見出し画像

手放して、二度と戻らぬように


私は今、久々に怒りに震えている。
悔しくてならない。
私は、こういう時に、どうしたら良いだろうと思う。

今日、私は、横山小寿々★古妻日記さんの記事を、たまたま読んだ。
イジメの経験を持つ娘さんが、小学校の卒業文集に向け、
文章を綴ったのだが、それを教師から、書き直してほしい、
と言われた話だ。
詳細は、是非、こちらのnoteに読みに行って頂きたい。

娘さんの卒業文集に綴った言葉を、当記事に引用させて頂きたいと思う。

『さなぎから蝶へ』
振り返ればこの六年間はあっという間だった。
この頃ふと思う。自分はこの六年間で成長できただろうか。
もしかしたら全然成長していないかも知れない。
でも少しは変われたと思う。
小学三年の時、私はいじめにあった。
ずっと仲良くしてきた友達からで正直悲しかった。
その頃から私は変わったと思う。人の顔色をうかがってどんなことにも
「はい」と言って過ごしていた。
それは外の世界を恐れ
さなぎから出てこない蝶と同じだろう。
戦う前から怖がってゲームオーバーしているのと同じ。
でもそれでよかった。もう嫌な事はされない。そう思っていた。
そんなある日私の事を悪く言う子がいた。
私は絶望した。
こんなにいい子にしていても無駄だった、と。
そんな時、母が前に言っていた
「どんなによくふるまっていても嫌われる人には嫌われる。
だから自分らしく生きるといい」
私はそんな母の言葉に救われた。
そうだ、自分らしく生きて行こう。
私はさなぎから蝶に変わる。
そしてこれからいろんなところに、いろんな人に
羽ばたいていくのだ。
この先つらいことがおきても
私は強く羽ばたいていける
そんな強さを学んだ小学校生活だった。

この文章に対し、教師はこう言って書き直しを求めたそうだ。

いじめていた人が読んで嫌な気持ちになるから書き直してください

私はブルブル震えた。怒り悔しさ、自分のことのように悔しい。
確かに、文集に載せるには、物議を呼ぶかもしれない。
卒業を前に、波乱を呼ぶ芽を摘んでおきたい気持ちはわからないでもない。
でも書き直しを求めるなら、教師がこの子にきちんと向かい合って、
話を聞く、という、ケアがいる話ではないかと思う。
いじめられたという、手放しきれていない気持ちを
もう少し、聞いてあげられないものなのだろうか。
一言で済ませていいの? その場で言っておしまいでいいの?
本当にそれでいいのだろうか。

教師は忙しい。コロナのせいで、必要以上の仕事、雑務が多いことだろう。
いろいろな生徒がいて親がいて、手も足も回らない。
教師にだって生活がある、感情がある。
全てを教師一人のせいにしたくはない。してはいけないのだろう。
しかし、そんないろいろな皺寄せが、
この聡明な娘さんに向かってしまうのは悲しい。

この子は他の子より大人だから、
イジメだって済んだことなのだから、
だから我慢して欲しい。
大人はそう思うのだろう。

我慢できる。我慢できるのだ。実際、この娘さんは我慢した。
教師の言う通り書き直した。

そう、今は、我慢できる。今は。

私は思う。
この我慢したことを、娘さんがふと思い出して、
また、悲しくなってしまわないだろうか。
大人になって、台所でお皿を洗っている時に、不意に思い出し、
急に我慢できなくなって、一筋の涙を流すことはないだろうか。

私はこの子に、そんな思いをさせたくない。

イジメた子の家庭環境、教育、クラスの雰囲気、
教師たちの私生活や、家庭環境、育ってきた環境、
全ての負が、一人の子に向かってしまうのがイジメなのだと思う。

今、私は、冷静ではない。
このいじめに遭い、文集の文言を書き換えたこの子に肩入れしている。
それは、この子の気持ちが他人事とは思えないからだ。

私は、もう40歳を過ぎた。
小学校を卒業してから、多くの時を重ねてきた。
それでも、ふいに、意地悪の一言では片付けられない
クラスメイトの暴言や、あの蔑んだ視線を思い出す。
あの表情は、子供の顔ではない。
大人が想像もできないような顔をするのだ。

私は、何度も、皿を洗う手が止まり、風呂を磨く手が止まり
その都度、忘れようと息を吐いてきた。
手放したつもりでいても、いつの間にか手にしている時がある。

もし、神がいるのなら、私はこう願いたい。

神様、この子の受けた傷や思いを、受け止めてあげて下さい。
いじめた人間の顔や、理解ない教師の声色、不穏な空気、
その全てを、受け取って、二度と、この子の手に戻さないであげて下さい。

学校でも職場でも家庭でも、ありとあらゆるところで、
負をぶつけられ傷つく人がいる。
傷ついて、今も震えている人がいる。
時間が解決してくれない傷を抱えて、手放せずにいる人がいる。
その人達の全ての傷や思いが、手放せますように。
思い出して、傷つかずに済むように、
手放して二度と、その手に戻ってきませんように。


そう願わずにいられない。




この記事が参加している募集

#note感想文

10,650件

お読み頂き、本当に有難うございました!