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【随筆】保育園卒業文集に載せた、息子への手紙

           息子へ

 普段、私は書いたものが家族の目に入らないよう、それなりに注意を払っています(幸いそんなことしなくても、誰も気にかけていませんが)。だからこんな形で読まれるなんて、思ってもみなかったです。
 学校は、保育園でお目にかかれない種類の人たち(惨めなほどに高圧的な教師、いやな目つきをした同級生)に、高確率で遭遇する場所です。まあ、こういう困った人たちは、どこにでもいます。すぐ逃げ出せればいいんですが、そうもいかない時は、本を読めば良いんじゃないかな。世代や国境を越えて残っている作家、例えばチャンドラー『さよなら、愛しい人』、カポーティ『遠い声、遠い部屋』、ウエルベック『ランサローテ島』とか。読んだところで、何も解決しません(注意:問題解決を謳うサービスは、ほぼ詐欺です)。でも「しんどいな」と思う夜を越えるのを、一晩だけ助けてくれます。そうやって適当にやり過ごして、ごまかしながら人生を送っていると、職を得て、素敵なパートナーに出会い、いつの日か最愛の息子に文集を書くようになりますよ。ほんとに。卒業おめでとう。
 
 学校が苦手で「台風来い」と毎晩念じていた母より 


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