他人観察2
「さくらんぼ、苦手なんだよね。」
かんかん照りの太陽は、これから来るであろう夏を爽やかに連想させる。しかし爽やかとは程遠く、空気の蒸した今日も、私は電車を待っている。
「この間親戚の家にいってさ。」
後ろの椅子に座る青年二人組。
メガネの子は、この間親戚の家に行ったらしい。
「葬式?」
恐らく、サコッシュの子は血縁の役割を履き違えているのだと思った。
「違う、さくらんぼを貰いに行ったんだよ。」
サコッシュの子はしばらくの間を空けて言った。
「うちは、そんな行事ないな。」
確かに。そんな行事はないよな。
「でも俺さ、さくらんぼ、苦手なんだよね。」
メガネはさくらんぼが苦手らしい。
「その理由とはなんぞ。」
これは私が書き換えているわけではない。サコッシュは言葉遣いが珍しかった。
「なんかさ、味薄いじゃんか。」
味が薄い。
まさか果物に対する表現だとは思わなかった。
「確かにな。」
この二人は一生親友なんだろうと思った。
「もう少し濃くしてくれればいいのにな。」
この案件、どこに頼めばいいでしょうか。
「確かにな。」
この二人は一生親友なんだろうと思った。
「でも2個付いてるのは得だよな。」
メガネは果実に対する感覚が崩壊しているかもしれない。
「確かにな。」
この二人は一生親友。これは絶対。
読んで頂いてありがとうございました。
暑くなってきましたので、体調にはご留意ください。