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ベートーヴェンを毎日聴く86(2020年3月26日)

『ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 op.60』を聴いた。

この作品は1806年に作られた。

ベートーヴェンは36歳。

わたし自身の経験において、30代半ばという年齢は仕事が一番面白くできていた頃だったように思う。

それまで学んできたこと、それらはバラバラであったことなのだが、それがつながりはじめて理解ができてくる。テクニックも増え始め、そして気力体力も充実して、バリバリこなせた。

たとえ失敗があっても立ち直りが早い。

怖いものなしの感覚だったなぁ、と懐かしく思う。

ベートーヴェンもの0代はちょうど「傑作の森」と呼ばれる時期で、交響曲に協奏曲、弦楽四重奏曲にオペラと多種の名作を多く作った。

しかし、唯一のオペラ「フィデリオ」の初演は大失敗。その後の改定版も再び失敗するが、第3版は今に残るような作品にまでなっている。

交響曲第4番は表題がない作品。「英雄」「運命」「田園」という表題付きの交響曲に比べると聞かれる機会も少ないが、今では人気も高いように思う。

それは
「渋いけど、実はこんなワクワクする作品だったのか」
という演奏が出現したからではないかと思う。

カルロス・クライバーが指揮したディスクは、それまでのこの作品が持つ印象を大きく塗り替えてしまったであろう。そして来日して指揮台へ上がった際も、演奏会とそのテレビ放送により広く知れ渡ったことで、決定的になる。

それ以降、古楽的アプローチによる演奏はさらに刺激的な印象を与えて、この作品をまた違う角度から新たな魅力を与えてきた。

シューマンが評した「ふたりの巨人に挟まれた乙女」も一理あるが、もう「乙女」のような存在とは思えない、別の巨人のような存在である。

こうして時代が変わって、認識が変わってくるということも、クラシック音楽の面白いところである。

(記:2020年11月21日)

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