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虐げられてきた人

今日、自宅の近くでうずくまっている人を見た。
片手をもう片手で握りしめている。
薄着で手袋もしていない。
転んで手を擦りむいたか寒さで悴んでしまったのか。

私は家に駐車した後、カイロを3個掴んで走った。
「すいませーん!あのー!」と叫ぶと早足で逃げようとする。
追いついて「あの大丈夫ですか?」と声をかけると
「わかった!わかった!わかった!」と逃げようとする。
「寒くないですか?良かったらこれ…」と差し出すと
「いい!いい!もうわかったから!いいから!」と逃げて行ってしまった。

彼は私が今の家に越してきた20代の頃から見ている。多分同年代だろう。
その頃は彼も黒髪だった。毎日晴れの日も雨の日も灼熱の日も極寒の日も散歩している。今は髪も薄くなり白髪だ。
ずっと気になっていた。

今日うずくまっているのを見て、初めて声をかけられた。
近付いても臭くなかった。息も臭くなかった。
私は嗅覚過敏なので、臭いで相手の現状を察することができる。
きっと彼はどこかに居住地があり世話人の手厚い介護を受けているのだろう。ホッと安堵した。

彼の口調から、ただ散歩してるだけで色々な人から迫害を受けてきたのだろうと思って切なくなった。
彼はただ散歩しているだけで、他人を傷付けたり盗みをはたらいたりしない。
それでも許せない人がいるのだ。

今日は逃げられてしまったけど、彼の中で「今日話しかけてきた人は俺を馬鹿にしていなかった」という事は伝わっていると思う。

ずっと待っているよ。辛い時は頼ってね。
あなたが生きやすくなる社会は私も生きやすいからね。


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