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一方的に命を嫌っている

年末恒例の大型歌番組の出演者が決まった日、

3つ歳が上の会社の先輩は、初出場の男性アーティストを見て、大いに興奮していた。

よほど嬉しかったのだろう。

席が二つ離れているはずなのに、仕事中ずっと鼻息が聞こえていた。

向暑はるはそのアーティストのことを知らなかった。

”若者から大人気”と誰かが書いた記事の見出しになっていたから、向暑はるはもう若者ではない。

いや、でも同期くんは知っていたから単に向暑はるが流行りに疎いのかもしれない。

会社の飲み会でも、歳が近い人たちよりも父親と同じくらいの人たちの会話に混ざってた方が楽しかったりする。

この前は飲みすぎて”大事MANブラザーズバンド”を先輩の前で歌っていたらしい。

後日、あれはいい歌だよな、と向暑はるではなく歌だけを先輩は褒めていた。

ちょっと悲しいけど、いい歌なのは間違いない。

前向きになれるし、生きてるっていいなって思ったりする。

いつからか流行りの歌というのは、悲観的で反逆的な歌詞が多くなっていて、人々は”逆に”それらに鼓舞されるようになっている。

それだけ世の中が生きづらくなっているとも言える。

”若者から大人気”のアーティストが歌い終わった時、

おばあちゃんは、こわい歌だねえと言っていた。

向暑はるもそう思った。

別にその曲とアーティストを批判しているわけではない。

どちらかといえば、悲観的で反逆的な曲がここまで流行るこの世の中に”こわい”と思ったりした。

人々が命に嫌われているというよりは、一方的に命を嫌いすぎている気がする。

やっぱり向暑はるは自分を鼓舞したい時は、前向きな曲を聴きたい。

・・・それが〜一番大事〜♪

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