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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~64


「おばあちゃん、あんこって、何でこんなに美味しいんだろうね・・・甘くて、口の中でとろけて、もう最高に美味しいね!」

この前来た時には、確か体育座りして、泣きながらうまい棒とかチロルチョコを一つ一つ食べたんだっけ・・・今日も気が付けば、涙が頬を伝っていた。でも、今日は虚しさの涙じゃなくて、懐かしさと温かさの入り混じった涙だった。

「おばあちゃん、大福もどら焼きも美味しいけどさ、甘い物ばかりだと何かしょっぱい物も食べたくなるね。おせんべいも買ってくれば良かったかな・・・」

それでも今日は、美味しい、美味しいって言って、おばあちゃんや由希とみんなで楽しく食べてる気がして、とても懐かしかった。こんな、今は普通に食べられない私だけど、何も考えずに、ただただ美味しい、美味しいって言って食べてたことが、何だか何十年も前の、遠い昔のような気がした。

「何十年って、私まだ20代なのに、おかしいね・・・」

今日もまた、空はどこまでも真っ青で、水平線はどこまでも真っ直ぐで、砂浜はどこまでも真っ白で、眩しいくらいにキラキラと輝いていた。ただ、私の頭の中は、ぐちゃぐちゃに曲がって、こんがらがった針金のように、がんじがらめになってしまって、一つ一つほどいていくには気の遠くなるような作業が必要だった。それでも、寄り添って、必死にサポートしてくれる先生や、言葉ではないけど、食べ方でメッセージをくれた由希や、天国から見守って応援してくれるおばあちゃんがいる・・・私は一人じゃない。きっと、きっといつか笑顔で食べれる日が訪れる。そして、キラキラと輝ける日が来る。今の私は、そう信じるしかなかった。

「やっぱりこの波の音、いいよねぇ、何だか落ち着く」

甘栗を食べ終わると、何もすることがなかった。ただ砂浜に座って、波の音を聞いていた。

波が、私の力だけではどうすることも出来ない全部を、きれいさっぱり洗い流してくれて、家に帰ったら、もうすっかり何もかもが良くなっていればいいのに・・・

「そんなこと、現実には起こらないよね。やっぱり、先生の言うように、今出来ることを一つ一つ積み重ねることしか、そして諦めないで続けることしか、ないんだろうなぁ・・・」

それでも私には、信頼して、頼って、縋ることの出来る人がいる。その存在が、せめてもの救いだった。


今日もありがとうございます。

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