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いくらでも待つよ(vs京都サンガ)

 野津田岳人さんの京都サンガ戦は前半45分で終わった。じつは去年の京都サンガ戦も前半45分だけの出場だった岳人さん。でも去年の45分とことしの45分では、おもむきがだいぶ違っていた。

 去年は、パワーが足りていないとマルコスさんにかえられた。前半チームは攻めていたし、岳人さんも悪くなかった。だから、ご本人的にはどうかはわからないけれど、くやしい評価、受け入れがたい交代だった。

 でも今回はポジティブな45分だった。タイムラインでも「なんで岳人がかえられるんだ」とポストがけっこうあった。「フィジカルが足りないからだ」と語るひともいた。フタをあけてみれば、今後を考えての負荷調整。試合後、監督も手放しでこの日の背番号7を称えていた。

 実際このゲームの岳人さんはかっこよかった。

 ピッチ上で味方に言葉を尽くす"おなじみ"の姿はあいかわらず。ゲーム序盤、左サイドで前進させようとしたキャプテンに「逆サイドもつかおう」と声をかけた。キャプテンはプレーをやめて、逆サイドに向かってパス。岳人さんは自分の提案を飲んでくれた先輩に手を叩いて感謝していた。チームに血が通いだす瞬間を目撃した気分がした。

 そこからチームのなかで、めぐりのいいやりとりがピッチ上のあらゆるところで行われた。相手のビルドアップのとき、ピエロスさんは細やかに包囲の指示をとばしていた。大橋さんから「もっとこうしてほしい」というリクエストがつぎつぎに出された。「パス出してよ」「フリーだったよ」とアピールする選手には「ごめんね」「わかってたよ」とこまめに謝った。湧き出るように表出した意図が循環していた。その光景の中心にいたのが背番号7だったんじゃないか。ぼくはそうおもっている。

 プレーもかっこよかった。とくに守備面。相手ボールの1対1では足をのばして正確にボールをつついているところが気に入った。1対1のシーンが待ち遠しいなと不謹慎なことも考えた。まさか岳人さんのディフェンスを楽しみにする日が来ようとは。ボール保持のときもよかった。最近の我々が見落としがちだった、比較的空いてるエリアにボールを供給するのもちらほら見られたし、周りの選手のことをよく見てプレーしていた、丁寧な仕事ぶりだった。

 スキッベ監督が就任当初からずっとチームにリクエストしていたのがその丁寧さ。チームは長らくその要求にこたえられていなかった。でもこの日は岳人さんの丁寧さがチームに波及して、丁寧にプレーしていた。

 とはいえ京都サンガの不出来に助けられたゲームなのも事実は事実。岳人さんが町田や神戸みたいな、有効なプレーをし続けられる相手にどれだけやれるのか、それはわからない。ただ、移りゆくゲームに真摯に向き合い、丁寧にプレーするかれの姿勢は、信用するに値するものだった。少なくとも数試合、かれに中盤をゆだねてみてもいい気がする。どうだろうか監督さん。だいじょうぶ、気長に待ちますから。ことしはすでに松本泰志さんでだいぶ待たせていただいた。個人的な話でいえば茶島さんも絶賛待っている。いまさらひとりふたり待つ選手が増えたところで、どうってことない。


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