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【転職】なぜ君は会社の評価に不満を持つのか part1

私は25歳までフリーターをしていましたが、28歳で広告代理店の正社員になりました。その後、中小企業、再び大企業と2回の転職を経験しています。幾度かの転職を経験して、現在では社内評価というものを客観的にみることができるようになったという実感があります。今回はその経験を基に「人事評価」について書きたいと思います。

① 職務等級(役割)制度とは?

私は28歳で広告代理店の正社員になってから、すでに数十回の人事評価を受けています。しかし、自分が得た達成感(がんばったという感覚)と比較すると、満足できる評価をもらえたことは多くなかったように思います。

なぜヒトは会社の評価に満足できないのでしょうか?

筆者は企業経営の仕組みと人事制度には相いれないポイントがあると考えいます。

企業が採用する人事評価はいくつか種類があります。

その人が”なにができるか”で評価をする「職能評価」
業務内容で評価する「職務評価」
売上・利益など会社への貢献で評価する「業績評価」 etc.

現在、大企業で最も多く採用されているのは「職務(役割)等級制度」ではないでしょうか?


本制度では、等級1、等級2、等級3(企業によってはJ1やM3など表現は様々)と社員はランク分けされ、職種に応じて各等級で”どのような職務・役割を果たすべきか”が定義されています。社員らは、等級に見合った活躍ができているかを基準に自己採点をしたり、多面観察をされたり、上長・人事の評価を受けることになります。

私は実際に所属した会社、転職活動を通して話を聞いた会社、仕事を通してヒアリングした会社などを含めると、数十の企業の人事制度を聞きましたが、大半の企業は類似の制度を採用していました。(目標管理制度と組み合わせているケースが多かったと記憶)

この背景には、年功序列から脱却すべきだとする社会的要請が影響しているのでしょう。バブル崩壊後、長く定期昇給制度が採用されていた日本企業に、欧米流の実力主義的なやり方がブレンドされて構築されていったものなんだと思います。

② "一見して" 絶対評価にみえるという罪

昨今の「ジョブ型雇用」にも言えることですが、職務等級制度は評価の公平性や透明性を重視しています。評価基準をオープンにして、年齢や実績に関わらず、誰でも定められた職務(役割)を果たせば高く評価されるという、言わば「絶対評価」的です。

しかし私は、職務等級制度が”一見して”絶対評価にみえることが、かえって社員の不満につながっていると考えてます。

私は過去に広告代理店で予算編成業務に携わっていました。予算編成プロセスというのは、会社によって千差万別で、経営コンサルの人たちに聞いても「会社によって違いますね」という回答だったので、なかなか”これ”という回答がないものです。

しかし、大まかに言えば他の経営の意思決定プロセスと類似していて、大別して「トップダウン型」と「ボトムアップ型」に分かれます。「トップダウン型」は最初から費目ごとの概算を決めてしまい、その後内容を調整する。「ボトムアップ型」は各部署に予算額を聞いて回って、経営層で調整するイメージです。国の予算はボトムアップ型っぽい決め方ですね。

企業経営では予算は”株主への予告”という側面があります。我々はこんな感じで経営していきますよ、ということを決算説明会とかで公開するわけですね。当然のことながら、(予想できない外部環境の変化を除いて)その予告と全然違うことはできません。人件費予算も同様です。人件費予算は新規採用数、退職者数、派遣社員の増減、現社員の総人件費の増減など、様々な要因が関連しますが、決められた予算を大きく超過して「実績が予算を大きくオーバーしてしまいました」なんて言えないのです。

さて、このときに採用している職務等級制度が厳密に絶対評価で運用されていたら、何が起こるでしょうか?

仮に、商品開発部も営業部も頑張ってくれた。その結果として企業業績が上向いたという状況なら、売上増加に合わせて、多く給料を払ってあげればよいでしょう。配当原資は当期純利益から捻出されるため、株主も「まあいいか」ってなもんです。

しかし、社員が高い職務・役割で評価されてもいいような頑張りをみせたにも関わらず、なんらかの外部環境の影響で企業業績が不振だったらどうでしょう。「売上は増えなかったけど、社員が頑張ったからボーナスを大判振る舞いします」なんて会社は株主から見放されてしまいます。

また、十年間使い続けていた業務基幹システムの入れ替えがあった年も評価で困るでしょう。これまで”そうでもなかった”情シス社員10人くらいが、一念発起してベンダーコントロールや部門横断的な交渉事に尽力した。いやいや、こちらも負けてはいられない。業務基幹システムは経理部門も影響するんだ、とばかりに経理部門の社員10人も同じような頑張りを見せた、なんてことがあった場合、それぞれの社員は明らかに高いクラスの役割を果たしたと言えます。でも、それを絶対評価して20人に多額のボーナスを払っていたら、人件費の実績値は予算額を大きく超過してしまいます。

つまり、人件費の総額は「フタ」があるのです。

③ どうとでも解釈ができる基準

そうした前提がある場合、会社側がどういった対応をとるか。

それは非常に簡単で「絶対評価風の相対評価」をするのです。

今、職務等級制度が採用されている会社で働いている人たちは、各等級のディスクリプションで、以下のような文言を目にすることがないでしょうか?

会社の方針を十分に理解して業務を行い・・・
他者のロールモデルになるような貢献を・・・
上長の指示やアドバイスを受けることなく・・・ etc.

すごく、アバウトですよね。
まさに相対評価ができるように”どうとでも解釈ができる基準”になっているのです。

もともと職務等級制度において、各等級で”果たすべき役割”の基準を作ることは、大変に難しい仕事です。仮に営業職で”そこそこ優秀な人”が果たすべき役割はなんでしょうか?直観的には「年間の売上高1,000万円」や「年間200万円の貢献利益」など、自身の営業活動から計上された財務指標を用いるのが簡単です。

しかし、売上の多寡は、配属する部署や担当する製品・サービスに大きく影響します。個人の実力や努力が完全に反映されるとは限りません。また、それだけを基準にすると、自分の売上だけを優先する人が増え、同僚との協調や部下・後輩の育成は停滞するでしょう。

それでもまだ、営業職やコンサル職など、顧客との接点が近い部門の社員は評価がしやすいはずです。数字が伴うのは確かなので、ベンチマークのひとつには採用できます。問題は管理部門に所属する社員です。分業化され、ひとりひとりが微妙に異なる作業をしているなかで、これを統一のフォーマットで評価しようというのは、どだい無理ってもんです。(まあそれでもなんとかやるものなんですが・・・)

そんな背景もあり、そもそも基準は非常にあいまいなものになります。

④ 現場ではこんなことになる

これが現場で運用されると、評価される側も評価する側も、
結局はしかめっ面でやりとりすることを余儀なくされます。

評価される側はこう思います。

あれ?俺はチームリーダーだから「他社員のロールモデルになっている」はずだよな。だったら、等級3のはずじゃないのか・・・

私は経営会議資料の作成のために、各部門に予実の状況をヒアリングして回っている。これは等級4の「全社に影響を与える業務」に該当する仕事のはず・・・

でも評価する側は、部門全体で割り振られる人件費が制限されているので、解釈を変更せざるを得ません。

まだ「他社員のロールモデルになっている」と言い切ることはできないな・・・

「全社に影響を与える業務」っていうのはそういう意味じゃないよ・・・

管理職の人たちも大変です。


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