、海士の風さんのnoteにも、進化思考の解説がいっぱい載っていますので、より多角的に理解したい方はこちらも合わせてご覧ください。


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