花緑青

ただの思考のジャンク置き場です。 それらが作品になるよう頑張ってはいます。

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最近の記事

他愛もない話

大学生の頃は一般的な恋愛をしないために男性と会っていた。 性の相手を探す人たちが大半の中で、それでも身体の関係にならない人がいたらいいなとずっと探していた。 否定したかったから。男の人みなが性に支配されているわけではないと。 肯定されたかった。男性の欲望を受け入れる器があるからではなく、"私自身"を好きになってくれる人もいるのだと。 "女"という装飾を取り外した私を見てほしかった。 私はそういうふうに愛される特別な女の子なんだって思わせてほしかった。 でも、恋愛や性を基盤に

    • ショートカットの多い日々

      たとえば朝通勤している時 「会社へ向かう道を逸れて この道の先を進んだら何処に着くんだろう」 って思うことはあっても それを実行したりはしないでしょう? 気にはなってもgoogle mapで確認して 「やっぱり何にもなさそう」でおしまい。 日々はらはらと落ちる思考も 進まなきゃいけない道をせかせか歩くうちに 落ち葉のように道の隅に追いやられて 気づいた頃には風に吹かれるか掃除をされるかで きれいさっぱりなくなっている。 でもある日ふと そう 今日みたいな日に 知らない土地

      • 0.1s

        半袖ブラウスに袖を通して切りっぱなしの髪を耳にかけたらいつものイヤホン。スニーカーで踵を鳴らしたら夏空へ飛び込む。通学路いつもの時間に君と会ってふざけながら向かう。 いつもと同じ朝なのに、今日はなんだかいつもと違う感じだ。 ふと振り返ったら高い高い青空にわたあめ雲が私を呼んでいるみたいにそびえていた。 君と教室でしょうもないことでふざけたこと、帰りにこっそりコンビニに寄ってアイスを食べながら帰ったこと、暑いよなんて言いながら草むらの上で駄弁っていたこと、目まぐるしく過ぎてっ

        • 綺麗に散っていく花が思い浮かびました

          机上の花瓶。もうすぐ萎れそう。 薄明かりの部屋で、それが鮮やかだった時を探そうと、花に触れた。 なにも見えない。暗闇の中に突然放り出されたみたい。 ほしかった音が聞こえない。 見たかった景色が見えない。 どこを探しても見つからなくて 何も見えなくて 悲しくて 胸が張り裂けそうで 耳を塞いでうずくまった。 こんな音なら聞きたくなかった。 でも、どうして?ずっと頭から離れない。 ふと、やわらかい光が差して顔をあげる。 そうしたら、そこにいた。 不確かさを抱えて、確かにそこにあた

        他愛もない話

          お前の世界を壊したいなら

          いつかみた夢のはなし 花畑に佇む人 長い銀髪を風になびかせるその姿はあまりにも美しく、男性とも女性ともとれるようだった。 と、ふいにその人は刀を取り出した。 容姿に見惚れていたせいなのか、刀を携えているようには見えなかったのだが と思っているとその人は刀で自らの首に刃を押し当て、そのまま斬り落とした。 首は音もなく地面に落ちていった。 (と思っているが実際は背の高い花々に覆われて地面に着いたかどうかも分からなかった。それくらいすべてが静寂に包まれていた) ふと視線を足

          お前の世界を壊したいなら

          インターステラーの感想

          (感想と題しながら、自分を顧みてたりしてるので、感想兼ジャーナリングみたいになってます。考察ではないのでご了承ください。) 科学的考証に基づくゴリゴリなSFで始まったこの作品。重力....宇宙......。普段触れないモチーフに圧倒されて、先の読めないワクワクな展開に、とても期待をして観進めていました。人類を救うために、最善策はどの星なのか。ハラハラしながら見ていたのだけど、アメリアが愛の話を持ち出した時に、「あぁ、これ、SFじゃなくて愛が人類を救う的な話なのか....」っ

          インターステラーの感想

          自分を定義するもの

          私、生まれてからずっと、自分って何だろう、自分を定義するものって何だろうって考えてきたけど、やっぱりまだまだ難しいな。 "そうであるから"私だと言えるし、"そうでない私"も私なんだよな。 結局"自分らしさ"なんてものはどこにもない気がしてきた。 でもこれがあるから自分!ってはっきり言えるものがないと自分の存在に不安を感じるのも確かなんです。 だからもしこの先私が誰かを好きになったり、誰かに愛された時に、 その人が私の中にあるものを何か1つでも見つけてくれたならば、

          自分を定義するもの

          『花束みたいな恋をした』を「エモい」だけで終わらせないで

          「タイトル通り、恋人たちの綺麗な思い出話」 「詩的な作品だった」 2回目の鑑賞後、興奮冷めやらぬ状態でTwitterで検索をかけると、 見かけるのはそんな感想ばかり。 この人たちはみんなパンピなんだろうか、大学生の頃の”あの感覚”を経験したことないんだろうかって、びっくりしてしまうくらい。 初回で観た時は私もそうだった。 だけれど「ただ綺麗だった」と それだけで言い切ることのできない違和感・もやもやがどうしても私の中に残っていて、その正体をつかむために、同じ作品を見るために

          『花束みたいな恋をした』を「エモい」だけで終わらせないで

          冨安 由真:漂泊する幻影

          重たい扉を開くと、永遠にも感じられる廊下が姿を現す。 でも、それは永遠ではない。目線の先は鏡があると2回目の瞬きで気が付く。 -----この時点で既に現実と虚構の境界線がぼやけてきているな。 そんなことを思いながら、幻影が待ち受けているであろう部屋への扉を開き、足を踏み入れた。 暗闇。視界の隅に微かに感じる光。 最初に感じた情報が少なく、少し不安を覚えてしまうが、徐々に目が慣れてくると、オブジェの位置がだんだんと把握できるようになってくる。 と、天井から光芒が差した。

          冨安 由真:漂泊する幻影

          ちょっとした話

          「けんしんちゃんの好きなタイプってどういう人?」 アイスコーヒーを飲みながら、ユウさんはそう尋ねてきた。 私は突然投げ掛けられた質問にうまく答えることができなくて、 彼の元々の癖っ毛をじょうずにセットしてふわふわになっている髪の毛、古着屋で買ったのか少しよれているTシャツから覗く鎖骨、垂れ目がちな目元に、その可愛い印象を誤魔化すようにかけられた黒縁眼鏡なんかを見ながら、私はなんで今ここで彼とこんな話をしているんだっけ、とぼうっと考え始めていた。 数週間前、いつもとは違う街に

          ちょっとした話