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#短編小説
ナオヤクラシマに、会ったのだ。
「この掌の木片にどんな夢を見るか。
いいんだ、別に。
わからないのだろ?」
仰向けのままで薄ら笑いながら、
ぼそぼそと呟いている彼は
明らかに酔っ払っていた。
倉島直哉だ、とすぐにわかった。
この大学のシンボルである樹齢云十年の桜舞い散る中庭に、
陽の光の下で銀色に鈍く光る
でっかい鳥籠のインスタレーションを創った、
誰もが羨む才能を背負った、
あの、
ナオヤクラシマだ
【とある深夜のシンヤたち】-とある深夜の榛原信哉(ハイバラシンヤ)-
傘の下、
昔読んだ国語の読解テストの文章を
ぼんやりと思い出す榛原信哉である。
小さな女の子が森に迷い込んでしまって、
その森の奥には三人のおばあさんの魔女がいて、
透明なビニール袋にいっぱいの、薄いピンクの桜貝を詰めて売っていて、
そのサクサクなる音や色や見た目があまりに愛らしいので、
女の子が手元に持っているお小遣をはたいてそれを買って、
その後すぐにうちに帰る道を見つけて、
【とある深夜のシンヤたち】-とある深夜の向坂晋也(サキサカシンヤ)-
地下鉄の終電の車内で、
マスクをしているオッサンの数を
心中にてカウントするは、
向坂晋也(サキサカシンヤ)、25歳である。
ヴィレッジヴァンガードで手に入れた
黒く大きなヘッドフォンには、
両方の耳あてのど真ん中に白い星があり、
買った頃には「割とかっこよくね?」と思っていたものだが、
今となっては年の割にバカっぽく見える感じだ。
5年ものである。
しかも、い