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半袖ブラウスに袖を通して切りっぱなしの髪を耳にかけたらいつものイヤホン。スニーカーで踵を鳴らしたら夏空へ飛び込む。通学路いつもの時間に君と会ってふざけながら向かう。
いつもと同じ朝なのに、今日はなんだかいつもと違う感じだ。
ふと振り返ったら高い高い青空にわたあめ雲が私を呼んでいるみたいにそびえていた。

君と教室でしょうもないことでふざけたこと、帰りにこっそりコンビニに寄ってアイスを食べながら帰ったこと、暑いよなんて言いながら草むらの上で駄弁っていたこと、目まぐるしく過ぎてったそのすべてがきらきらして見えるんだ。

半袖ブラウスに袖を通して髪はポニーテールでまとめる。耳にはワイヤレスのイヤホン。ローファーで踵を鳴らしたら夏空へ飛び込む。通学路はひとりで歩きながら夏の予定を考える。みんなと花火大会に行きたいな。
当日みんなと浴衣を着て会場で花火を見た。だけど本当はずっと違う光を目で追っていた。一瞬明るく照らされる横顔。
花火はそれを焼き付けようとするフラッシュのようにも思えた。

ほんの少し汗ばんで目が覚めた。
長袖ブラウスに袖を通してジャケットを腕にかける。髪は崩れないようぴたりとひとつ結びにまとめて、耳には最新式のワイヤレスイヤホン。パンプスで踵を鳴らしたら夏空へ飛び込む。
通勤路で学生たちとすれ違う。同じ頃に私が好きだった物、今流行りの物をそれぞれのバッグに付いているのを見つけて、懐かしさを覚えて振り返る。
高い高い青空に浮かぶわたあめ雲はあの頃と形は違うけれど、今でも私を呼んでいるようで、応えれば今すぐにでもあの頃に戻れるような気がした。

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