星と鳥と風17~星とビンギ


もう少し
あともう少しだけ時間を下さい
あの人に、まだ伝えたい事がある



プルルル【iPhoneの着信音】
「もしもし、どうした?」

「今大丈夫?」

「今、休憩中だよ。どうしたの?」

「そっか..あのね」
「今、ビンギが召されたわ」

「...」

「穏やかな最後だった」

「…」

「でもやっとビンギが苦しまなくて済む」
「今日のこの日まで待っててくれたのかな...」
(この日は鳳の誕生日だった)

電話越しの彼女は、今にも自分の感情に押しつぶされそうな震えた声で、私に電話をかけてきた。

【やはりそうだったのか】

昨晩、夢で聴こえた、苦しみながらも何者かに懇願する声の主。

【それはビンギだったのだろう】

奇しくも、その日は鳳の誕生日でもあり、同時に、ビンギの20歳の誕生日でもあった。

【20年】

その歳月は、2人以外、知る由もないが、当時から2人の絆は、一度見れば、誰でも分かる程に
良いエネルギーに包まれていた。

それに、あんなに苦しみながらも、大事な鳳の誕生日まで祝ってから、空に旅立つ、ビンギの存在は、私にとっても、【宇宙】のように大きい。

私は、夢で聞いたその先の言葉が、ぼんやりして、思い出せないでいた。
仕事が終わるとすぐに、【ビンギと鳳】の元へ駆けつけた。
沢山の花に囲まれたビンギは、穏やかな顔付きをしていたが、同時にその体に、もう彼女の魂が居ない事もすぐに、実感した。

当たり前だが
それ程にビンギの持っているエネルギーは大きかった。

鳳も、涙で瞼は腫れていたので、昨晩も、泣き腫らしたのだろうが、同時に覚悟を決めた目をしていたのを覚えている。

その後に2人で会話をした。
大事な話だった事は覚えているが、
何を喋ったかあまり覚えていない。
まるで自分じゃないような
そんな感覚だった。

覚えているのは

【私の代わりに叶えられなかった夢を実現させて】

という、強いメッセージと
【ビンギと話す内容の一部は他人にもだが、鳳にすら話さない】というルールのようなものだった。

【それだけは今でも謎だ】

なので、今でも2人だけの話が、わたしの胸の中に、大事に閉まっておいてある。

そして、この頃から、【形】という枠を飛び越えた、ビンギとのコンタクトが初まった。

それに、【体】という【縛り】から解放されたビンギは、より若く、強い光のようなものに包まれていた。その元気というにはまた違う、より高貴なオーラを見に纏った彼女に僕らの【心配】や【悲しみ】など無用でもあった。

それから私達は鳳の家の庭に
【ビンギの肉体】を埋葬した。

それから数日して、私は【いつもの日常】にいた。
ふと、仕事の最中に突然【ビンギの匂い】がした。
最初は気のせいか、彼女の家に行った時の匂いがついていたのだろう。と思っていたのだが、もう一度今度は強い匂いを感じた。

そして

【インターネットを見て】

確かにビンギの声が聞こえた。
更に
【準備が出来たから、3人で旅に出よう】
とも、言われた。

私にとって、2つともよく分からないメッセージだった

その日のお昼の休憩中に、自分なりにビンギのメッセージを考えてみたが【インターネット】と、ひとえに言われても、よく分からなかった事もあり、いつも休憩中に観る【YouTube】を開いてみた。
YouTubeを開いた1番上に上がってきたものが
【タロット占い】
だった。
(まさか、これ?)
いつもなら、目にすら止まらないトピックに戸惑ったが、いつも見ないからこそ気になって見てみた。 

しかしそれは
(私にとって、衝撃的な内容だった)
内容的には

*今のパートナーが魂の片割れだという事
*パートナーと旅をする事
*音楽に携わる事をする事
*旅のガイド役が2人いる事
*1人は魔法使いのおじさん
*もう1人は動物
*人生市場最高に生きながらも最高に苦悩がつきまとうだろう事
*自分でいる事を選択し続ける事
*何があってもパートナーを信じる事
*自由でいる事

だった。
まさにさっき、ビンギに【旅に出よう】と言われたばかりだったし、それに、鳳は、京都での春のツアーに出ていたのだが、そのツアーに同行している【ギターのM氏】が、(魔法使いのおじさん)
にしっくりきていた。
M氏は私にとって【世界一のギタリスト】だ。
氏が奏でるギターの【一音一音】は私の細胞の一つ一つにまで染み渡り、普段、私が開けてはいけないと守っている心の扉までもを、最も簡単に開けてしまう。
そして、感情の最もディープな部分にまで音が触れてくる。
(それがまるで魔法でも使っているかのようだった)

それに、今まさに、京都での彼らの演奏が
九州にいる、私の胸を打っていた。
そう言う意味でも氏が(魔法使いのおじさん)だと、自分の中で腑に落ちた。
(当然、普段ならなんのこっちゃ?だが、何故か私の全細胞が、【そうだ】と訴えかけてきていた。

その時辺りから私はどうも体調が悪く、時折、目眩がして、作業中に倒れる事もあった。それから
【嫌だと感じる事】【やりたくない事】【不快に感じる人、食べ物】etc.を食べたり、接触すると、激しく体が拒絶反応を出すようになった。
わたし自身は嫌な事も、やりたくない仕事も、不快に感じる人付き合いも、言ってみれば
【この世の常】
のようなものだし、それに、いちいちそんな事を気にしていたら、
【この社会】では【生きていけない】と思って、日々を送っていたが、その日の15時頃

【私はまた落雷が頭に落ちてきたような感覚を味わって、仕事の作業中にその場にへたり込んだ】
そして

【何故か江戸時代にいた】

つづく






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