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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~325


いつまでも『普通に食べる』ことが出来るようになるのを待っていても、いつになるのかわからないし、由希の言うように『気分が上がりそうなこと』を敢えて考える、という意味でも、ちょっと友達に連絡を取ってみることにしよう。

「何、ちょっと紗希?紗希だよね、超久しぶりじゃない?」

いろいろ考えたり迷ったりしたけど、大学の時の友達で、気さくな感じがどことなく由希に似ている陽子に連絡を取って、会ってもらえることになった。

「そうだね、ホント久しぶりだよね。ごめんね、私が全然会おうとしなかったから……」

「えっ、そうだっけ?何か、うわさでは仮想通貨で大損しちゃって雲隠れしたんじゃないか、って話だったけど」

「え~何それ。そんなんじゃないんだけど、ただちょっと病んじゃって……」

「えっ、そうなんだ~。言われてみれば少しやつれてる感じだけど」

「うん、ちょっとね、食べることがうまく出来なくて。それでみんなに会うのがだんだん不安になっちゃって……」

「そうなの?会食恐怖症とか?ってかさ、言ってくれればご飯とかじゃなくても全然会ったり出来たのに」

「そうだよね、私も言おうかどうしようか迷ってるうちにだんだん酷くなっちゃって。それで言いそびれちゃった感じなの。あっ、でも会食恐怖症ではないんだけど……」

「そうなんだ~でもさ、この歳になると、みんないろいろあるからさ、そんなに気にしなくても私は全然大丈夫。紗希は今日ここにいるから、入院とかしてる訳じゃないんでしょ?」

「そうね、入院とかじゃないんだけど。ただ、カウンセラーの先生みたいなところには定期的に通ってるの」

「ふ~ん、そうなんだ。でもさ、ちょっとは良くなってきたから、会おうって思ったんでしょ」

「まあ、そうね。完全に良くなった訳ではないんだけど、でも酷かった時と比べたら良くなってきたし、多少なら人と一緒でも食べることが出来るようになったから」

「そうなんだ~それなら良かった!ねえ、とりあえず飲み物でも頼まない?」

「そうだね、このまま喋ってると、キリがないよね」

何年かぶりに会う友達に陽子を選んだのは正解だったかもしれない。会う前は、何から話そうかとか、どんな顔して会おうかとか考えてたけど、いざ会ってみると、そんな心配する必要はないくらい、さり気なく会話をリードしてくれる。会う前は不安だったけど、勇気を出して連絡を取って本当によかった。


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