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金木犀に出会う。

 雨が時折降ってくる。降っていると思っていると不意に止む。重ったるいグレイの雲は遠くの空の隅に居座っている。真上の雲は明るい色をしている。当分は降らないだろうと思い外に出た△

アスファルトの道は濡れて光っている。今しがた雨が止みました、と告げているようだ。今はちょっと曖昧な時なのを証明するかのように、乾いたようなすっきりとした風と、湿気を少しだけ含んだもやっとした風が、風向きが変わるたびに交代で吹いてくる△

いつもこの場所で会える猫が二匹いる。そのうちの一匹は最近見かけない。別の場所で出くわして(と言うのは相手の猫が驚いたような顔をしていたから)以来、会っていない。今日も白い猫はいて、車輪の下ならぬ車の下で香箱を作っていた。小さく声をかけると、目をパチパチしてくれた。猫も挨拶返し△

コンクリートの壁に沿って進んでいく。ごく小さな葉を密集させた植物が、壁と壁のスキマから顔を覗かせている。それを横目で見て通り過ぎる△

左に曲がってから住宅街の道を、目的のスーパーに向かって黙々と歩いていく。進行方向にこんもりとした一本立ちの樹があって、この樹がここに以前よりずっと立っているのは知っている。何も思わずにただ通り過ぎるだけだった。しかし葉の茂みにオレンジ色の塊が見える△

それは、金木犀の花だった。ほんの小さな花だが鮮やかなオレンジ色をしていて香りは意外と薄い。今日はこの樹が、金木犀だったと知った日になった。

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これより上は、天声人語のルール(603字/6段落)に沿って書いてみる、に勝手にただ今挑戦しています。お読み下さり、ありがとうございました^^!




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