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しみじみエッセイ

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半笑いの表情で書いています。
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2024年4月の記事一覧

道いっぱいのツツジ

道いっぱいのツツジ

外に出れば、道いっぱいのツツジに出会う。
濃いピンクのものから、薄いピンク、それから真っ白なものまで。

私が小学生のころ、友達から「ツツジの蜜、あまいよ」と教えてもらってチューチューと吸っていた記憶がある。そのことを思い出して息子にも教えたのだけど、あとで調べたらツツジには毒がある種類のものもあるので、吸っては駄目なのだとか。あとから青ざめる、みたいな体験は子育てにはつきものなのかもしれない。

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なにかに夢中になるだとか

なにかに夢中になるだとか

ちかごろはとても、とてもゆっくりと、静かに過ごしている。
それはきっと薬効のせいでもあるし、調子良くて上が90という低血圧のせいでもある。しずかぁに、まるで物音をたてないよう気をつけているかのような慎重さをもって、日々をやり過ごしている。

以前はもっと、何かに急かされるように生きていた。
腹の奥底から湧き上がってくる衝動に促されながら、人に「疲れない?」と心配されたりもしながら──でもそれを是と

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aluというサービスに改めて「よき」と思った話

aluというサービスに改めて「よき」と思った話

今日、オフ会をした。
いや、たぶんオフ会ではないのだけれど、お互いをXのアカウント名で呼び合う様子は、確かにオフ会のそれであった。私が店員なら頻繁に隣のテーブルを拭きながら少し耳をそばだてていただろう。

ライター同士の集まりであった。
もり氏さんをはじめ、みっちーさん、あまみんさん、それからたけのこさんとまわる まがりさんというメンバーだ。

つながりの発端はaluというマンガサービスの存在だ。

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深海と呼吸

深海と呼吸

息を吐く。細く、長く。
体内の酸素を使い果たさないように、慎重に。
少しの目眩のあと、じわじわと過去が積み重なるのを感じる。
人のものさしでいうところの、過去。
じっさいには、どこにもないはずの、過去。

記憶を頼りに、思い出の横に線を引く。
「じつに滑稽なり」と。
眼の前がチリチリと点滅する。
狭まっていく視界に、確かに珊瑚が見えた気がした。

ベルトのバックル、ケーブル、床のホコリ。
私の世界

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暗がりの中で本を読む

罪悪感が伴うと、愉しみは一層つよくなる。
そしてそれは深夜に起きることが多い気がする。
ラーメンもプリンも、音楽も映画もタバコも、夜のほうが絶対ウマい。

私は本を読むのも、夜のほうが楽しいように思う。
それも暗がりの中で、少しの明かりを頼りに読むほうが。

目にも悪いし、昨今はスマホで明々と照らされた画面もあるものを、敢えて紙の本で「読みづらいなぁ」と思いながら読むのが好きだ。

ひっそりと隠れ

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【エッセイ】死に際に笑う

【エッセイ】死に際に笑う

今際のときになって、にやりと笑って消える。
そんな死に際に憧れる。ゴールド・D・ロジャーみたいな。

人には誰しも、表立っては言えないようなものがある。
やましさだったり、嫌悪だったり、願望だったり。
多くの共感を生むような言葉には、いつも反論がつきまとう。
そうした反論が怖くて黙ってみたり、勇ましく宣言してみたり、レトリックでごまかしてみたり、あるいは潔白のように振る舞ってみたり、どちらにしろ批

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