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江戸時代の名工 長曽祢虎徹と源清麿

新選組局長 近藤勇の愛刀として知られている長曽祢虎徹(ながそねこてつ)は江戸前期の刀工 長曽祢興里(ながそねおきさと)によって打たれました。

「今宵の虎徹は血に飢えている」という有名な台詞があるように、江戸時代に刀工の切れ味を格付けした「懐宝剣尺(かいほうけんじゃく)」という本では最上大業物14工に数えられています。

虎徹の人気は当時から高く、新選組が活躍した江戸後期には大名道具とされ大変高価で「虎徹を見たら偽物と思え」と言われるほど贋作(偽物)が出回っていました。

実際、近藤勇の虎徹は贋作だったという説が一般的で、江戸後期の刀工 源清麿(みなもときよまろ)作刀だったのではないかという説があります。

新選組と同じ時代に活躍した源清麿も江戸三作の一人に数えられ、四谷正宗の異名を持つ名工です。
ある刀剣展示で「虎徹より出来が良い」という解説を見たことがありますが、幕末では虎徹と比べると清麿の方が安価であったと思われます。

虎徹と清麿を見比べる

2019年1月19日に備前おさふね刀剣の里で行われた山鳥毛里帰り応援プロジェクト刀剣鑑賞会で長曽祢虎徹と源清麿を実際に手に持って鑑賞することができました。(こんな機会は滅多にない!)

まず虎徹を持った感想です。
反りの浅いガッシリとした姿ですが、沸がついた湾れの刃文と明るい地鉄は華やかな雰囲気があります。

持ってみるとずっしり重く、確かによく切れそう。

長曽祢興里はいろいろな銘を使っていて、こちらの銘は「長曽祢興里入道 乕徹」通称 ハコトラ(角虎)銘と呼ばれ、この銘を使っている時期の虎徹の造刀技術は近古刀の中でも最高水準であると評されています。

続いて源清麿。
虎徹に比べると地鉄が黒い気がします。
刃文は清麿らしい互の目乱れです。

持った時の感想は「お、重い・・・!」
虎徹もずっしりしてましたが、それ以上に重たい。脇差なのにこの重量感。こちらもよく切れそう。
虎徹よりさらに剛健という感じがします。

源清麿も何度も銘を変えており、銘が清麿になったのは四谷正宗と呼ばれるようになった頃です。
なのでこちらも技術に磨きがかかった時期の作品です。

新選組ファンとしてはこの2振りを持って鑑賞することが出来てすごく嬉しい!

近藤勇の愛刀は本物の虎徹だったのか…源清麿が打った贋作だったのか…

今のところ真偽は不明ですが、どちらにせよ名刀であったことは間違いないと思います。

追記

ネットオークションに近藤勇の虎徹が出品され、約95万で落札されたそうです。専門家の見立ては偽物らしいですが…。

https://special.sankei.com/a/life/article/20200608/0001.html

参考文献
・日本刀大観 本阿弥光遜著 昭和17年
・日本刀鑑賞講座(改訂版三) 佐藤忠志著 2019.11.1
・物語で読む日本の刀剣150 イースト・プレス発行 2015.5.20

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