【読書】その他もろもろ-ある予言譚
芝々さんの記事で、ヴァロットンの版画が装丁に使われている本を知りました。ヴァロットン展のミュージアムショップにあったようで、気づかないなんて私のバカバカ!と思いましたが、それはともかくまず読んでみましょう。
ちなみに、『ヴァロットン-黒と白』の展覧会を検索した時に芝々さんの記事を見つけたので、勝手ながらヴァロッ友ではないかと思っております。
まず『脳務省』ってナニ!?と思います(原語は"the Ministry of Brains")。
知力があればあんな戦争はなかったのでは、という強烈な皮肉も感じます。
結婚や子供を持てるかどうかが、A~Cランクで決まり、C3未満は結婚もできません。正しい組合せで子供が生まれると賞賜金が与えられ、誤った組合せだと重税が課せられます。
ちょっと優しいなと思ったのが、B2やB3(十分に知的なレベル)の人は、トップクラスのAと結婚して知能の底上げをすればOKというところ。むしろA同士やAとB1ですと知力の無駄遣いとみなされ、子供が生まれても賞賜金が減額されます。
天才を生み出したいわけではなく、国民全体の知力を上げたいわけですね。
キティはAランクですが、一方の脳務大臣は本人はAながらちょっと事情があって……というところで二人の愛の迷走が始まります。
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この設定で思い出したのが、映画『ガタカ(GATTACA)』です。
こちらは近未来。DNA操作で負の可能性を排除した”適正者”と、自然出産で生まれた”不適正者”とでは、就ける仕事すら違ってきます。
イーサン・ホーク演じる主人公は”不適正者”。”適正者”として生まれた弟とは小さい頃から明らかに能力の差があります。希望する仕事には就けずに羨ましそうに見上げるばかりでしたが、転機が訪れ……しかし上手くいくのでしょうか!?
でも、辛いのは”不適正者”だけでもないんですよね。その辺りは、ジュード・ロウが魅せてくれます。
脳務省の世界にしろ、ガタカの世界にしろ、全員が同じ想いでいるのは難しいものです。結局、一枚岩でない部分からもろもろと崩れてくるのかもしれません。理解する人しない人、協力する人しない人、そこに多様性があって良かった、と少し安心しました。
ヴァロットンの版画を用いた装丁は、怪しげというか只事ではないというか、ミステリアスな雰囲気が合っていますね。さすがにこんなに ↑ あからさまにオフィスでイチャイチャはしていませんでしたが。
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