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【詩】あなたのことを

夜行バスで帰る
あれほど帰りたくなかった
あの家へ


避けていた
逃げていた
いないものとして


もしかしたら
大丈夫かもしれないと
小さいバラの花束を買って
大事にもって帰る


大きく息を吸い込んで
チャイムを鳴らす
出てきた母の顔は曇っている


気を落ちつけて
バラを渡して
花瓶にでも入れてよと言う僕
面倒くさいもの買ってきたねと
背を向ける母


それまでのこと
そして目の前のこと
何も変わってなかったあの日




トイレ休憩で停まるサービスエリア
イヤホンをつけて暗い車内で聞く
ラフマニノフ
目を閉じても浮かぶ
あの日々


傷つきたくなくて
今回も同じことになる
きっとと
独り言


チャイムを押すと誰もいない
勝手口にまわり戸を開けると
耳の遠くなった母が
台所でコップを洗っている


病気になった
痩せた
小さくなった


コップに牛乳を入れて
好きなんだから飲みなと
ぶっきらぼうにテーブルに置く


大人になった僕に
牛乳を出す母


そんなこと覚えてたんだ



僕は諦めていた



でも



あなたを
いまなら赦せる











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