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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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2022年9月の記事一覧

【詩】廊下

「学問って言うのはね、物事をどこまでも他人事として見るから成り立つのですよ」
そんな風に言える先生を、わたしはどこまでも先生だと思っていて、体育館のステージも、棟と棟を繋ぐ渡り廊下も、帰り道を歩いているときも、もちろん教室も、そのどこにいるときも、先生が喋っているあいだは授業が執り行われるのだ、そう考えながら、先生のことをまるで一筋の星を見るみたいに眺めていたのだけれど、本当は先生以外のものがただ

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【詩】花

わたし、ただ誰かを愛するために生まれてきたのだと、きっと遥か昔から決められていて、まるで花言葉みたいだった、いや、本当は、わたしだけじゃなくて、たぶん他のものも、それはもちろんわたしたち人間以外も、ぜんぶがぜんぶその通りで、意味のないものなんてひとつもありませんよ、自分が望んでいなくても、どこの誰とも知らない誰かが、どこまでも詭弁みたいな意味をつけてくれるのだ、あれはきっと愛の象徴ですね、そう誰か

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【詩】海中

ぼくたち生まれたときから、50音の海のなか。
ずっと溺れている。
溺れたとき、心臓のなかを海水がだんだん満たしていくみたいに、ぼくの身体のなかを言葉が満たしてゆく。そして、今も知らないところで、新しい言葉は生まれ、増え続けているから、それで、その言葉がぼくのなかにも、躊躇なく入り込んでくるから、この世界で、真面に呼吸なんてできるわけなかった。
ぼくたち溺れ続ける限り、ひとりになんてなれないよ。

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【詩】傷口の詩

嫌いなひとを思い浮かべながら、「嫌い」と呟くと、
どこか遠くにいるその人が、空を飛び越えるみたいに、本当に傷ついて、
それで、わたしも一緒に傷ついていた。
傷口は存在証明らしいです、
藻掻きながらそれでも生きるのが美しいらしいです、
だから、ありがとう。あなたが、わたしの嫌いな人でいてくれて。
あなたがわたしの嫌いな人でいる限り、わたしは、ずっと傷ついていられるよ。
きっと、あなたもわたしも、ずっ

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【詩】物語の詩

どんな顔なのかも、どこにいるのかも分からない、
この本を書いたあなたのこと、
ずっとずっと好きでいたくて、
だから、ずっと泣き顔で読んでいたかった、
あなたの本を、これ以上ないくらい、泣きながら読んでいたかった、
はずなのに、
真面目な顔をしなければいけないと思って、真面目な顔をして、
そんな風にあなたもわたしも社会を見つめ始めたころ、
物語を読み始めたころ、
きっと、子どもだったわたしたちは死ん

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【詩】彷徨の詩

夜空はまるで目を閉じているみたいで、
街全体は寝息を立てているみたいで、
午前未明、
電車もバスも動いていないから、どこにも行かないことが許されて、
死にたいと思うことも許されていた。
ずっとずっと未明、午前三時のまま死んでしまいたい、
そう思いながら、平凡な朝焼けが、カーテンの隙間から射してきて、
眠りたくない気持ちだけ、浮ついて、浮ついて、知らないうちに焼かれていった。
電車が走り始めた頃から

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【詩】藍天井

雨が降っているから星は見えなくて、
だから空がいつもより深く遠くにあるように感じて、
手を伸ばしてもなにも掴めない、
星がひとつもないから、どこにも届かないような気がしている、
けれど、そのぶんだけ、信号機の明かりや街灯の明かりが、普段より彩度を増しているような気もしている、
ビルの部屋から漏れる光が、いつもより多い気もしている、
そして、こうやって多くの物事の採算はとられてるんだろうなって思って

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【詩】礫

綺麗になりたい
姿形が整っているだとかそんなことではなくて、
宝石みたいに輝いてるだとかそんなことでもなくて、
ただただ透き通っていて、匂いもなくて、どこまでもどこまでも水平線みたいで、きみたちの世界の検索にもまったくかからない、誰もわたしを認識しようとすることなく、ただ真水みたいに、不純物の一切もなく、たんぱく質でもないなにか。
真水に比べたらみんな不純物だよ、とわたしは叫んでいる。
それは自分

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【詩】満月

布団のなかでひとり蹲って、丸くなっていることしかできない、できないけれど、そのあいだだけ、欠けることのない満月にだってなれるんだと思った、月と違ってわたし自身が光ることなんてないけれど、月だって本当は月自身が光っているわけではないから、わたしはわたし以外の誰かが、わたしを照らしてくれることをどうしようもなく望んでいて、胎児のように丸まっている、いきなりすべてが浄化されたみたいに透明感を増して、綺麗

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