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【#5】いつも窓際の席で。

窓際族だった僕。逃げるように転職&移住した先で、行きつけの喫茶店が出来る。世にも珍しい、一見さんお断りの喫茶店。ここでは、喫茶店の常連客で、ある学校の先生のお話を紹介します。日々学校で奮闘されている先生方の、心のゆとりに、少しでも繋がれば嬉しいです。

■登場人物
僕・・・元・窓際族
マスター・・・行きつけの喫茶店のマスター
アカンちゃん・・・学校の先生。口癖は「もうアカン」


ここは、一見さんお断りの喫茶店。

この喫茶店には、コーヒーが飲めないのに、コーヒーへのこだわりが強いマスターと、社会的立場や背景も異なる多様な老若男女が集う。

カランカラン。

喫茶店のドアが開き、今日も誰かが入ってくる。

それにしても、久しぶりにここに来た。

実は、昨年末に第一子が誕生した。元・窓際族だった自分が父親になったのである。あの頃の自分からすると、おそらく心配でならない状況になっているだろうと思う。昔の自分からの「お前に父親が務まるのか」という厳しい声が聞こえてくるかのようだ。

はっきりとした父親の自覚がないまま今日まで来てしまった。もっと、産まれた感動の余韻に浸ったり、父親になった清々しさを感じられると思っていた。しかし、現実は違った。。

とにかく思うように寝てくれない。最近はバランスボールに揺られるとよく眠ることがわかり、真夜中に1〜2時間バランスボールに乗っていることもある。それで腰を痛めた。生後6ヶ月を過ぎると離乳食がはじまり、頑張って息子の食事も準備するが、日によって食べない日もある。そのため、食事の時間はほぼ倍になっている。料理を口に運びながら、どうかその左手で、スプーンを叩き落とさないでくれと願うばかりである。

家で仕事をしていると、息子が泣いたら子守りをする。
脳が瞬時に子育てモードに切り替えられない時が一番辛い。

そんな新米パパの僕が、読むとホッとする本がある。

ヨシタケシンスケさんの名著『ヨチヨチ父 とまどう日々』だ。

僕はこの本を世の全パパにお勧めしたい。この本だけが、僕たちパパの声を代弁してくれているのだ!!ありがとう、ヨシタケシンスケさん!!!

という感動を声高々に話してしまうと、きっとママは落胆すると思うので、 そっと胸の内に秘めておくことにする。

今夜もちょうど先ほど息子が寝た。今夜の戦いも長かった。ただ、戦いの後、何事もなかったかのようにスヤスヤと眠る息子の顔を見ると、全部許しても良い気分になる。「まあ、君が大きくなるまで、とことん振り回されてやるよ」と。そんな気分でさっきも息子の顔を見ていたら、妻に「父親の顔になっているよ」と言われた。そんなつもりは全くなかったのだが、こうやって自分も父親になるのかなと思った瞬間だった。


さて、話を戻そう。

僕「マスター、お久しぶりです。」

マスター「随分とお久しぶりだね。元気だった?」

僕「ええ、なんとか。息子が生まれてから四苦八苦の日々ですが。」

マスター「それは何より。何飲む?」

僕「そうですね、久しぶりなんで、いつものブラジル(のコーヒー)を頂きたいです。」

ブラジルの南ミナスにあるパッセイオ農園の豆。甘く香ばしい味わいで、コクもあり存在感のあるコーヒー。酸味が少ないので、個人的には好きな豆の一つ。

コーヒーを淹れていただき、ひとくち飲む。

うん。やっぱり、ここのコーヒーは美味しい。

カランカラン。

ドアが開く音。この音はもしや・・・アカンちゃんだ。なんと、小さい赤ちゃんを抱っこして来店。そうか、アカンちゃんも僕と同じ時期に出産をしたんだ。

あかんちゃん「お久しぶりです。」

マスター「やあ、お久しぶり。まあなんて可愛らしい赤ちゃん。」

アカンちゃん「ありがとうございます。報告遅くなりましたが、無事生まれてきました。」

マスター「おめでとう。なんかこっちまで嬉しいよ。」

アカンちゃん「出産前にはマスターに色々話を聞いてもらいましたもんね。その節はありがとうございました。まあでも、出産の喜びは一瞬で、今は毎日子育てに奮闘してますよ。とほほ。」

アカンちゃんも子育て頑張ってるのかー・・・と勝手に同情する僕。
勝手に周りの会話を盗み聞きしてしまうのは僕の悪いところだと思い、鞄からAirpodsとiphone13proを取り出して、音楽を聴くことにした。

森山直太朗さんの『夏の終わり』
この曲を聴くと、夏が終わろうとしていることに、一抹の寂しさを覚えるのは、きっと僕だけではないだろう。

アカンちゃん「仕事復帰は来春を考えてます。今も職場で頑張ってる同僚の話を聞いてると、早く戻ってあげたくて。半分責任感ですが。」

マスター「そっか。子どもはどうするの?」

アカンちゃん「うちは共働きなので、近くの保育園に預けます。その方が息子もいろんな大人や同世代の子どもたちと出会えるので、良い環境かなと思ったり。」

アカンちゃん「そういえば、この間、久しぶりに部活動を見学に行ったんですよ。みんな、頑張ってたなー。一年近く部活動に参加できてない私を慕って、教えてください!って言ってくれる子もいたり。可愛いんですよ。だから、あの子たちのためにもしっかり復帰してあげたい。もちろん、息子も大事です。きっと、これからはもっと忙しくなるし、もっと悩むだろうな。でも頑張ります。」

さすが、アカンちゃん。最後の方はマスターが全部聞き役で、一人喋りっぱなしだった。アカンちゃんにとっては、お子さんも生徒たちも大切な存在。彼らのために頑張れることが、幸せなんだろうな。応援したい。

アカンちゃんは、子どもと一緒に楽しそうに帰って行った。
さあ、僕も明日からもまた仕事頑張ろう。

この幸せを守るために。


子育てや仕事に奮闘していた少しの間、noteの投稿をお休みいただきました。それにもかかわらず、読んでくださっている方がいたと知ったのは嬉しい限りです。ありがとうございます。それと、自分の拙い写真をいまだに選んで活用してくださる方もいて、これまたこの上なく嬉しいこと。心から感謝申し上げます。

当初は妻が楽しんで読んでくれるためだけに書き始めた、このnoteでしたが、読者の方々のためにも頑張って書いていきたいです。よろしくお願いします。


今回も読んでくださり、ありがとうございました。

皆さんのお近くに、学校に行けずに悩んでいる方がいたら、ぜひ、この記事を読んでいただけると嬉しいです。

拙文ですが、自己紹介もさせていただいています。
よかったら、ご覧ください!

エッセイ処女作『いつも窓際の席で。』はこちらからまとめてご覧いただけます。



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