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【保育園】「これくらいやってくれてもいいのに…」それ、保育士ができない“医療行為”かも!?

 保育園や幼稚園に行っているとき、「カバンに風邪薬を入れたけど飲ませてもらえなかった」「爪が割れているのに切ってもらえなかった」「プール後に保湿剤を塗ってほしくてカバンに入れたけど、塗ってもらえなかった」など、「忙しいのはわかるけど、これくらいやってくれてもいいのに…」とモヤモヤした経験がある人はいませんか?もしかしたらそれは、保育士・幼稚園教諭にはできない『医療行為』かもしれません。
 今回は、毎年先生と保護者の方でトラブルにもなりやすい『医療行為』について書いていきたいと思います。※看護師が配置されていたり、園の規定によって変わる場合がございます。参考程度にお読みください!

<このnoteは『COTETE Labo』掲載記事です>


保育士・幼稚園教諭は『医療行為』はできない

 まず最初に、保育園や幼稚園の先生は『医療行為』を行うことができません。医療行為という名前を聞くと、診断や薬の処方の他、注射・点滴・採血などをイメージし「そりゃそうでしょ!先生たちにはできないよね!当たり前!」と思う人もいるかもしれません。しかし、実際の医療行為というのは上記以外でもとても身近に存在しています。

こんなことも厳密には“医療行為”に入ってしまう

・転んだところを消毒し、絆創膏を貼る
・割れている爪を切ってあげる
・刺さってしまったトゲを抜いてあげる
・捻挫したところの湿布を取り換えてあげる
・病院から処方された薬を飲ませる
・病院から処方された塗り薬を塗る
・病院から処方された目薬をさす

このような、お世話をする上でやってくれて当たり前に見えることも、実は医療行為(医行為)に分類されています。園に看護師さんがいる場合はこの行為を行うことができるので、看護師さんが担当することもあります。

様々な条件はあるが、行っても良いということになっている

 しかし、看護師さんがいない園もありますし、看護師さんがお休みの日もあります。そんな中、先生方を始め、例え園長先生であっても医療行為をすることができないこの現状は、あまりにも不便ではないでしょうか。
そこで、医療行為(もしくはそれに近い行為)だけど認められているものがあります。

1 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
2 自動血圧測定器により血圧を測定すること
3 新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
4 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)
5 (略)皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。(略)
① 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること
② 重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること
③ 耳垢を除去すること(耳垢栓の除去を除く)

○医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について

途中省略して書きましたが、このように記載され、実際には行っても良いこととなっています。ただし、以下の点には注意をしなければいけません。

免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき

つまり、保護者の方の同意があれば可能ということになります。この部分が大変難しいポイントになり、トラブルの原因になりかねませんので園としてはとても慎重になっています。

先生が行っても良いことは園として決まっていることが多い

 上記に書いたことはあくまで“行っても良い”のであって、“行わなければならない”わけではありません。
また、あの先生はやってくれる・あの先生はやってくれないということがあってはならないので、園として統一してルールを決めているところが多いです。そのルールは先生たちの間だけではなく保護者の皆様にも入園時などにお知らせしているかと思います。
例えば、こんなルールの園があります!(あくまで例ですので、ご自身の園にご確認くださいね♪)

飲み薬について

・風邪薬などの飲み薬を園で飲ませてほしい場合、まずかかりつけ医には1日3回ではなく1日2回(朝晩)にできるか相談し、その上で1日2回になった場合は園で飲ませることが可能。
・必ず『与薬依頼書』と一緒に持参する。依頼書がない場合は飲ませられない。
・薬を持ってくるのはそのときに飲む1つのみ。たくさん持ってこない。
・薬が入っていた袋も持参をする(一日何回か・量はどのくらいかを確認するため)
・薬には油性ペンで名前を書き、誰のものかわかるようにする。
・「ジュースに混ぜてください」「給食の味噌汁に混ぜてください」などの依頼は不可。

飲み薬の投与は完全に不可な園もありました。

塗り薬について

上記のように与薬依頼書と共に持参すれば塗ってあげられる園もありましたが、完全にNGのところもありました。

・1回に塗る量がわかりにくいため塗り薬は原則不可。
・塗り薬はOKだが、保湿剤は不可。

その他

・湿布にも与薬依頼書が必要
・ガーゼの交換や包帯の交換も依頼書が必要
・医師からの処方の薬はOK、市販薬はNG
・爪切り、耳掃除の依頼はNG

他にも、軽度なけがをした場合、流水で洗ったあとに消毒・絆創膏を貼る場合があることや、爪が割れてしまって危ない場合に切ることがあることなどを予め保護者の方に伝え、承諾を得ておくことが多いです。

トラブルやクレームになることがとても多い

 この行為を、園としてはとても慎重に行っています。
トラブルやクレームを避けるために、飲み薬・塗り薬などだけではなく、全ての医療行為を行っていない園も存在します。
過去のトラブル経験から、最低限の処置でさえやめてしまった園もあります。では、具体的にはどんなトラブルが起こるのでしょうか。
例をあげていきたいと思います。

例1 持ってきた飲み薬が他の子のものと混ざってしまった
「園で薬を飲む」という特別感でうれしくなってしまった子どもが、「今日、薬持ってきたんだー!」と友達に見せ、友達も「僕もー!」と薬を出し、どっちの子のものなのかわからなくなってしまい結局どちらにもあげることができなかった。

例2 割れていた爪を切ってあげる際に子どもが動き、誤って皮膚を切ってしまった
保護者の方に説明と謝罪をすると、傷害罪で訴えると言われてしまった。

例3 トゲを抜いてあげたら化膿してしまった
園の柵で刺さってしまったトゲを抜いてあげたら、後日化膿してしまい、受診しなければいけなくなってしまった。園で通院して欲しいと言われ、園としての責任を問われた。

例4 塗り薬の適量がわからなかった
与薬依頼書の通りに塗り薬を塗ったが、量が多かったようで保護者から多すぎるとクレームを受けた。適量がわからなかった。

例5 絆創膏を貼ったところがかぶれてしまい、クレームになった
すりむいたところを消毒し、絆創膏を貼ったところがかぶれてしまい、皮膚科を受診しなければいけなくなった。園の責任だと言われてしまった。
貼った絆創膏に対して「安い絆創膏は肌荒れをするから高い絆創膏を使ってほしい」と言われた。

 よかれと思って子どものためにやったはずのことが、結果的にトラブルに繋がってしまうこともあり、大変難しい問題になっています。
感謝してくださる保護者の方もいれば、やらなくてよかったのにと感じる保護者の方もいらっしゃいます。
そこで、園として全ての処置をやめてしまうことがあります。

お迎えのときに「爪が割れてしまっていますのでお家で切ってあげてください」と言われ、「先生が切ってくれればいいのに!」と思ったという体験などがある場合、園として“爪切り”を行っていない可能性がありますので確認してみるといいと思います。

緊急時にはしっかりと対処します!

 例え医療行為を行っていない園だったとしても、緊急時にはしっかりと対処できるよう研修を受けていますので、ご安心ください。
熱性けいれんを持っている子に座薬を投与したり、アレルギーの子にエピペンを使用したり、救急車が到着するまでの心臓マッサージやAEDの使用などです。この緊急時の対応は子どもの命を守るための行動ですので迅速に行うようになっています。また、先生一人で行うのではなく、他の先生と連携を取りしっかりと確認をしながら行います。

最後に

 いかがでしたでしょうか?私自身、保育士の勉強をするまで、爪を切ることや湿布を取り換えてあげることが厳密に言うと医療行為だとは知りませんでした。同じように知らなかった方の参考になると幸いです!
 お薬や怪我の処置に関しては慎重になる方が多いと思いますので、気になることがあったら気軽に園に問い合わせてみましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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