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日本経済新聞連載 一橋大学教授鷲田祐一氏「経営とデザイン」を読み解く

経済産業省と特許庁は2018年5月、「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書として、「デザイン経営」宣言を公表しました。

「デザイン経営 」宣言(経済産業省・特許庁)
産業競争力とデザインを考える研究会 2018年5月23日付 [PDF]
http://www.meti.go.jp/…/20…/05/20180523002/20180523002-1.pdf

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詳細については、研究会メンバーのお一人である林千晶さんがご自身のブログにて、「デザイン経営」宣言に寄せて(2018年5月25日付)と題し次のように述べていらっしゃいます。

(以下文中転載)
…「デザインは、経営にとって重要な資源である。世界のリーダー企業はとっくにそのことに気づき、投資を増加させている。それなのに、日本企業の多くはいまだ技術力をイノベーションの手段として捉え、デザインの重要性を認識していない。第四次産業革命ではモノとネットが融合し、ビジネスモデルも根本から変わる。そんな時代に、新しい事業の起点を見つけ、圧倒的な強度でその価値を体現するのはデザイナーの仕事であり、デザイン活用は不可欠である。」…


日本経済新聞経済教室欄では、2018年11月9日(金)から全10回に渡り、一橋大学教授鷲田祐一氏による「経営とデザイン」と題した連載が掲載されておりました。

経営とデザイン(1)デザイナーが中枢に参画

(文中要約)
「デザイン経営」宣言が提起しているのは、デザイナーが狭義の職能を超えて企業経営の中枢の意思決定に参画する経営スタイルであるが、多くのデザイナーは企業経営を学んだり経験したりしていない。それでも経営の意思決定に参加させることを促す目的とは、デザイナーが既存の技術や会計制度などによる思考の制約を受けにくく、顧客起点での商品やサービスの創造・立案が得意だと考えられているからである。
データや文字によるコミュニケーションだけでなく、絵やモノによるコミュニケーションにも優れているため、硬直した経営の意思決定の場に創造性をもたらすのではないかという期待もある。
既に、米アップルや英ダイソンでは経営の中枢にデザイナーが参画し、大きな成果を出している。日本でも追随する確信的な企業が大きな成果を上げてきた。

プチMEMO
「MBAデザイナー」とは・・・
企業経営を学んだり経験したりしたことのあるデザイナーのことです。旧来型のデザイナーには少ない既存の技術・会計制度などを把握した上で、デザイナー特有の思考の制約を受けにくく、顧客起点での商品やサービスの創造・立案を得意としています。



経営とデザイン(2)狭い解釈、ビジネス狭める

(文中要約)
英語の「design」は直訳すると「設計」になる。しかし近代以降の日本では、主に機械工業や建築業の分野で図面を描いたり機構を考案したりする行為を「設計」と呼び、「design」に含まれるそれ以外の要素は「図案」「意匠」あるいは「デザイン」と呼ぶようになった。
そのため他国と比較して日本での「デザイン」は、主に物品の色や形のことだけを指す狭い意味が定着してしまった。日本の「デザイン」に関する大きな問題は、このような言葉の意味の狭まりにより、それが指し示すビジネスまで狭められてしまったことである。
しかし、日本でも近年、「デザイン」を本来の意味に拡張し、機械や建築などの「設計」も包含するように解釈し直す動きが広がってきた。さらに、企業経営そのものが一種の「デザイン」であるという考え方も広まりつつある。

プチMEMO
MBAデザイナーの考える「デザイン」とは・・・
MBAデザイナーnakayanさんは建築意匠デザイン出身です。デザインの意味を広義で捉え、「ビジネスをデザインする、人をデザインする、感動をデザインする」をビジョンに長年活動してきました。企業経営とは、企業戦略や企業組織をデザインやアーキテクチャすることです。更には、哲学とは、生き方をデザインすることでありライフデザインです。



経営とデザイン(3)業績にも大きな影響

(文中要約)
「デザイン」の意味を広義(商品・サービス全体や顧客との接点の設計)に捉える企業87.9%と、狭義(物品の色や形の工夫)に捉える企業63.6%とでは、経営において重視する点や業績に差があることが調査によって分かってきた。
「デザイン」を広義で捉えている企業の方が、「低価格」よりも「顧客にとっての使いやすさ」を重視する傾向が強く、直近5年間の営業利益の平均増加率6%以上が41.9%、狭義で捉えている企業では25.0%にとどまる。
「デザイン」を広義で捉える企業の方が、高付加価値な商品・サービスを提供して利益成長率も高いという姿が浮かび上がる
同調査では、デザイナーに期待するスキルについて「デザイン」を広義で捉えている企業では、「マーケティングの知識・スキル」や「ITやウェブに関する知識・スキル」を挙げる割合が非常に高く、デザイナーに幅広いスキルを求めていることが分かる。
一方、狭義で捉えている企業では、これらのスキルを挙げる企業は少なく、狭義のデザイン以外についてあまり期待していないことが浮き彫りになった。

プチMEMO
MBAデザイナーの「知識・スキル」とは・・・
「マーケティングの知識・スキル」は、MBAにとっての必須スキルです。
「ITに関する知識・スキル」は、大手通信会社にて働いていた経験(100社以上で働いた経験の一つ)がありますので、中の人しか分からないような専門的な知識を持っています。
「ウェブに関する知識・スキル」は、フリーランスデザイナーとして地道に培ってきました。HTMLやCSSのタグを直打ち出来ます。



経営とデザイン(4)意匠法の保護 範囲拡大が必要

(文中要約)
意匠法は特許法と並ぶ知的財産保護制度の中核だが、昨今の情報技術の進展や企業競争の変化により、ビジネスの実態に合わなくなっているとの指摘が出ている。
意匠法が対象にするデザインは「何らかの物品に付帯している色や形の美観」であることが前提。現行の意匠法では、最初から機器にインストールされている画像については「物品に付帯している」と認められるが、後からインストールされた画像やクラウド上にあるデータによって映し出される画像は保護されない。
ユーザーの視点ではデータの保存場所やインストールの時期などはほとんど意識されず、法律とビジネス実態が乖離(かいり)している。

プチMEMO
MBAデザイナーの「意匠法への理解」とは・・・
建築デザインの世界では、建築基準法や建築基準条例、或いは消防法などを考慮することが求められ、自ずと法律と向き合わざるを得ません。
デザインに関する意匠法や特許法は曖昧かつ未整備でしたので、これまではデザイナーが法律に接する機会は少なかったと言えます。
広義のデザインをするこれからのデザイナーには、今後整備されることになる法律をきちんと理解した上での業務が求められます。



経営とデザイン(5)建物・空間の意匠も保護を

(文中要約)
企業経営者にとって商品やサービスに関連するビジュアルデザインを統一することで自社のブランドイメージを高めるのは今や常識。しかし、現行の意匠法では、このような統一的なデザインをすべて保護対象にすることが難しい。
意匠法の基本的考え方では最初に出願されたものだけが登録され、後のものは排除される。そうしないと世の中に偽物が氾濫してしまうからである。
次にサービス業の店舗デザインでは、内外装を工夫し、どこの店でも均一で高品質なサービスを保証する演出をし店舗デザイン自体がイノベーションになっている。しかし、現行意匠法ではそもそも建築物や空間デザインを保護対象にしていない
こうした問題を踏まえ、特許庁は関連意匠の出願可能期間を大幅に延長し、建築物や空間デザインも保護の対象にする方向で意匠法の改正を検討している。
画像デザインの保護対象の拡大などと併せて実現すれば、日本の意匠法は世界でも先端水準となり、デザインを重視する企業の取り組みを強力に後押しすることが可能になる。

プチMEMO
MBAデザイナーの「意匠法への対応」とは・・・
レギュレーションが変わる時こそ、イノベーションを起こす契機であり、デザインの価値を理解している企業にとってのチャンスであると捉えています。小さな変化に気付き、やがて訪れる大きな変化にうまく備えること。そして、変化にすばやく適応すること。更には、自らで変化を生み出すことが重要です。



経営とデザイン(6)日本の経営者は軽視

(文中要約)
日本の企業経営者はこれまでデザインという要素を軽視してきた。社内のデザイナーが様々なイノベーションのアイデアを提案しても、経営者が採用することはまれである。この背景には、経営者の多くがデザインという要素をコスト削減の対象にしてきたことがあると筆者は考えている。
企業は業績が厳しくなると無駄な出費を抑えたり、取引先との関係を見直して原価削減を試みたりするが、デザインも無駄な出費と捉える経営者が多い。
戦後の高度経済成長時、急速な技術革新によって成功した日本企業の多くはエンジニア人材を重用してきた。一般的に大企業の技術系人材は学歴も高く、理詰めでアイデアを提案する能力にたけている。同様に、経理やマーケティング分野の文系人材もデータを用いて言葉巧みに経営者を説得する能力があった。
一方、デザイン分野の人材は、感性を重視し、書類よりも絵や模型を用いてアイデアを提案する人材が多いこともあり、企業組織の中で劣位に置かれやすい状況が長く続いたと思われる。取締役以上に出世する人材も非常に限られていた。
そうした結果、日本の経営者はデザインが経営の重要な要素であるとは認識しないようになったと考えられる。デザインの良しあしを判断する能力を身につけてこなかったのも当然といえる。デザインの良しあしを判断する能力を身につけてこなかったのも当然といえる。

プチMEMO
MBAデザイナーは「デザインのわかる取締役級」・・・
デザイン分野の人材が重視する感性を持ちながら、技術系人材のように理詰めでアイデアを提案する能力にたけている。更には、文系人材のようにファイナンスやマーケティングのデータを積極的に活用します。デザインの良しあしを判断する能力を身に着けた経営者です。



経営とデザイン(7)数値で説明困難、軽視招く

(文中要約)
経営者がデザインをコスト削減要素と考えがちな理由の1つに、デザインの経済的効果を数値で示しにくいという問題がある。官公庁などの公会計の書類には「デザイン費」という費目自体が存在しない。民間企業ではデザイナーの仕事を帳簿に記載する場合、「デザイン費」として計上するのが当たり前だが、公会計では「役務提供費」か「図面購入費」として計上するしかない。この影響で、国や自治体がまとめる企業活動や経済活動の統計には「デザイン」という概念自体がなく、デザインの効果を読み取ることもできない
デザインの存在や効果を客観的に数値で示す必要がある。デザインだけは数値データでの説明が困難なため、その貢献度を曖昧にしか評価できない。つまり「デザイン費」という費目があっても、その質の高さを証明する方法は「どれだけ売れたか」の尺度しかなく、間接的な結果論に頼らざるを得ないということである。
消費者にアンケート調査すればデザインの質が測れるという考えもある。しかし一般的に、消費者はアンケート調査上では無難なデザインを高く評価する一方、実際の市場では奇抜なデザインの方が強い印象を与えられる傾向があるため、アンケートと実ビジネスの間には、かなりの乖離(かいり)が生じる。アンケート調査に基づいてデザインを決定した自動車はあまりヒットしないという話は、自動車メーカーの間では有名である。

プチMEMO
MBAデザイナーの「デザイン概念」とは・・・
「デザイン」という概念自体がなく、デザインの効果を読み取ることもできない官公庁も、100の企業の中の1社です。実際に、デザインを軽んじられデザインが通用しない苦い経験があるからこそ、見える化できないデザインの伝え方を身につけました。
アンケート調査では建て前の回答しか集まらず、インサイト調査でしか本音は把握できません。見える化できるIntrinsic Valueと見える化できないExtrinsic Valueを組み合わせ、いかに統合的価値を生み出すかが問われます。



経営とデザイン(8)革新促す「デザイン思考」

(文中要約)
効果検証や評価が難しいデザインという行為を、どうすればビジネスの中でもっと普遍的な価値として定着させられるのか。その一助として近年注目されているのは「デザイン思考」という概念である。
デザイナーは技術や生産側の都合よりも先に、商品やサービスが世の中で活用される姿を想像し、消費者の生活に無理なくなじむような方法を考案する。そのために消費者の行動を深く観察し、場合によっては自分も参加して消費者と気持ちや感情を共有することに努める。それが合理的なデザインを発想する出発点になる。分析だけではなく、要素同士を組み合わせる発想(統合・構成)も並行して用いるという特徴もある
このようなデザイナー独特の思考方法は、従来は専門的教育を受けた人だけが持つノウハウだった。しかし、デザインという行為を広くビジネスの中に普及させるには、この暗黙的なノウハウを一般化し、幅広い企業人に共有させることが効果的である。つまり、デザインの成果物だけに注目するのではなく、デザインが生み出される過程も「見える化」するのが「デザイン思考」の基本概念である。
これはデザイナー以外にもノウハウを開示する効果があるため、いわば「デザイン行為の民主化」とも言われる。それゆえ職業人としてのデザイナーの多くは「デザイン思考」の普及に対してあまり良い印象を持っていないようである。
「デザイン思考」では本当に良いデザインは生み出せないと公言する著名なデザイナーや研究者は数多くいる。そうした見方はおそらく正しいだろう。
万人向けに作られた理論によって生み出されるものが、優れた才能が発揮する唯一無二の高度な創造活動に勝てるはずもない。
しかしそれでも、日本の企業経営を高度化するうえで「デザイン思考」は極めて重要だと筆者は考えている。経営者に根強いデザイン軽視の傾向、数値データで評価できないために安易にデザインをコスト削減の対象にする習慣、そしてその結果生まれた創造性に乏しい戦略による過当競争を改めるには有効な「思考の道具」だからである。

プチMEMO
MBAデザイナーの「思考の道具」とは・・・
誰でもデザインツールとして使用可能な形式知化された「デザイン思考」。感性的スキルと経験の蓄積に起因する暗黙知の「職業人デザイン」。
MBAデザイナーは、両者を繋ぐ「哲学」を有するからこそ、デザインを有効な思考の道具として経営に活用することができます。



経営とデザイン(9)クリエイティブ人材育成が急務

(文中要約)
英語では創造性の対語は生産性である。日本企業は生産性が低いことが大きな課題になっており、政府は働き方改革などによって改善を促している。数字の上では単位あたりの労働量を減らせば生産性は向上する。しかし、日本企業に今最も求められているのは、創造性の発揮によってもたらされる生産性の向上である。
生産性の算出式を簡単に言えば、分母が労働量、分子が付加価値だが、分母を減らそうと四苦八苦するよりも、分子を拡大することにもっと力を注ぐべきだということである。
そして、分子の付加価値を拡大する有力な方法が創造性の発揮である。創造性と生産性は相反するものではなく、等式の右辺と左辺のような関係と見ることができる。

プチMEMO
MBAデザイナーの「生産性」とは・・・
「生産性=付加価値/労働量」。
生産性を上げるには、労働量を減らし付加価値を高めることです。
付加価値を高める創造性。
労働量を減らす仕事の効率化。
MBAデザイナーは、デザインスキルによる創造性の強化と、マネジメントスキルによる仕事や組織の効率化を両側面から同時に行います。



経営とデザイン(10)競争力回復の原動力に

(文中要約)
「デザイン経営」が多くの日本企業で実現されるために必要な条件について、これまで述べてきたことをまとめてみる。
「デザイン」という言葉の意味が拡大。物品の色や形という狭い定義を超えて、本来の「設計」という意味を取り戻し、さらに企業経営自体もデザインであるという新しい解釈を探求することが重要
ビジネスの実態に合わなくなった意匠法を早期に改正し、企業の知財戦略を後押しする環境の整備が望まれる。
経営に対するデザインの貢献を「見える化」する努力も必要。また公会計で「デザイン費」を費目として計上できるようにすることも検討課題。
象徴として、多くの企業がデザイン戦略をけん引する取締役以上の人材(チーフデザインオフィサー)を設け、デザインを軽視してきた従来の経営から転換できれば大きな前進。
労働量を減らすというマイナスの発想で生産性を高めようとするだけではなく、付加価値を高めるというプラスの発想で取り組む企業が増えていけば、日本企業の競争力回復につながる可能性も開ける。
行政が「デザイン大国」を唱えても、実際にできることは限られる。それよりも民間企業が主体的に、それぞれの「デザイン経営」に取り組むことが、日本経済の未来を切り開く大きな原動力になるはずである。

プチMEMO
MBAデザイナーの「まとめ」・・・
今まで見たことない解がそこにあります。経営の分かるデザイナーが変える未来がそこにあります。
人は誰しもがご自身の人生をデザインするデザイナーであると言えます。MBAデザイナーの役割とは、皆様ご自身が私と同じデザイナーであるこということに気付いていただき、サポートをしていくことにあります。
同じデザイナーとして、ご一緒にワクワクした未来を「デザイン」していきましょう!!



#「先端企業必須。デザイン投資とは」 MBAデザイナー 中山兮智是


2018年5月23日、経済産業省・特許庁主導によりデザイン経営宣言が発表されました。これまでの「ものつくり大国日本」では、デザインを重要な経営資源として捉えることは少なく、機能的価値を満たすことを重視し、デザインの齎す効果を見える化出来なかったことも重なり、感性的価値の向上に繋がるデザインコストを削減する傾向が強くありました。

しかしながら、飽食の時代となった現代において、消費者は機能的価値よりも承認欲求や自己実現欲求に繋がる感性的価値を求め始め、これまで通りのモダンマーケティングをベースとした「ものつくりメゾット」ではモノが売れない時代へと消費者ニーズは大きくパラダイムシフトしています。

GAFAを始めとする米国の先端企業では、既にデザインを経営にとって重要な資源であるとして捉え、投資を増加させています。

デザインに関する投資、或いは、デザイン経営に関してのご質問やご相談等がございましたらお気軽に以下までお問い合わせください。

中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

記事:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ 2019年2月18日付

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