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夢心地(vsサガン鳥栖)

 効き過ぎの花粉症の薬でも飲んだみたいに、目もとがぼわん……とした。目ん玉も、まぶたも、目のクマができるところも、なんだかずるずるとゆっくりすべりおちていくような。

 先週のサガン鳥栖戦、ぼくは舟をこぎながら観ていた。

 昼過ぎまでの用事を終えて、それがあまりいい心持ちのする用事ではなかったものだから、がっかりしながらの観戦だった。そこに寝付きがわるかったのもかさなって、たぶん意識が起きていることを拒否したんだとおもう。「早く夢の世界へ行かせておくれ」。抱っこを全力でいやがるウチの猫よろしく、にょろにょろしながら逃げる意識、それを必死にかかえこみながら、ぼくはモニタの前にへばりついた。

 結果、そこに川村拓夢さんのチャントを延々と口ずさむ、きもちわるいおじさんが生まれることになった。ゴールが決まってから前半くらいまで、延々とうたっていた。しかたなかったのだ。口ずさみでもしてなかったら、ベッドに直行しそうだった。

 川村拓夢さんのチャントはスキだ。「きみに夢抱いた」のところの歌い心地は、近年のサンフレッチェチャント史においても随一。"ⅰ"の音が心地よい。チャント全体で見れば"t"の音も捨てがたい。歌詞も、意味合いにふんわりさわるくらいの奥ゆかしさがあってスキ。ほろりとくる。そのほろりを利用して、なんとか現世にとどまろうという魂胆だった。まあまあのボリュームで口ずさませてもらった。ちなみに妻は不在、猫は昼寝していた。

 とはいえ、チャントもハーフタイムをこえると効果切れを起こした。もうあとはベンチにいる25番さんに出てきてもらうしかなかった。ぼくは茶島雄介さんがスキだ。あのたたずまいがたまらない。こまったときのチャジ頼み、ぼくはPCに向かって手を合わせた。

 しかし監督は、ぼくの願いに指一本動かす気もないらしかった。一手一手ていねいに交代策をうっていく。さては前節の試合後にエゴサしてたな、と疑いたくなるくらい、的確に選手をかえた。そういうのいいから茶島さん出してくれよう。ぼくのなげきは、ウマルコーチにすらとどかなかった。後半の大半、ぼくは片足を夢の中につっこんで観ることになった。こんな状態ではたして、レジーナの後半観られるんだろうか、とアタマの片隅の理性がほんのすこしだけまともに機能した気もしたけれど、もはやそれを判断する余力はのこってなかった。

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