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追いつきたい、ひと

透き通るようにすべすべの、
毛穴のひとつ見当たらないミルク色の肌。
窓の外の雪景色と同化してしまうんじゃないかってくらい美しいしろの世界。
ついつい惹き込まれてしまう。触れたくなる。
猫目がちで穢れのない大きな瞳にまっすぐ見つめられるとくらくらする。
授業中、頬杖をついてグラウンドを眺める彼女の横顔を気づかれないように盗み見するのが日課だった。

彼女は勉学も運動も何をやらせてもすぐに人並み以上にできる器用さがあった。
不器用で何事も努力で間に合わせてきた私にとって彼女はずっと超えたくても超えられない存在だった。

また、家の床の底が抜け落ちるくらい膨大な量の本に囲まれて育ったと言っていた。
言葉をたくさん知っていて美しい表現ができる。彼女が書いた文章は私の心を激しくときめかした。
それに多くの分野に精通していて雑学や予備知識に溢れていた。
そう、私は彼女の優れた知性に強烈に憧れ同時に恋焦がれていたのだ。

言葉、知識、音楽、小説。
高校在学中、たくさんのことを彼女から受け取りその度に胸が高鳴った。
彼女が撒いた種は確実に私の中で育ち今の私の根幹を作っている。

「彼女に追いつきたい」

今でもその気持ちに変わりはない。
しかしもう二度と言葉を交わせないし触れることもできない。
私はあれからずっと彼女の幻影を追っているのだろう。
そしてこれからも見えない記憶の中の彼女の背中を追い続けるのだろう。
私は瞼を閉じ忘れ雪に願う。
いつの日か青春の全てを共にした君ともう一度巡り会いたい。

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