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1ヶ月後には、我が者顔でオフィスを歩いてる

わたし、仕事辞めても大丈夫かもしれない。
そう思った日のことを、覚えている。


「仕事を辞めても収入があるから」とか、そういう話ではなくて
「別の仕事に変えても大丈夫」のほうが、適切な表現かもしれない。
家賃や光熱費を払うための収入がなくなってしまうのは困るし、それを得るためには「雇われること」がわたしにはまだ必要だった。それはいまも変わらない。

前職は流行病の影響でうっかりクビになってしまったので、これは前々職のときの話になる。
初めてのオフィスワーク。

務めて1年が経った頃に、大きな転機が訪れた。
上司の退職で、アルバイトでありながら1番の先輩になってしまったこともそうだけど、それ以上にオフィスの移転は大きく響いた。
新しいオフィスの場所は、電車で30分ほど離れた場所。
人によっては「通いやすくなった」とか、「あんまり変わらない」と言っていたけれど、わたしにとっては、純粋に通勤時間がプラス30分になってしまった。
今までが、電車で20分。
それが、電車で50分。

オフィス移転をして、会社の規模は大きくなっていった。
わたしの業務の内容も大きく変わり、仕事の休みが取りづらくなってしまったのも大きい。
アルバイトだし、別に好きな日に休んでいいよ、とは言われていたけれど
休むためには引き継ぎを準備して、休み明けに出社したらやるべきことをチェックして、
当時は結構まじめに音楽活動もやっていたので、ライブでどうしても休まなきゃいけない日もあって、それは仕事の状況とは関係ない。
正直、引き継ぐより出社しちゃったほうがラクだよなあ、と思うことも増えた。
後輩も増えて、教える機会も増えて、なんとなく責任が増してゆくようだった。
入ったばかりの後輩も、わたしと同じ時給で働いている。そんなことは、求人情報を見ればわかった。
気づけば会社に人が増えた、そんな時期だった。


少し前に見慣れなかった人が、我が者顔で会社を歩いている。
わたしは、そのことに気づいた。

「我が物顔」という言葉があんまりよくないかもしれないけれど、それはとても健全であり、すばらしいことだと思った。
1ヶ月前には新人だった人は、まだ新人かもしれないけど後輩ができて、不安そうにオフィスを歩いていった頃とは、全然違っていた。

そうか。
そうだよね。

わたしも、初めての頃は緊張していた。
会社に来るだけで息が詰まりそうだった。
時間が経って、3人の先輩を見送って、うっかり今の立場になったけど、わたしだって順番に「慣れて」きたんだ。

どこか別の場所に行っても、1ヶ月経てば会社に慣れることができるんだ。

いろんな理由はあったけど、この事実がわたしの背中を強く後押ししてくれたことを、いまでも覚えている。
そしてこれから先も、絶対に忘れない。



電車で50分もかけて、今の仕事にしがみつく必要はなかった。
わたしは、次の仕事も決めずに最終出社日を決めた。

新しい職場に出社したとき、みんなの前で挨拶したときのことは、今でも覚えている。
オフィスを歩くことには、やっぱり1ヶ月くらいで慣れた気がするけど、業務の内容や体制が少しずつ変わり、育ててくれたすべての上司が他部署に移動になったときには泣くかと思った。
新しく上司になった人は、いつも黒いバンドTシャツを来て、髪の赤いオバサンだった。
めちゃくちゃ怖かった。早口だし。
この”オバサン”を、わたしは最終的に「Aちゃん」と名前で呼び、タメ口で話し、なんでも相談する仲になるとは思わなかった。
人生、何が起こるかわからない。
Aちゃんが上司でよかった、というのは今でも思っている。ずっと、わたしの好きなようにさせてくれた。わたしがクビになったとき、怒ってくれた。
もう少し歩きやすい世の中になったら、Aちゃんにはごはんでもおごっていただきたいと思っている。



いま、新しい職場を、わたしは平気な顔で歩いている。
まだまだ慣れない業務もあるし、電話に出たはいいけど、「なに言ってるかわかんないな〜」と思いながら、言われたことをそのまま上司に伝えて、助けてもらったりもしている。
会社にポケモンのコップを置いて、ウォーターサーバーの水を、ぐびぐび飲んでいる。

入社初日に「新しいアルバイトの方ですか?」と声をかけてくれた人は、いつも笑顔で電話の引き継ぎを受けてくれて、他部署でありながら「わからないことがあったら聞いてね」と言ってくれた。
そう言ってくれたことに、すごく救われた。

その人が「実は12月入社なんだよね」と言ったときには驚いた。
そんなふうには見えなかった。



入社して、もうすぐ1ヶ月。
新しいアルバイトの人が入社してくるよ、と言われた。
わたしもきっと、それなりに先輩に見えちゃうんだろうな。
でも、わからないことだらけだよ。
でも、平気な顔して歩いている。

あなたも、すぐにそうなるよ。

会社って、なかなかサボれるものじゃないしさ。
(わたしはほんとうに、サボったことがない。一度サボると二度と出社したくなくなるタイプだから)
だから、毎日繰り返していけば、嫌でも慣れるよ。
100回も訪れた場所に、毎回緊張することってないでしょう? 緊張するような相手がいる場合は別だけど、そうじゃなければ

あなたもきっと、我が物顔でオフィスを歩けるようになる。

最初の一歩を踏み出せたあなたに訪れるものは、「慣れ」だと思う。
それがあなたを、すこやかに、そして勇ましくさせてくれる。

わたしは今日も、そのことを決して忘れない。





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