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am7:25。



平日。
大体、7:25。


会社員の頃のわたしには、
大体、朝食の時間だった。


部屋から見える駐車場。
いつも停まっている、白いパッソ。


彼女は駐車場への敷地に、
正規のルートではないところから、
やってくる。


腰の高さほどあるフェンスを跨いで、
パッソに乗り込み、出掛けていく。


晴れの日も、雨の日も。
必ずフェンスを跨ぐからか、
いつもパンツスタイルの彼女。


遠目に見ても、齢、
わたしより少し上だろうと思われる、
小柄な彼女。


彼女が視界を横切ったら、
大体、7:25。





きっと近所に住んでいる彼女。
だけど話したこともない彼女。




それなのに、いつもなんとなく、
『いってらっしゃい』と
この部屋から聞こえない声を、
零してしまう。




大体、7:25。




大丈夫かな?
7:30になってまだ、
白いパッソが見えると、
あれ?お寝坊さん?と思い始める。
そして急いでやってきて、
いつものようにフェンスを跨ぐ彼女に、
『氣をつけて』と、
間に合え間に合えー、と。
心をおくる。




大体、7:25。













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春なんだよね。
こんなご時世でも。


3月の末。
氣づいたら。
白いパッソが、いなくなった。


そうして今。


今日はきっとお休みなんだろうな。
濃いグレーのワンボックスカーが、
停まってる。


どうやら大体、7:10。


わたしより明らかに若そうな男子。
異動してきたのかな。




『いってらっしゃい』




別に求められてもいないのに、
平日、大体15分早まって、
この言葉が、零れてしまう。










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何にも知らない彼女のこと。
独身だったなら、結婚したのかも。
仕事で異動したのかな。
いや転職して新天地かも。
引っ越しも、したのかな。
ただ他の駐車場に変わったのかも。
もう車、必要なくなったのかな。


安直な発想から深堀まで、
想像ならどこまでも。
可能性は無限大。


彼女はどこへ、行ったのかな。
このご時世であれど。
何かしらの、異なる環境になったことには、
違いないだろうから。


元氣に過ごしていたら、いいな。


なんて。


赤の他人を想う。


卯月最初の土曜日。






現在、7:25。






flag *** hana



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