インタビューの極意を学ぶと、人見知りを解消できる気がする →ライブハウスで試してみて!
言葉って、なんだろう。
日常に於いて、”日本語”で最低限の会話ができるくらいは、おしゃべりができる。
“エッセイ”と、自分で言い切れば、こうしてnoteで記事も書ける。
それでもわたしは、”日本語”こそ学んできたけれど
「文章を書くことそのもの」や、文章を用いて「伝える方法」を、を学んだことはない。
200日以上、毎日noteを書き続けてきたけれど
そうだ、わたしは誰かに「書くこと」、文章で「伝えること」を学んでみたい。
文章寺子屋「ぶんしょう舎」が、わたしを呼んでいた。
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2回目の講座は、ライター/編集者の菅原さくらさん
1987年の早生まれ、よく言う「学年は1つ上」ってやつだけど、生まれ年はわたしと同じ。
それなのに、オンライン講座の画面に映る菅原さんは、毅然とした姿勢で、たくさんのインタビューの仕事をしている、と経歴を紹介された。
インタビュー、対談についての講座ということだったけど、「これを学ぶとどうなるか」が最初に表示されたのを、わたしはまじまじと見つめる。
▲ライター
・企画提案の輪が広がる
・スキルが身につけば、単価も上がりやすい
・自分自身は凡人でも、やっていける
▲ライターではない人
コミュニケーションの足しになる
インタビューなんかもちろんしたことがないけど、これからやってみたい。
そう思っていたわたしは、えらそうに「ライター」の欄ばっかり見て、メモを取っていた。
でも、ライターではないわたしが、翌日からさっそく、この講座の内容を「コミュニケーションの足し」として、利用することができたので、本当に驚いている。
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この講座を見た翌日、わたしは友達のライブに誘われて、出掛けていった。
屋上でライブを企画する友人は、もともと大学時代の先輩で、もう10年以上の付き合いになる。
一応、「山岡くん」と敬称付きで呼んではいるけれど、同じ釜の飯を食った仲間というか、とりあえず先輩だとは思っていない。
友達の譜割くんも、山岡くんからの熱烈なラブコールを受けてライブに行くというので、一緒に行くことにした。
山岡くんのライブには、他に顔見知りもほとんどいなかったので、わたしは譜割くんといろいろしゃべりながら、ライブを見ていた。
「このひと、すてきだね」と、譜割くんが言う。
わたしはいつもだったら聞き流してしまうこのセリフに、「待てよ?」と思った。
「すてき」とか、ライブハウスで言うなら「うまい、へた」「好き、嫌い」という感想はよく出てくるけれど、待て待て
これだけじゃ、わからない。
「なにがすてきだと思ったの?」
わたしは、ゆっくりと聞き返した。
「すてきだ」という言葉を疑っているわけではない。
でもこのままだと、譜割くんが「何にすてきだ」と思ったのかという、譜割くん自身の考え方もわからないし、
ステージ上で歌っている人の「何がすてきで、良いところなのか」ということもわからない。
「譜割くんは、ステージで歌っている人のことをすてきだと思っている」ことは理解できたけれど、これって実は情報量が、うんと少ない。
「息の使い方」と、譜割くんは答える。
息の使い方。
これも、言葉としてはこれ以上ないくらいわかりやすい気がするのに、状況は全然伝わってこない。
これがインタビューだったとしたら、
まつなが:このライブを見て、どんな感想を持たれましたか?
譜割:すてきだと思いましたよ。
まつなが:特に魅力に感じた部分を教えてください。
譜割:そうですね、息の使い方でしょうか。
……わかる
……いやでも、全然わからない。
でも、譜割くんとわたしの個人的な付き合いに於いて、「息の使い方」については以前説明を受けている。
「それってこのあいだ聞いた、AくんとBちゃんの歌い方の違いってこと?」
「そう」
「このひとは、Bちゃんみたいな歌い方になっていて、それが本人に合っているからすてき、ということ?」
譜割くんは、深くうなずいた。
ここまで聞けば、もう少しちゃんとしたインタビューになる。
まつなが:息の使い方、というと、「息を吸う量が多く、その扱い方が秀でている」という意味でしょうか?
譜割:そうですね。呼吸量の多さが、このアーティストに適した裏声の使い方に繋がり、支えになっていると思います。
ここまで書くと、ちょっとそれっぽくなるけれど、音楽に対しての共通理解とか、前提がないと、なかなか伝わりづらい内容かもしれない。
それでも、「書く側」の伝えようとする意志、は少しずつ乗ってきたような気がする。
わたしは、譜割くんに様々な質問をした。
こうして、いつもより切り込んでいった。
「こういうこと?」と仮説をぶつけたり
理解するのが難しいときは、「わたしの歌や演奏と比べてどうなの?」と、わかりやすい比較対象を設定して、細かく聞いていった。
*
山岡くんにも聞いてみた。
理論派の譜割くんに対し、山岡くんはわたしの友人の中でも、トップクラスの感覚派だ。
今日はオススメのアーティストばかり呼んだからぜひ見て欲しい、とラブコールを送ってきた彼が、わたしの隣に立った。
「このひと、すてきでしょう?」と、彼はいつも通り言う。
うん。それはもう、LINEで聞いてる。
「山岡くんはさ、このひとのどんなところがすてきだと思うの?」
「ノリかな!」
ノリ!!!
これも、音楽の現場ではよく使われる言葉だ。
そして、定義が曖昧な言葉で、一般的に使われている「ヤバイ」くらい、汎用性が高い。
これを期に、コトバンクで「ノリ」について調べてみた。
(コトバンクより引用)
日本音楽の用語。 おもに能楽において拍節的リズムを意味する語。 ... 「ノル」といえば,そのリズム感を鮮明にするか,その目的で単純化することをいい,その結果テンポを速めることにもなるので,三味線音楽などでは速度または緩急法についてのみいうことが多い。
……全然わからない。
解説を読んでもこんなによくわからない言葉を日常的に使っていたなんて、驚きだ。
近い言葉で、グルーヴというのがあるみたい。
(コトバンクより引用)
グルーヴ(groove)とは音楽用語のひとつ。 グルーヴを構成する要素としてはリズムやテンポ、シンコペーション、アーティキュレーションなどが挙げられ、主にリズム体(ベース、ドラムス、パーカッションなど)を対象とした概念である(例:グルーヴィーなドラミング、など)。 ... 「ノリ」(乗り)を表す言葉である。
こっちのほうが、馴染みがある気がする。
基本的に、ノリはリズムに紐づく概念みたいだということが理解できる。
なるほど。
でも、山岡くんが「ノリ」と「グルーヴ」について説明できるとは思えない。
いや、仮に説明できたとしても、君の感覚で教えてくれなきゃよくわからない。
「ノリ」って、音楽の現場だと「リズム」じゃなくて「雰囲気」に紐付いていることもあるし、山岡くんは、かなり雰囲気でしゃべるタイプの人だ。
「ノリって、どいうこと?」と聞くと、驚いていたけど、まじめに答えてくれた。
「リズムかな。あと、メロディーラインと歌詞が好き」
なるほど、ここまで言ってくれるとわかる。
「それじゃあこのひとは、山岡くんの好みのリズムで、歌詞に適したメロディーラインで曲ができているところが好きってこと?」
「うん、そんな感じ」と納得してもらえた。
「たくさん質問してごめんね」とわたしは謝る。
「でも、山岡くんのこと、もっと知りたくってさ」
「思ってもないくせに」と、山岡くんはいつもみたいに笑ったけど、わたしはまじめだった。
「いつも、すごいとか、やばいって言葉に頼ってた。
でも、何がすごくてやばいのか、確認をすることで、わたしは山岡くんが”音楽に於いて、何を大切にしているか”を、正しい意味で理解できるようになると思うんだ」
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ぶんしょう舎で学んだインタビューの極意はたくさんある。
ひとつひとつを抱えて生きてゆくのは難しいかもしれないけれど、
わたしはいちばん大切なこのことだけは、忘れずにずっと抱えていたい。
そのことについて、一緒に考える姿勢を持つ
聞いたことを、分析して、一緒に発見してゆく。
インタビューを受けた相手にも、何か持って帰ってもらえるように
今回わたしは、ふたりのミュージシャンに、音楽についての質問をした。
君たちが「すてき」とか「ノリ」という大枠でしか表現しなかったことを、わたしは少しだけ紐解いた。
君たちの中には既にある感情だったかもしれないけれど、それを言語化したことで、何か発見はあっただろうか。
わたしはたくさんのことを教えてもらったから、君たちにも新しい発見があったら嬉しい。
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そういえばライブハウスって、質問の宝庫だと思う。
道ですれ違った人に、道を尋ねる以外の質問をしたら驚かれるけれど、ライブハウスだと結構まかり通る。
特にわたしは、へらへらといろんなことを聞いてしまう。
ミュージシャンには、「曲どうやって作ってるの?」と尋ねる。
あなたそのものを知りたいときは、「曲を作るときに大切にしていることはなに?」と
あなたのようになりたいと思えば、「曲と詞、どっち先に作る?」とか
お客さんにも聞いちゃう。
そしてふつうに、人生相談が始まったりする。
「今日仕事だったんだ」と言われると、お疲れさまを伝える。
「どんな仕事をしているの?」と教えてもらう。
相手が仕事について楽しそうに話していると、「仕事のどんなところが好き?」と聞いてみたりする。
嫌がられることもあるけど、そうしたら謝ればいい。
もしかしたら「仕事だったんだ」と言った人に対して急に、「仕事の何が好きなの?」なんて聞いたら怒られるかもしれないけど、一度「どんな仕事をしているの?」を挟めば、相手が仕事についてどう思っているかは、なんとなく見えてくる。
そうすると、怒られる回数も少なくなる。(いまのところ、怒られたことはない)
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人見知り、という言葉がある。
初対面の人と話すのは緊張する、というのは、もっともだと思う。
わたしは二十代中頃のときに「俺と一緒にいたら、友達少ないなんて言わせないぜ!」と叫んだハッピー野郎と友達になってしまったばっかりに、ライブハウスに行くと、知らない人の輪の中に放り込まれることになった。
「はじめまして、まつながです」
「普段は、こんな音楽やってます」
話さなければいけない、何かを。
このとき学んだのって、「話しながら質問をする」ということだったかもしれない。
と、いまになって思う。
「あ、そのライブハウス出たことあります。じゃあ、ブッキングのCさんはご存知ですか?」と、共通の話題を引っ張り出したり、
「すみませんバンド名しか聞いたことがなくて… どんな音楽やっていますか?」とか。
どんな音楽、だと質問が大きすぎて困らせてしまうので「どんなバンドと対バンしてますか?」と、答えやすい質問に変えてみたり。
わたしはそうやって、人見知りから脱してきたように思う。
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インタビューの極意を学んでいくと、人見知りを克服できるかもしれない。
わたしは今日、そんなことを思っている。
話すことに困ったら、インタビュアーになったつもりで、質問してみて欲しい。
わからないことを「わからない」と言いづらいかもしれないけれど、「それってどういうことですか?」と尋ねると、だいたい答えてもらえる。
相手が困ったときには、「AとBならどちらですか?」と質問を狭めてみたり、
「こういうことですよね?」と仮説をぶつけてみる。
これも全部、菅原さんに教わった手法だ。
そしてもし、
いろんなひととしゃべりたい、
インタビュアー気分を味わいたい、と思ったら、ライブハウスに来て欲しい。
はじめてだって関係ない。
この薄暗い場所では、年齢も立場も関係ない。
演奏するしないも、もちろん関係ない。
音楽が好き、それだけで繋がっている。
いまが楽しい、と言うだけで、この場にいる。
だから、思い切って話しかけて欲しい。
出演アーティストには「さっきの演奏見ていました」と
お客さんには「どのアーティストを見に来ましたか?」と。
そこから、あなたとわたしの言葉は、確かに磨かれてゆくのだと思う。
磨かれて、触って、確認をして
ほんの少し「聞くこと」「理解すること」を意識するだけで、
わたしたちはもっと、言葉でわかりあえるような気がしている。
【photo】 amano yasuhiro
https://note.com/hiro_pic09
https://twitter.com/hiro_57p
https://www.instagram.com/hiro.pic09/
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