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日本は専守防衛などと称している。 憲法がそうさせている。これほど珍妙な話はない。

2019-12-02に発信した章である
私と同様に月刊誌4誌を定期購読している有数の読書家である友人は、
加地伸行大先輩と私は呼応していると言った事は既述の通り。
以下は月刊誌WiLLの冒頭に、朝四暮三、として連載されている加地伸行氏の論文からである。
老生、素浪人である。
当然、名刺はない。
さりながら、新しい人との出会いが時々あるので、名刺があれば便利と思うことあり。 
その点、家においては気楽。
もちろん、家人の指揮下の兵士である。
しかし、兵士は気楽気楽。家人の命令をこなしておけば、それで良し。
あとはテレビを観て悠々。 
さて或る日、指揮官(家人)から特命が下った。
〈烏問題〉を解決せよ、と。 
烏問題とはこうである。
週に二回、家庭ゴミの収集がある。
もちろん大阪市の仕事。
実質的には業者が回収。
その回収日、各家庭は家庭ゴミを家の前の道路に出しておく。 
本来ならば、それで終り。
ところが、家庭ゴミの中の残飯を狙う輩がいる。
第一は野良猫(近ごろは地域猫と言うらしいが)、第二は烏である。
この連中、厚かましく、ビニール袋を破って残飯を漁る。もちろん、散らしまくって、ゴミの山。
大阪市の回収車は散らばった残飯など拾い集めたりしてくれない。
そこで、包んだゴミ袋に対して、大きなネットで更に包んでおく。
その包み口はゴミ袋の下にもぐらせておくので、まずは安全。
野良猫は、あっさりとパスしてくれた。 
ところが、烏は違う。
奴らは執念深く、まず外覆いのネットを引っ張って引っ張って、中の包んだゴミ袋に嘴が届くまでがんばる。
後は、乱暴狼藉の数々。 
この烏軍からの防衛を命ぜられたのである。
家人指揮官から。
兵士としては、承詔必謹。 
そこで考えに考えた。
御近所の諸対策も拝見。
教えてもいただいた。
結果、ほぼ三センチ平方の網目となっている鉄製ネットを百均で買い、組み立て、厳重に縛ってゴミケースを完成した。
もちろん、天井は出し入れ口の蓋、底はなし。
烏はどこからも入れない。
回収者は蓋をあけてゴミ袋を持ってゆく。 
どや、烏ども。
「カーラース、なぜ鳴くの。カラスは負けた……」と意気揚々。 
ところが数週間後、残飯の一部が散乱していたのである。
頭脳明晰な烏どもは、その長い嘴を三センチ平方の空間から突っこみ、ビニール袋を突きまくって破っていた。 
ではどうするか。
今、老生は烏対策に熟慮熟慮中。
つまり、どのように防衛するか、だ。 
ここである、攻撃と防衛と。
その最大拡大版こそ、国家のそれである。
それも日本の。 
日本は専守防衛などと称している。
憲法がそうさせている。 
これほど珍妙な話はない。
残飯漁りの烏に対して、老生は専守防衛するだけであるので、烏どもは、老生が現われると、ひらりと道路の向い側に跳んで悠々と歩いておるわ。
あのドス黒い風体で闊歩、というところ。 
これは尖閣諸島(餌)の周辺に出没する中国船団(烏)に対する日本(老生)の専守防衛(あれこれ防衛)という状況そのものではないか。
問題は、攻撃側が有利ということだ。 
とあれば、〈専守防衛〉の徹底という方法をさらに深化させてゆくはかない。
それは、攻撃より防衛に費用がかかるので現在の防衛費を遙かに上回る予算を必要とするということである。
専守防衛であり、侵略国の本土への攻撃ができない不利にある以上、敵の攻撃を十分に防衛できる防衛をする他に道はない。
そのための予算拡充は必須である。 
しかし、国軍である自衛隊の予算は、日本の国力から見て非常に少ない。
とても専守防衛という目的を達することはできない。 
日本では、義務教育以来、専守防衛と観念的に言うだけであって、その専守防衛を可能とする予算計上は、論じられていない。 
専守防衛に徹するならば、それを可能にする、つまりは敵の攻撃に対抗できる準備のための巨額の予算を組むべきである。
世上の左筋はそこまで考えているのであろうか。 
今、どうなのかが問題なのである。 
古人曰く、俗儒は時宜に達せず。古(専守防衛)を是とし今を非とするを好み……守る所を知らず。何ぞ委任するに足らん、と。

 

 

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