戸﨑

【ラジオ扇風機🌀】https://stand.fm/channels/6342bc02…

最近の記事

焦れんま

恐らくこの焦燥感とは、一生付き合っていくのだろう。全く、厄介なものを。 最近、漫才の台本を書いていて思うことがある。 この本は他人が読んでも面白いな。プレイヤーとして他人が演じても面白そうだ。そうしたら、そのときは自分じゃなくても良さそう。 と、こう思う。 素で喋れたらそれに越したことはない。 ただ、素が面白いとは素直に思えない。バス停に列ぶ2人組のように、喫茶店で隣の席になった2人組のように、教室の隅で時計を見ながら話す2人組のような自然さでいたい。

    • 心に溜まるラー油

      ぐつぐつと煮えていたとしたら映えるだろうな。それほど真っ赤になっているようなのだ。それは憤りであり、呆れであり、憂いである。真っ赤になった私の怒りは、呆れで沸点から遠ざかり、憂いで薄くなっていった。ラー油だった。 私は人と適当な日程を決めていた。 今年はM-1に出る。私はコンビで出場予定である。コンビというのは2人、私以外の都合も関わってくることになる。 「M-1とかぶるかも。」 決して実績もないのに本職ぶって出た発言では無かった。それだからこそ余計に引っかかった。

      • 他人観察2

        「さくらんぼ、苦手なんだよね。」 かんかん照りの太陽は、これから来るであろう夏を爽やかに連想させる。しかし爽やかとは程遠く、空気の蒸した今日も、私は電車を待っている。 「この間親戚の家にいってさ。」 後ろの椅子に座る青年二人組。 メガネの子は、この間親戚の家に行ったらしい。 「葬式?」 恐らく、サコッシュの子は血縁の役割を履き違えているのだと思った。 「違う、さくらんぼを貰いに行ったんだよ。」 サコッシュの子はしばらくの間を空けて言った。 「うちは、そんな行事

        • 他人観察

          私は電車を待っている。 四つ並ぶ椅子の端に腰を下ろす。すると先客であったお洒落な老夫婦の会話が耳に入ってきた。 おば様は何やら辺りを見回している。 「今、何分?」 おば様はおじ様に尋ねる。 「さんじゅうろく。」 口を動かすスピードは穏やかであるが、間髪入れずに答えたおじ様。おば様はおじ様の方を見る。 「貴方何?時計でもあるの?」 あたかも知っていたかの様な態度をとるおじ様に、おば様は疑問を抱いたようだった。 「別に何も。ただの腹時計だよ。」 お茶目でした。お

        焦れんま

          浅瀬の感想

          今日6月13日は太宰治の命日。 私は生意気にも太宰文学を好んでいる。しかしながら多くは考えたくない。人生経験の薄さか。はたまた自身の軟弱さが故なのか。どちらにせよ、あまり煮詰めてしまうと全く気が滅入りそうだ。 『朝』 “私”という男は、妻がありながら“キクちゃん”という女の部屋に出入りする。“私”は酒に酔い目覚めるとキクちゃんの部屋。一緒に炬燵(こたつ)に入っている。間違い起こさないようにと張り詰める緊張感の中、蝋燭(ろうそく)の光だけがキクちゃんを照らしている。 めっち

          浅瀬の感想

          似て非なるもの

          徐々に空気が湿度を持ち始めるころ。じっとりと肌に居座るそれらは、六月を最もブルーな月にする。全く、迷惑もいいところだ。 私が右往左往している間、同期や後輩の活動を静かに眺めていた。なんと指も咥えずに。 もし私が野球少年であれば、大谷翔平選手を見てバットを置いている。もしフレンチシェフの卵であれば三國シェフを見てコック帽をとるし、どんな形であろうと人前に立ち続ける同世代を見て辞めようと思った。努力を惜しむつもりはさらさら無いけれど、1番になれる気もさらさらしない。杉下右京もび

          似て非なるもの