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銘菓を好むお年頃

 お盆休みが近づいてくると、スーパーやデパートなどでは、帰省土産の販売に精を出しはじめる。
 箱詰めされたゼリーや水ようかんが涼しげで、クッキーやおかきの詰め合わせなどを見ていると、帰省もしないのに、つい買いたくなってしまう。

 東京土産で有名なのが、昔からあるものだと人形焼き雷おこし芋ようかんなどが思い浮かぶが、近年は東京ばなななども定番になっている。
 京都は八つ橋、福岡だと博多通りもんなど、各地様々なお土産用のお菓子がある。各地域ごとに、おらが町のお菓子、というものがある。

 しかし私は子供の頃、それらの定番菓子を有難がっては食べなかった。
 定番土産というのは親しみやすい味ではあるが、やはり郷土色が強く、お洒落という範疇からはどうしても外れてしまう。
 華やかさよりも安心感に重きを置かれていて、地味な印象をぬぐえない。見た目からして、ケーキやチョコレートなどの生菓子には遠く及ばない。そんなことを思っていた。若さゆえの固定観念があったのだろう。

 だが、私も四十路を過ぎ、そんな観念を維持する元気がなくなってきたのか、今では口に入って美味しいものは、何でも有難く感じるようになった。

 八つ橋は定番過ぎて一度「へぇ」くらいの薄い反応になっていた時期もあったが、今では八つ橋を頂いたら「お!」となり、そそくさとお茶の用意をしてしまうくらい有難い存在になった。

 銘菓の良さに気づくお年頃というものがあるのだろうか。
 やはり人というのは、年をとると妙な気取りも無くなり、心も体も丸くなるようだ。(体の方は個人差があります) 

 土産菓子というものは、味も大事ではあるが、何よりもその土地の空気を含んでいるところに大きな魅力があるのだと思う。

 三重県伊勢名物の赤福は、伊勢神宮の空気を存分に含んだお菓子だ。あの桃色の懸け紙を見るだけで、天照大御神のご加護を感じて、何だか有難くなってくる。

 そういえば一昨年の末頃、夫が
「赤福を注文しよう」
 と言い出したことがあった。わざわざ取り寄せるのは何だか贅沢な気がしたが、疫病でどこにも出掛けてないからいいじゃないか、という話になり、注文することにした。

 赤福を宅配便で受け取ったとき、ホンワリとした温かさが胸に広がり、気持ちが明るくなったのを覚えている。

 この赤福は、伊勢からやって来たんだ!

 そう思うだけで、体中に伊勢の風が吹き渡るようだった。赤福を目の前にしただけで、気持ちだけはお伊勢さんの大きな鳥居を見上げることができた。赤福を頬張りながら、夫の提案に乗ってみてよかったと思ったものだ。

 デパートでは北から南まで各地域の物産展が開催される。
 私も、某百貨店から物産展の報せを頂いたりする。どの地域の物産展も、名物揃いで財布のひもがゆるゆるになる。そうした物産展で出会った銘菓も多い。

 銘菓だけで、諸国漫遊できたら面白いだろうな、と思う。
 デパートの催し物会場に、白い恋人からちんすこうまで、47都道府県の銘菓が並ぶのだ。日本全国の銘菓を一堂に会した、諸国漫遊銘菓大会の開催である。

「へぇー、栃木には古印最中っていうのがあるんだ!」
「これがラジオCMで有名な群馬本家ちちやの温泉饅頭か」
「あら、この千葉ピーナッツ最中って可愛いわぁ」
「まぁ茨城面白い! ハマグリの形したはま栗っていう最中があるのね!」
「おっ!これが《風が語り掛けます。うまいうますぎる!》でおなじみの埼玉十万石饅頭かー!」
「やっぱり神奈川は、ありあけのハーバー♪だねぇ」

協力・関東の銘菓の皆さん

  そんなことを言いながら、時折CMソングを口ずさみつつ、各地の銘菓を見て回りたい。

 大手デパートの関係者の皆さん、ご覧になっていたら是非、

 諸国漫遊銘菓大会

 そんな企画、如何でしょうか。ぜひ開催を検討してみて下さい。

 その際は箱売りではなく、できれば1個単位で買えたら嬉しい。
 各都道府県、ひとつずつ銘菓を買っても47個。
 なかなかの食べ応えである。しばらく三時のおやつには困ることはなさそうだ。

 



 ここで、埼玉県民から一言。
 埼玉銘菓は十万石饅頭も有名ですが、埼玉にはくらづくり本舗の福蔵(最中)、川越名物のいも恋などもあります。お洒落なものなら、彩果の宝石という見た目美しいグミキャンディーのような食感のフルーツゼリーもあります。
 ちなみに、私は銘菓といえば、奈良のみむろ最中が大好きです。みむろ最中は、食べ物に目がなかった亡き祖母がうなった味でもありました。


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