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誰かを告発して誹謗中傷に苦しむぐらいなら

 ※これから書こうとしていることは、あくまで私個人の経験から感じたことや思ったことである。それこそ誰かを告発する意図で書きたいわけでも、性加害などのハラスメント被害者は皆そうするべきだというようなことを書きたいわけではないということを最初にお断りしておきたい。

 ここ最近過去に著名人から受けた性加害などのハラスメント被害を告発する人が増えている。インターネットやSNSなどの普及で、それまで声を挙げられなかった人たちが、手軽に自由に声を挙げやすくなったことも影響しているのかもしれない。
 もちろんそれはそれで良いことだとは思う。
 その人から受けた被害で、心や精神に一生残るような傷や消えないトラウマを抱えてしまったことで、その後の人生に大きなダメージを追ってしまったというような被害者側の気持ちももちろんよく分かる。いや、分かっているつもりではいる。
 しかしだからといって、加害者を告発すれば、抱えている心の傷やトラウマから解放されて楽になれるのかといったら、私はそうでもないように思う。なぜなら誰かを告発したことで、被害者側にも誹謗中傷が飛んでくるからだ。それってよけいに辛くて苦しいことなのではないだろうか。

 私も性加害ではないが、20代前半の頃、1番最初に入ったB型作業所の施設長から、人格を否定されるなどのパワハラを受けたり、他の利用者への虐待行為を何度か見聞きしたことがあった。
 その施設長は地元の福祉や視覚障碍者の業界ではかなり名前が知られている有名な人だった。それにパワハラをしてくる人によくありがちな外面だけはとても良い人なのだ。
 だから「あの人がそんなことをするはずがない」と、その施設長がパワハラや虐待行為をしていることを、家族や周りの人たちには信じてもらえなかった。パワハラを受けたことよりも、そっちの方がもっと辛かった。
 何が1番許しがたいって、その作業所は働けなかったり、行くところが無かったりして、ずっと家に閉じこもっている視覚障碍者のために作られた施設だった。そのようなところで、視覚障碍者の働く場所や行けるところを亡くすようなことをされた、あるいは今でもしているのかもしれないということが1番問題だと思う。

 今みたいにIphoneのボイスメモを使いこなせたり、XなどのSNSを使えていたら、それらの行為の証拠音声を録音してしかるべき機関に提出したり、それこそSNSに投稿して訴えてやりたかったと今だに思う。
 さらに今でもパワハラが原因で自殺してしまった人のニュースを見聞きする度に、自分も自殺すればあの時のパワハラを分かってもらえるだろうかと思うことは多々ある。

 その作業所をやめてからしばらくの間は、視覚障碍に特化していないいくつかの作業所を転々としたけれど、どこも長くは続かず、結局その後数年家にひきこもった。
 視覚障碍者の世間は狭く、地元でどこに行くにも、何をするにも、その施設長、あるいはその施設の関係者と繋がってしまう恐れがあった。それが怖くて地元に居づらくなってしまったことも、今こうして大阪に出てきた理由の一つである。

 そりゃあ私だって、過去に施設長から受けたパワハラを告発できるならしてやりたいと思う気持ちが全くないわけではない。
 しかし告発したことにより、自分も誹謗中傷で苦しむことになるぐらいなら、一生癒えることのない心の傷やトラウマを抱えながらでも、思いっきり今を生きる方がまだましなような気がするのだ。
 パワハラによりその作業所をやめてからのことが、全て悪いことばかりだったのかと言えばそうではない。自分にとって1番天職だと思った点字に携わる仕事を自ら失ったことで得られた物や学んだこと、様々な人との出合いや繋がりなど、良いことだってたくさんあった。だからといってそれは全てあの施設長のおかげだとはこれっぽっちも思わないし、全く感謝してもいないが…。まあそれはそれ、これはこれである。

 そういえば前にこの件ではないが、父がこんなことを言っていた。
 「そういう悪いことを言ったりやったりしているようなやつは、べつにこっちから潰しにかからなくても、そのうちにいろんな悪いことが全部自分にふりかかってきていずれつぶれるから」と。
 だからもしあの施設長が、今後ジャニー北側のように亡くなってからそれらの件が明るみになったとしても、私は何も言わないし言いたくもない。今更何ねんも前の被害を訴えたところで、それを立証できるような証拠を持ち合わせているわけではないので、どうせ後出しだと周りから叩かれるだけだろうから。

 だからこの記事を読んでくださっている皆さんにおねがいしたいのは、どうかその作業所や施設庁を詮索したり、タレコミを流したりなどの行為はしないでほしい。
 冒頭でも書いたように、私はただ昨今の誰かを告発することについて個人的に思ったことや感じたことを書いただけなのである。
 そしてさきほども書いたように、誰かを告発して誹謗中傷に苦しむぐらいなら、思いっきりこの今を生きる方がまだましだと思うのだ。

 それでも最後に一言だけ言わせてほしい。その施設長に対して、早く死んでほしいとは思わないが、世間からのどんな同情の予知も1ミリも入る隙の無いぐらいにあほな失態をやらかしてその職を辞してくれたら、私としてはそれだけで充分である。

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