[私小説]天使はいずこへ 3.
受験勉強をまったくせず、哲学書ばかりを読む浪人期間を1年経て、C大学に入ってから2年も経つと、かつてあれほど恋焦がれたOへの情熱を見出せなくなっている自分に彼は気付いた。卒業式の後にOから手書きの連絡先を受け取ってはいたのに、自ら電話をかけることもしなかった。学校の行事でOとクラスメイトの二人が歌う聖歌のピアノ伴奏をした時の写真とそのメモは大事にとっていたものの、なぜ連絡を取ろうとしなかったのかは彼自身にも分からなかった。二度の告白を受け取ってもらえなかった相手がそのような