星と鳥と風~24 カリスマ

【出る杭は打たれる】

私は幼い頃から活発で
小学校では応援団長をするような子だった。
応援団長をしたかった理由は
【人より長い鉢巻を巻きたかったから】
目立つ事が大好きなお調子者のおバカさん。
そんな所だ。

しかし応援団長になるには
クラスでの投票で選ばれるしかなかった事を考えると、まぁまぁ面白い子供ではあったかもしれない。
(テストの点数はカツオ並だ)

そんな私だったが、中学に上がると
先輩たちからすぐに呼び出されて
訳のわからない理由でリンチにあった。
【そもそも8対1なんて、自慢話にすらならないだろう】
しかもその後もそのイジメは続いた。
わざわざクラスに3.4人で来ては、
嫌味やマウントを取って帰る。
その度に1人の先輩の優越感に浸った
なんとも言えない顔を覚えている。

「ださ!、いつもいつも皆んなで来てさ、しかもあんた顔がキモいんだよ!」
ある日クラスメイトのMちゃんが、突然言い放った。
クラスで大爆笑が起こった。
「うるせーブス!」
そう言って退散する
まさに
【その先輩とMちゃんが
時を経て結婚するのだから
この世は本当に何があるか分からない】

しかし
その後も陰険なイジメは続くのだった。
今度は呼び出されて、非常階段で訳のわからない、脅しのような事をささやかれる日々が続いた。
(貴重な昼休みにコレはキツかった)
(それに嫌味を言う奴の口は臭い)
という事を12歳で覚えた。

ある日授業参観日があったのだが
その日は珍しく
【親父】
が来ることになっていた。

何故かウチの親父は特に同級生のヤンキー達
それ以外の友達からもカリスマ的人気があった。
(なんでやねん)
そんな親父が車で学校に来るなり
皆んな
「おじちゃーーん!!」
と言って手を振った。

【今思うと、カオスだ】

親父は紫のスーツに黒塗りの車で
首には18金のネックレスにサングラスと
【The昭和のいかにも」な出立ちで現れた。
あれは絶対に【竹内力】を意識していたに違いない。
一見ただの◯◯団だが、(正確には元◯◯団)だったのだが、とっくに辞めて、魚屋を頑張る
幼い私と一緒で、ひょうきんな人だった。
(そのギャップが人気の秘訣か?)
兎に角親父の人気は凄かった。

そんな親父には口癖があった。

「子供の喧嘩は子供で解決しろ。俺を頼ってくるような弱い男になるな」だった。
なので親父には先輩の事など一言も漏らした事はなかった。

クラスメイトが親父を出迎え
教室まで案内していたのだが
その途中、私がイジメられている先輩達が
渡り廊下でたむろしていた。

「どけ」

親父のドスの効いた一言で
逆に先輩はその場から一歩も動けずにいた。

「邪魔だから、どけって」
また親父が言い放った。

ハッとして廊下の端に起立する先輩が面白すぎて、皆んながクスクスと笑っていた。
私はいつもいじめられていたが
【それでも少し先輩達を不憫に思った】

確かに若い時の親父には
何か恐ろしいオーラは漂っていた気はする。
(生活を共にする私にはあまり分からないが)
実際に腕っぷしもかなりの物だったが
よく
「喧嘩が強くたって、この世じゃなーんにもならん!バカバカしい」
とTVを観ながらよくぼやいていた。

そんな親父が先輩達を制して
立ち去ろうとしたが、くるりと振り返って
またスタスタと先輩達の所に1人
向かっていった。

親父は満面の笑みで、先輩の頭をナデナデしながら喋っているのが見えた
(何を喋っているかは不明)だったが

いつも優越感に浸っている先輩が
【お漏らし】をしていた

後で聞かされた。

何をやったか分からないけど、大体見当はつく
今この時代で親父の行動は完全に
【アウト】だが
それから全くイジメは無くなった。
どころか先輩達は話してもくれなくなった。

後に親父に何を話したのか聞いても
(フレンドリーに話をしただけ)
としか言わないのだ

どこで親はそんな話を聞くのかは謎だし
いつもぶっきらぼうで、私に1ミリも興味が無いような親父だが

【親の心子知らず】

といった所だろうか?


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