ベートーヴェンを毎日聴く94(2020年4月3日)
『ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 op.67「運命」』を聴いた。
ベートーヴェンの作品のなかで一番有名な作品であるのは疑いようもない。
誰でも知っている、この曲の出だし。
「ジャジャジャジャーン!」
と文字で書いただけでも、音程が自然と頭に浮かんでくる。
「ジャジャジャジャーン!」は、「ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャーーン!」とゆっくり刻みながらの場合もあるし、最近では「タタタターン」くらいに快速で始まることも多い。
指揮者によって個性があるので聴き比べるのは面白い。
しかし、この出だし。簡単なようで、とても難しいのだと、ほとんどの指揮者が言っている。
さすがにヘマできない肝心要の部分。なので、コンサートや映像で指揮の様子を見る側も、思わず手に汗握ってしまうところ。
「運命はこのようにして扉を叩くのだ」
と、ベートーヴェンは言ったのだ。
シントラーが書いたこの名言。今では作り話であるとされて「迷言」になってしまったが、なかなか上手い表現である。
だから嘘でもこの話は信じられ、広まった。
ドラマの一場面のBGMにこの部分が流れれば、運命を変えるような事件が起こっている。
「運命」という副題を付けて、いまでもそれを続けているのは、たぶん日本だけだ。
運命のモチーフと言われる「ジャジャジャジャーン」のリズムで第1楽章のすべてが作られているとか、楽章間に休みを入れず続けてしまう(第3楽章と第4楽章の間)とか、宗教音楽で使っていたトロンボーンを入れてしまったとか・・・
とにかく当時新しいこと尽くしの作品は現在いちばん多く演奏され、CDもたくさん出ていて、聴く機会も多いのに全く飽きない。
演奏する側も、いろいろな技法を試したり、作品の研究が進んで新たな発見に基づいた演奏をしたり、今でもまだまだ新しい光を放ち続けている凄い交響曲である。
ちなみに「ジャジャジャジャーン」のリズムは、ベートーヴェンが散歩中に耳にしたキアオジという鳥の鳴き声という説も有力視されている。
(記:2020年11月29日)
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