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何度でも読み返したいnote4

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。 こちらの4も記事が100本集まったので、5を作りました。
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2023年1月の記事一覧

あかの他人の一言がずっと心に引っ掛かる

 街中ですれ違った人、電車で前に立っていた人、喫茶店で隣に座った人。  たまたまそこにいた場所と時間が重なっただけのあかの他人が言ったひとこと。  それが忘れられなくて、ふとしたときに思い出すことがある。 「つくねに柚子の皮を入れるとおいしいんだよね」  これはある日、立ち飲み屋で1人で飲んでいたら、隣の隣の隣くらいにいた20代カップルのうち、カノジョの方がカレシに説明していた。彼らは焼酎お湯割りを飲みながら漬物を口に運んでいた。カレシは「へえ」と興味なさそうに相槌を打つと

思い上がりの青空に

大変お恥ずかしい話なのだが、今も、両親からお年玉をもらっている。 社会人になってからもずっと。今年も。 四十路を過ぎた娘が、七十代の親からお年玉をもらう。 定収入のある娘が、年金暮らしの親からお年玉をもらう。 都心で気ままに暮らす娘が、地方で慎ましく暮らす親からお年玉をもらう。 どこをどう切り取っても、世間的にアウトなのは明確だ。 毎年、「もういらないよ」と断ろうとするのだが、「いいからいいから」と強引に握らされる。「あげられるうちは、あげたいから」と。 もちろん、もら

ヒトラーのための虐殺会議|私はこの会議を知っている

静謐な湖畔に佇む瀟洒な屋敷の中、宝石のようなフィンガーフードと琥珀色のコニャック、香り高いコーヒーを小道具にその会議は進む。有能で理知的な紳士たちは90分という短時間で、とある「大問題」への解決策について鮮やかに合意を取り付け、速やかにその実現に向けて動き始める。暴力も死もその中には一切持ち込まれず、声を荒げる者すら現れず、あくまで優雅かつスマートに、会議は終わる。 なのに観終わった後、掛け値なしに最悪な気分になる映画だ。人によってそのわけは違うだろうけれど、私にとってのいち

屋根裏のアンコールワット。

小さなころから行きたかった。 カンボジアのアンコールワットに。 資料集の写真を食い入るように見つめる小学生だった。学校の図書室に1人で行って『世界の不思議』みたいな本を読みふけっていた。 心をとらえて離さない。 アンコールワット。 ガシッと。 富良野のひいおばあちゃんの家の屋根裏には、誰が集めたのか分からない『子ども世界遺産』みたいな本がたくさんあった。そこにも載ってた。アンコールワット。 お盆に富良野に行くとワクワクしたのは、あの屋根裏部屋があったから。ドサっと

ビール好きキャラを演じてたあの頃

今度、初めてお会いする方とのお店選びをしていて。いろいろ候補があった中で、最終的にビアバーに決まったのですが…… 気づけばビアバーに行くのってすごく久しぶりかも!いつぶりかな?といろいろ思い返してたら、昔「ビール好き」を公言してた頃のことを思い出しました。 大学でオーケストラサークルに入ったらビールしか飲むことが許されない、まさかの体育会系な環境で。それをきっかけにビールを飲み始め、だんだん好きになっていった…… というのがビールとの出会い。 でも20代後半になるにつ

単調な独り暮らしを少し愛せるようになった話

南東向きの窓から差す朝日で目が覚める。 渋々と布団から這い出し、マグカップに入れてチンした甘酒を飲む。 ちゃちゃっと身支度と洗濯を終える。 狭い玄関にごちゃごちゃと置いている靴を足でどけて踏み場を作り、家を出る。 昼、小さな事務所でカタカタとパソコンに向かう。悲しいかな零細企業、閑散期は多忙に追われることもなく、緩やかに時間が流れる。 定時で上がり、愛着はあるが少し住み飽きたこの街の夕暮れに漠然とした焦燥感を感じつつ帰路に着く。 焦燥感の正体には、うすうす気づいている。

ロスにロスを重ねること

数年前、大好きだった俳優が命を絶った。三浦春馬。初めて、同世代に「色っぽさ」を感じる存在だった。まさか、居なくなるなんて想像したこともなかった。 スクリーンを生きる人は、思い出さないときでも、テレビの裏側できちんと生きていて、脚光を浴びたときに、再び、世間から注目される。そんな陰陽を繰り返して、当たり前に生き続ける存在だと信じてた。 忘れもしない、灼熱の昼下がり。車を運転していた。後部座席に乗っていた母親がスマホ片手に言った「三浦春馬が亡くなった」と。みるみる体から力が抜

今日も何もない素晴らしい一日だった

日記を書いている。きちんとした日記帳があるわけではない。ノートの片隅に思いついたように書いたり、手帳にメモしたり、その程度だ。何か目的があって書いているわけでもないし、大したことでもない。2〜3ヶ月後の自分が見て「何書いてんだコイツ」と思うようなことばかり書いている。 「日記を書いている」という話を妹にしたら、「日記に書くようなことが、私の毎日には起こらない。私が日記を書くとしたら、今日も何もない素晴らしい一日だったって書くだろうな」と言われた。 なにそれ。素晴らしすぎな

あたりまえじゃないからなとつぶやいて帰った神楽坂の夜

昨日の夜は親友とごはんへ。 場所はどこにしようかなーと悩んだ結果、私が好きな神楽坂の居酒屋さんへ行くことになりました。 住宅街にぽつんとあるちょっと隠れ家っぽいお店で。かなり久しぶりでしたが、行ってみると前と何も変わらなくてなんだか安心しました。 一歩中に入ると木のぬくもりが感じられるアットホームな雰囲気で、店員さんもとっても気さく。 あー久しぶりに来たけどやっぱりいいなー!と大好きなお店に親友と来れた喜びをかみしめつつ。 名物のアジフライ、刺身の盛り合わせ、だし巻