水仙花水面(みなも)に写す愛いずこ
水仙は古くからヨーロッパで栽培されてきました。紀元前800年のホメロスの詩にも登場し、ギリシャ神話のモチーフにもなっています。
〔ナルキッソスという美少年がいて、その美しさゆえにとてももてていました。ある時、エコーという森の妖精も彼に恋をしますが、ふられます。それを見ていた復讐の女神ネメシスが呪いをかけ、ナルキッソスが自分自身しか愛せないようにしたのです。そして、彼は水面に映った自分の姿に恋をして死んでしまい、その跡に咲いたのが一輪の白い水仙だった〕
英語の“narcist”(ナルシスト)はここから。水仙の学名はナルキッソス(Narcissus)といいます。
美しいことは、あぶない面もあるかもしれません。
七十二候の【金盞香】に入ります。
金盞香は「きんせんかこうばし」と読み、水仙をさします。
一年を72に分ける七十二候の57番目です。二十四節気「立冬」の末候になります。11月21日まで。
金盞香 Kinsenka saku “Daffodils bloom.”( bloom;花が咲く)
November 17-21
「金盞」は正しくは「きんさん」で、金の杯(さかずき)のことです。花弁の真ん中にある黄色い部分を見たててこう名づけられました。その水仙が咲き、よい香りをはなつころです。じっさいの見ごろは1月~3月で、雪中花ともいいます。
雪中花一輪裁ちて硝子瓶
書斎の闇も薫りと消ゆる
水仙は、菊や朝顔とともに遣唐使が薬草として持ちこんだと考えられています。球根をすりおろしたものを布に包んで患部貼ると消炎作用があります。
水仙の自生地が海岸近くに多いことから、海流にのって漂着したという説も。越前海岸、淡路島の灘黒岩水仙郷、伊豆の下田・爪木崎などが水仙の群生地として知られています。
清楚な姿、気品のある香りの水仙ですが、全草がすべて毒なのです。葉を韮(にら)とまちがえたり、球根を浅葱(あさつき)や野蒜(のびる)と思い、食べると中毒をおこします。海外では死亡例も。
この毒は、美しさを守るためでしょうか。
あなたが幸せでありますように
琵琶湖のほとりの草庵にて
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