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Jリーグ・サンフレッチェ広島の、熱心ではないけれどどうにも離れられない、いちファンのn…

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Jリーグ・サンフレッチェ広島の、熱心ではないけれどどうにも離れられない、いちファンのnoteです。 Twitter : @harotana

最近の記事

まだまだ張り合える

 茶島さんは肉薄した。相手選手のふところに踏み入るくらいまで、プレッシャーをかけた。天皇杯・いわきFC戦でのこと。ぼくにとって大事なことになった。ぼくは自分のことを茶島雄介だとおもって観ているから。だからこのことはまちがいなくぼくにとっての大事なことだった。  スキッベさんが来るまえの茶島さんは、あんな相手選手に迫るようなことはしなかった。相手の前足の、すこし手前くらいで身構えていた。茶島さんはほとんどの場面でハンデを背負わされる。体格差っていうハンデ。だから下手に寄せて力

    • 神秘的な日(vs東京ヴェルディ)

       松本泰志さんのチャントを歌えた時点で"モト"は取った。もうどうとでもしてくれ――ぼくは、味の素スタジアムの柱によりかかって、ただ時間が過ぎるのを待っていた。本来サッカーをやっているはずのピッチは無人、大量の雨粒でまっしろけだ。その奥に「落雷の恐れがあるため試合を一時中断します」というアナウンスを表示したままのスクリーン、そしてゴロゴロゴロと鳴り止まない雷鳴……。  アウェー・東京ヴェルディ戦は、二度の「どうしようか」を経て、雷雨による試合中断の運びとなった。大迫さんがボー

      • 咳をしても茶島

         かかりつけの耳鼻咽喉科の先生は、ぼくの鼻に問答無用で内視鏡のカメラみたいなのをつっこみ、映像をのぞきこみながら、のんびりした調子で「ひどいね~痛かったでしょう」。気管支炎と診断された。鼻の奥にも炎症があるらしい。  まず喉にきた。火曜日だったか、急に喉が痛くなった。激闘の柏レイソル戦で張り切りったせいかしら。その日は龍角散をのんで済ませた。粉のヤツは意外と効くのである。  水曜日、くしゃみが止まらなくなった。ぶえっくしという騒音に、我が家の猫3匹が一目散に逃げ出し、妻は

        • 90分跳べました(vs柏レイソル)

           三協フロンテア柏スタジアムのビジター席は、通学カバンから数日出し忘れた脱ぎっぱなしの体操着と、下駄箱で長年熟成された上履きのにおいがした。  はじめは、そんなにおいなんてしなかった。茶島雄介さんのウォーミングアップを存分に堪能し、カラッとした6月の夜の空気を目いっぱいすいこみながら「茶島雄介広島の漢」をゴキゲンに歌っちゃうくらいには、なにごともなかった。ちょうど選手が引き上げたくらいだったとおもう。その例のにおいが、ぼくの鼻を貫いた。おもわずのけぞってしまった。  ただ

        まだまだ張り合える

          商売道具以上のもの

           ルヴァンカップ、勝ち進められて本当によかった。  ぼくが観たのは味の素スタジアムでの第一戦。観に行った多くのひとがそうであったように、ぼくもまた川浪吾郎さんの雄姿を観にいった。すくなくとも前半の45分のあいだはずっと背中の22番を見つめていたし、90分通して、かれがはめている真っ白くておっきなキーパーグローブを目印に追っかけていた。  川浪吾郎さんのグローブは、遠ければ遠いほどよく目立つ。写真を確認すると、大迫さんや田中雄大さんのグローブとさほど変わらないようにも見える

          商売道具以上のもの

          代償

           DAZNでジュビロ磐田戦を観終わってすぐ、四ツ谷駅に向かった。JRと東京メトロ(地下鉄)の路線が通る駅で、いろんな方面へ行くのに意外と便利。この日は妻と合流して駅ちかくのご飯屋さんにいく予定だった。  その電車車中急に、二の腕の肌の、いちばん表面のところがぞわぞわっとした。同時に足元がたよりなくなる。駅についてホームからアトレ四ツ谷、駅の商業施設方向の階段をのぼるとすぐに息が切れた。あわてて予定をキャンセルして家に帰り、すぐ体温計を脇にはさむ。37度ちょい。風邪かそれとも

          閉門してるのは想定外(vs東京ヴェルディ)

           バスを降りると、味の素スタジアムの東中門、天文台通り沿いにある門が開いていなかった。マジっすか。  味の素スタジアムへは、武蔵境駅からバスをつかうことにしている。メジャーな最寄り駅・飛田給駅よりもわが家からのアクセス的に具合がいいのだ。  その日、ルヴァンカップ東京ヴェルディ戦の当日も、いつもとおんなじ感覚でバスに乗り、萩の原住宅前というバス停で降りた。すると、ゲームまえだというのに人っ子ひとりいやしない。イヤな予感がした。見ると、道路向こうにある東中門が堅く閉ざされて

          閉門してるのは想定外(vs東京ヴェルディ)

          いくらでも待つよ(vs京都サンガ)

           野津田岳人さんの京都サンガ戦は前半45分で終わった。じつは去年の京都サンガ戦も前半45分だけの出場だった岳人さん。でも去年の45分とことしの45分では、おもむきがだいぶ違っていた。  去年は、パワーが足りていないとマルコスさんにかえられた。前半チームは攻めていたし、岳人さんも悪くなかった。だから、ご本人的にはどうかはわからないけれど、くやしい評価、受け入れがたい交代だった。  でも今回はポジティブな45分だった。タイムラインでも「なんで岳人がかえられるんだ」とポストがけ

          いくらでも待つよ(vs京都サンガ)

          肉離れと向き合いながら

           全速でダッシュすることができなくなって、そろそろ2か月が経つ。といってもふつうに暮らしていて、全力で走りたくなるタイミングなんてそんなにない。せいぜい電車に遅れそうなとき、駅前の横断歩道のゲージの少なくなった青信号に突進するくらい。日々の生活にはなんの支障もない。それでも、ぼくですら太ももの裏がずきんとうずくたび、思い切り地面を蹴れないことがどうにも惜しくなる。ならば茶島雄介さんはどうだったんだろう。どんなふうに怪我と向き合っていたのだろうか。おんなじ時期に似たような怪我を

          肉離れと向き合いながら

          心機一転、新14番

           3月末、唐突な初夏をおもわせるような、いいお天気の日。ふと鼻先をお線香の香りがかすめた。お寺の敷地の脇を歩いていたときだった。まっしろな日差しをうけてザラザラ光るブロック塀そのむこうで、お墓に手を合わせているひとがいたようだった。「冬場いけなかったし、せっかくのお天気だからお墓参りにでも」ということだったのだろうか。  人間にかぎらず、あたたかくなるとなにかと活動的になるもの。数日まえは、ぬかるんだ空き地の水たまりの上を、アゲハチョウが2匹ひらひら飛んでいるのを見かけた。

          心機一転、新14番

          なんでこんなことに(vsFC町田ゼルビア)

           なんでこんなことに……。  FC町田ゼルビア戦、目を光らすコールリーダーさんのすぐ近くで、必死に声を張りあげながら、ぼくは内心首をかしげていた。なんでぼくはこんなところでチャント歌ってんだ?  ホントは今回の町田行き、やめるつもりだった。先週から右のもも裏を痛め、しばらくまともに歩けなかった。多少マシにはなったけど痛いは痛い。しかも4月3日の天気は雨だと。なぁにが悲しくて、足ひきずりながらスタジアムにまでいって雨にうたれにゃならんのだ。当日をむかえて午前中くらいまでは、

          なんでこんなことに(vsFC町田ゼルビア)

          インフラ

           仕事を終えて帰ると、家の前の道路が工事関係者と工事車両でごったがえしていた。工事現場に立てられた看板には「地震につよい水道管に交換しています」。アスファルトがはがされ、下の土が一直線に掘り返されていた。そういえば家の冷蔵庫に「水道管工事のお知らせ」の紙が貼ってあった。  警備員さんの誘導にしたがい、せばまった道をすりぬけ、マンションまでたどりつく。入り口のまえには、ツナギを着た強面の職人さんたちが休憩していた。ぼくはなんとはなしに「ごくろうさまです」声をかけて会釈した。す

          インフラ

          苦手(vsヴィッセル神戸)

           以前このようなnoteを書いたからかなんなのか、先日、六花亭のマルセイバターサンドをいただいた。  記事にも書いたが、ぼくはレーズンがキライだ。できれば関わりたくない。とはいえ、ひとからいただいてしまった以上"食べない"もない。ついでに長年、マルセイ"ユ"バターサンドだと覚え違いしていたといううしろめたさもある(ダイレクトメッセージでそっと指摘してくださったかたのおかげで発覚。サンフレッチェのことスキなひとに悪いひとはいない)。記事も「きらいなものも1回は試してみよう」と

          苦手(vsヴィッセル神戸)

          夢心地(vsサガン鳥栖)

           効き過ぎの花粉症の薬でも飲んだみたいに、目もとがぼわん……とした。目ん玉も、まぶたも、目のクマができるところも、なんだかずるずるとゆっくりすべりおちていくような。  先週のサガン鳥栖戦、ぼくは舟をこぎながら観ていた。  昼過ぎまでの用事を終えて、それがあまりいい心持ちのする用事ではなかったものだから、がっかりしながらの観戦だった。そこに寝付きがわるかったのもかさなって、たぶん意識が起きていることを拒否したんだとおもう。「早く夢の世界へ行かせておくれ」。抱っこを全力でいや

          夢心地(vsサガン鳥栖)

          罵声はなりきりサンチェとともに(vsFC東京)

          「ふざけんなてめぇ何度目だこのやろう!」 「いつまで抗議してやがんだてめえ」 「レフェリー、カード持ってきてねえのか!」  妙に通る罵声があたりをつらぬいた。まぁなんて野蛮なこと、やだやだ。3月2日、クソ寒い味の素スタジアムでのFC東京戦、ビジター席のはしっこで、冷えた手をさすりながらぼくは顔をしかめた。  試合まえの花火の特効であたり一面白煙におおわれていた。往年のセリエAをおもわせる物々しさを帯びてゲームははじまった。でもだからってなにも観客までセリエA、ウルトラス仕

          罵声はなりきりサンチェとともに(vsFC東京)

          黒縁眼鏡と黒いジャージ

           みんなのピンチを、あわてずさわがず、しれ〜っと解決。林卓人さんはそういうキーパーだ。よく通る声で味方を統率しつつ、シュートやクロスがとんできたらなに食わぬ顔して止めちゃう。それもボールにとびつくというより、ボールにひきよせられるみたいに腕をのばして止めるから、必死感がない。そこがたまらなくかっこいい。  でも引退会見のときの卓人さんは、勝手が違った。ゴールキーパーとしてのそのかっこよさが、すっかり鳴りを潜めてしまっていた。  会見のとき、卓人さんは眼鏡をかけていた。それ

          黒縁眼鏡と黒いジャージ