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夜明けより、少し前に遡る魚 【ショートショート】

X:
圧倒的な静けさに置いた身を、そっと起こして朝陽を迎える。
それは一種の、勘違い、夢、映画。
一日を半分ずらして、夕刻のオレンジを浴びる。

Y:
B消極的な違和感に閉じた目を、ちょっと開いて響きを観る。
これはある意味、ショー、ステージ、ドラマ。
一曲の半音ずらして、妙なリズムに身体を揺らす。

X:
喧しいフロアの奥の花の壁、佇む人影、実態のない。
鎮静するトーンの瞳、深海のような、高い樹々の森のような、気の遠くなる宇宙のような。

Y:
定位置は境界、陵の冒険から帰る返る還る水平線。
孵ろうと思った身体がなく、さっきのリズムの中を探し回って泳ぐ飛ぶもがく。

X:
捕まえると凍る。鳥によく似た魚?海獣?
放って飛ばす。狩人の目を眩まして、息を止めて発射させるから。

Y:
氷で覆う、熱に覆い被せて。ヒトには見えない?笑って蹴飛ばす。玄人の粋な眼差しで、声を潜めて発射される。

X:
逆さまに降る、雹みたいだ。

Y:
地上が遠ざかる、トイカメラの世界。

X:
汗をかいて目醒める夜中、月明かりの深夜2時。
黒い珈琲の缶を開ける、虹色に香る。

Y:
居眠りの姿勢で目醒めた夜中、月明かりの深夜2時。
黒い珈琲の缶を開ける、虹色に香る。

X:
世界の果てみたいな夢を観てた。

Y:
終わりと始まりみたいな夢だった。

XY:
モノクロとセピアの中間、
朝陽か夕陽かわからない

隔たりに
その生暖かい壁に
指を這わせて
海面の波打つ

どんぶらこ
どんぶらこ

揺れて
揺れて

保って
揺れて

ここにあらず
どこにもあらず

繋がれて、凧はどこまでも高く高く
叫ばれて、船はあくまでも遠く遠く
焦がれて、陵は海の際で呻く強く強く
熱されて、海は陸の際で唄う速く速く

境界に
浸潤する時間の質量を。
往来するエネルギーの総体を。

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