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「文学フリマ東京34」で買った本 2022/05/29

去る2022年5月29日、「文学フリマ」というイベントに行ってきました。
(第34回 文学フリマ東京)

(※書き出しの途中ですが、この半年後、自分も参加することになりました。このレポートの次の第35回です)



ほとんど何も知らなかったのだけど、お手伝いさせてもらっている
「みんなのつぶやき文学賞」
(※ツイッター投票で前年の小説ベストワンを決める、民主的な文学賞~)
の、記録冊子が販売されるという。
編集にもすこし関わっているし、顔を出そう!
というわけで、はじめて行ってみることにしたのでした。


いや嘘。

もうひとつある。


調べていたら、ストリップに関するいろんな冊子が出展される、というのも見て、2つが重なった今しかねえ~。という田中邦衛なのでした。
(正確には 田中邦衛 ← 長渕剛 ← 西新宿の親父(66歳))


ストリップはライフワークだから・・・。


はじめての「文学フリマ」

コミケ、の文学版、というのか。
文学と信じるものならなんでもいい。らしくて、このあと書くけれどなるほど会場は「文芸部」的な小説はもちろんあれど、途中からグラデーション変化し、どんどんタモリ倶楽部みたいな局所フォーカス同人誌(研究本)も並んでいた。

ブースのジャンル分けが絶妙で、
会場、片方の端が純粋文学という感じ(ブース名 ア~オなど)で、反対端にいたると(ナ~ノ)アダルト変態系へと、ゾーニングされている。
事前にWebカタログで目星をつけていたブース名を見ると、自分がつくづく ナ~ノ にばっか興味行くんだなあ、といやになるけれど・・・。

でもその分、ア~オのお客もナ~ノを眺め、逆もまた真なり。
そしてプロ作家さんの出展もあり
(「みんなのつぶやき文学賞」はプロ書評家の皆さんが運営しているので、こっちなのだ)
いろんな興味範囲・守備範囲の人たちが混じりあう、面白イベントでしたー。

というわけで、ものすごく散財した。

入口は規制入場が行われており、12時の開場時刻に着いていたが、長蛇の列がぐねりぐねり。遠くまで折り返す。

入口を通りすぎ、20メートルくらい歩いてきて折り返し地点

ビルに入ったあともまだまだ折り返しながら列が進み、やっと会場に入ったのは12時40分くらいだった。服に貼るシールを渡される。
「B」。
出展者は「A」で、このあと1時間ごとにアルファベットが進み、入場者がちゃんと入れ替わってるかチェックできる(コロナ禍なので)仕組み。

入口では無料でトートバッグが配られていて、これが買い物袋として重宝!

持参したバッグと、無料配布の「pixiv小説」バッグがパンパンに

29日時点で、揺れに揺れているピクシブの提供でした。

というわけで、あとは買って読んだ本の紹介をひたすら。



※書名には、著者のサイト等へのリンクを貼っておきます。

文学フリマで買ったもの ~全年齢編~


『みんなのつぶやき文学賞のすべて vol.2』

まずはもちろんこれ。
前年に出た新作小説のなかで「いちばん」だと思うものに、Twitterを使って投票いただき、決める、民主的な文学賞。その全記録です。
vol.2は2021年の新刊が対象

もともとは書評家の豊崎由美さんが創設し、2019年度まで10年間つづいた「Twitter文学賞」を引きついだものとなっています。なかなか歴史長いですよ~。

収録されている結果発表会では、ランクインした小説をプロ書評家のみなさん(若林踏、倉本さおり、橋本輝幸、長瀬海、山本貴光 ※敬称略)が
あらすじ・見どころ・今の潮流との関わり、なんかまで的確にお話ししてくれるので、ブックガイドとして読み応えばっちり。

さらに冊子用に、同率が多くて発表会に収まらなかった「海外小説部門9位&10位」の紹介や、
SFとミステリ各ジャンル2021年の動き、
「文芸の宇宙を楽しくさまようために」ブックガイドのガイド、
運営スタッフの推し本紹介。(←これ書いてます)
なども入ってパンパンです。

この後は書店展開などで手に入る予定ですのでぜひ。

ちなみに結果発表会の動画は、YouTubeでぜんぶ見られますよ。

(2022年5月刊)



すけにゃ庵『ポエム鉄工所』三部作


"元 路上詩人で 実家の鉄工所を継いだ社長が書きつづけた社内標語集" という体裁の 鉄工大喜利本(?)。

鉄工ワードと、町工場の喝、社員教育の世界観を引っかけ、さらに(大体)七・五調というしばりを課した偉大なこころみです。

先に思いついてれば俺がやったのに…!

とまでは思わないけど、これは、わかりますねえ……。こういうものなんだよね、アイデアが降ってくるって。そしてそれに憑りつかれてしまうというのは。
ブースで伺ったところ、ご本人には鉄工所勤め・詩人とも経験はまったくないそうです。
それでこそだ。

工場の壁に貼られているのだろう。
社長の、人材育成法。現代的。
粋。

嘘あとがきから覗く社長の人生がまた、染みます。三部作のラストは、とうとう現役を退く時なのでした。

なお、、、
もし「鉄工×社内標語」というこれを珍奇だと思うかたがあったら、
いまいちどAKBやPerfumeの歌詞をひらいてみてほしいです。
どれだけ「流行りのワード×恋愛あるある」 を引っかけるパターンでまかなわれているか、見えてくると思います。なんて。

(2019年11月~2021年9月初版)


『閑窓vol.3 閑日月に捧ぐ』

今回、自分が選んだものを眺めて「”コンセプト買い”してるな……!」と痛感した。いや、いいのだけど。こちらも素晴らしいコンセプトの本。

文庫本サイズ

毎回「架空の間取り」を作成し、それを共通した舞台として各作家が短編を仕上げる、というコンセプト。
vol.1では、平成元年に建てられ平成最後の年に取り壊されたアパート(の間取り)、vol.2では架空の旅館(の間取り)、そしてこの巻では架空の電鉄の架空路線図が示され、各駅にまつわる人々のストーリーが展開している。

「間取り図」は、もともと空想とは無縁の実務的なフォーマットだ。そこから逆にフィクションを生む、というのが大好き。またその実務=リアリティのフォーマットで見せられることで、存在感がやけに迫ってくる。
たとえばアニメキャラの名刺とか配られることがあるが、ああいうのも「”それ”が存在するから生まれたもの」を見せることで、空想世界へのアトラクションにしているのかもしれない。

(こういう感覚をもつのは数年前、”地理人”今和泉隆行さんの作る空想地図を知って衝撃を受けたことも大きい。ご存じない方はほぼ日のインタビューからどうぞ。架空の都市「中村市(なごむるし)」を地図情報だけで作り続けている人で、その地図を眺めると住民の営みがグワングワンと想像されてくる。リアルが揺さぶられる。
あとは、TVゲーム『ペルソナ』シリーズの舞台設定とか。毎回、架空の都市だがリアル

ちなみにvol.4は学校、最新刊のvol.5は商店街が舞台。今回フリーのペーパーに、商店街図と短編ひとつが掲載されていた。それが。
vol.3の駅のひとつ「祝坐町(しゅくざまち)」の商店街なのである。
世界はつながっている。

ちなみにタイトルの「閑日月(かんじつげつ)」とは、やることのない月日、心にゆとりがありゆったりしているとき、の意。
サークルさんから、もしお暇ならどうぞ……と差し出されているのかもしれない。

(2020年10月刊)


木藤富士夫『公園遊具』vol.9 『Pla rail Photo INOKASHIRA LINE』#1,2

『公園遊具』
公園遊具の写真集。
といって、ノスタルジー系ではない。
夜にライティングをおこなっての撮影ゆえ、背景が黒抜きになり、宇宙からの飛来物かと思うほど、遊具の立体・造形・彫刻としてのカタチがありありと写っているのだ。
こんな様子の遊具は見たことない。たまりません。

ロケ地は全国。住所、地図(一部)つきなので、見に行けます。
すごい造形・カラーリングがたくさんある。
・・・ウルトラ怪獣好きにもぜひ・・・。

表紙写真は和歌山交通公園の遊具


『Pla rail Photo』
プラレールを街なかでロケして撮った写真集。
今回は井の頭線がテーマで、どのロケ地も沿線。
表紙のように綺麗な写真がバーン、と載った下に、小さく引きの画(ここで撮ってました)も掲載。TVゲーム「ピクミン」とかやってるときの、小さい目線で見た世界のおもしろさ、綺麗さがあって楽しい。
ちなみに#1が渋谷から吉祥寺までの下り路線、#2は上り路線となっている。

お花が綺麗

(『公園遊具』vol.9 2020年3月刊
 『Pla rail Photo』#1,2 2018年8月、2019年5月刊)



すけにゃ庵『せんとうえにっき8 リニューアル銭湯2022編』
木藤富士夫(屋上パンダ)『銭湯』

銭湯ものの冊子もけっこうある

銭湯ものを2冊まとめて。

2018年以降にリニューアルされた銭湯6軒のリポート『せんとうえにっき 8』。表紙のように猫のキャラクターとなった著者&友人が巡ります。
銭湯・サウナ好きながらも「背中燃える」とか「そこのサウナはまさに地獄だった」等、熱さに慣れすぎてなくてちょうどよく読め、楽しい。pixivでも公開されてます。

『銭湯』は都内の銭湯をおさめた写真集。正対やシンメトリーといった落ち着いたアングルで、ペンキ絵・タイル絵の富士山や湖、青空、整然と並んだカランとシャワーなど、銭湯内装の美しさを堪能できます。

収録されている銭湯は現在閉館したものもありますが、以下のとおり。
(ローマ字表記から書き起こしたものなので間違ってるかもしれません)

杉並区 :天狗湯、観音湯、小杉湯
世田谷区:松の湯、月見湯温泉
豊島区 :健康ランド末広湯、桃仙浴場、大塚記念湯
北区  :殿上湯、テルメ末広
中野区 :高砂湯
荒川区 :仙石湯
港区  :竹の湯
中央区 :旭湯

(『せんとうえにっき 8』2022年5月刊
 『銭湯』2015年8月刊)


留守key『芥川也寸志/交響三章 前編』
『ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調 作品27』
『MANGAいむじか 2022・春 No.0』

クラシックの1曲を採り上げ、それが生まれる時の作曲家のドラマをマンガ化されているサークルさん。
メンバーは原作の「のぶ」さんと、作画の「あお」さん。(ゆでたまご先生みたいだ!)

自分はクラシックはさっぱり(ポン)で、その良さを体感したいな~、したいな~と思ってもう何十年にもなりますが、
クラシックマンガの金字塔『のだめカンタービレ』を読んで、指揮者の仕事はほとんど演劇の演出家の仕事なんだぁ~と思ったことはある。
楽譜=戯曲を読み解き、そこで表現されていること・真の意図・その作品が向かうべき場所を見つけ、楽団員=出演者にそれを伝えながら、一緒に向かうという。
あと古典落語(これは作者不詳がほとんどだけど)もそういう面があって、この噺はどういう姿であるべきか? って各落語家さんが考えてそれを実践してる。
作品のあるべきかたち。

『MANGAいむじか』でのピアニスト日高志野さんの寄稿にも「この曲に取り組む際、まず一度意図的に楽譜以外の情報を排除しました」という言葉が出てきた。純粋に作者と向き合うために、ということだろう。

なんて話の前に!!

そもそも、歌詞のない音楽に「表現しているもの」がある、なんてこと、むかしの自分は知らんかった
歌詞のない音楽は、みんな「なんかいい感じ~」を目指してるんだとしか思ってなかったし、
いまもそう思ってる人はいるはず! と信じてる。
信じてもしょうがないが。

面白かったなあ。

(『芥川』2022年5月刊
 『ラフマニノフ』2010年2月初版、2012年2月第2版
 『MANGAいむじか』2022年2月刊)


『大人ごはん』vol.4

大人はごはんだ。大人にもなって、ごはんのことを考えないでどうするのか。ごはんが生活を、体をつくり、すべてのリズムの基礎になっていく。
なんて説教はたぶん書いてない。
すいません、まだ全部読んでないんです。。。
なにしろ目玉記事「世界のクロサワ、ごはんを語る」だ。

黒沢清監督と会って映画の話をしないのは無理だ。いや、『スパイの妻』の銀獅子賞受賞でメディアが一斉に取り上げた際も、その宣伝で高橋一生さん(”一生くん”)目当てに集まった人々の反応にも、黒沢清ってまだこんなに知られてないのか。どうなってるんだ!
とは思ったが、わざわざインタビューしに行く人は、そりゃあ映画の話を訊いてしまうだろう。
でも、ごはん。
こんな貴重なインタビューはない。

しかも、ごはんを通して映画の話を・・・ではなく、真摯に、黒沢監督はふだんどんなごはんを食べますか。だ。そうかこういう「生活ぶり」を訊かれるのって、芸能人とか、セレブばかりなんだなあ、と改めて思う。

大好きな京風きつねうどんについて語り始めると、その場にいた全員が思わず「うどん、食べたいですね……」と呟いていた。

p.3

むかしNHK「トップランナー」で『ドラクエ2』を語る黒沢さんも面白かったなあ。

そうして、どうあってもやっぱり映画の話にはつながっていくのだった。

すべての記事・・・ちゃんと読みますね。すみません。


(2022年5月刊)



みぞグミ絵璃『絵日記まとめ本 ねておきる 2021.07.03〜08.31』

これはかわいいですよ ジャケ買いですよ。

この表紙は買っちゃう
水色が印象的な表紙をめくると、遊び紙は黄色。

内容はタイトル通り、夏休みのあいだ、寝ておきて、マンガの案が進まない。そのほかあれこれ。でも暗くもならず、一日いちにちってそういうもんだよなぁと。

読んでいるあいだのことを思い返すと、これは、心地いいんですね。ペン書きのあのタッチの絵と文字がとにかくいい。ふんわり系でもぐにょぐにょせずデッサンがとれていて。絵も文章も、どこをもってくるか(デフォルメするか)のソウルって共通するのかもしれない。
ともかく、心地いい。
つづきもあったので買えばよかったな。マンガ作品も。

(2021年9月初版)


さいきん『東京の生活史』とかを読んでたけれど、日記というのも、ひとの生活を読む行為。しかもけっこう同人誌(ZINE?)で、人気あるみたいで。

みんなのつぶやき文学賞の母体(?)でもある書評サイト「ALL REVIEWS」のhiroさんは、日記文学にフォーカスあててらっしゃる。
神保町の棚貸し書店「Passage」に、hiroさんの棚があります。


文学フリマではもう一冊、日記を買った。


六花ましろ『OLになるつもりじゃなかった』

ストリッパーの六花ましろさんの日記本。2020.12~2022.4。ということはぜんぶコロナのあいだか。もうそんなにか~。

ストリップの客は踊り子さんの表現を見る。ダンスを見る。ポラタイムの人となりを見る。SNSも見る。それとは別の表現として、ここに手描きの日記がある。それも見る。それは思っている以上にすんなりと地続きで、六花さんのひとつの表現だった。

やっぱ日記はいいな。

さいごに、広島第一劇場のことが綴られていた。
「閉館するする詐欺」と呼ばれながら延命しつづけ、それでもついに本当になくなってしまった劇場。私もあそこから平和記念公園行ったな。それに、路面電車の停留所に「紙屋町」があって、あ、ここか、と井上ひさしの芝居「紙屋町さくらホテル」とつながった。広島。一時期、推しの人が早いペースでよく出演して、つづけざまに行ったから、東京のどこそこよりも広島のあのへんのほうが身近な街並みになっていた。大通りから入るとすぐ風俗街。その奥に劇場があった。広島には広島城がある。地方のストリップ劇場は、みんなお城の近くにある。
この劇場は『彼女は夢で踊る』という映画に映された。映画の終わりに、広島第一劇場はとうとう閉館した、と字幕が入るけど、制作時の思惑と違って、公開した時はまだ「詐欺」で盛り返していた。閉館してしまったのはそのあとだ。



dec『再生停止のその後で。』


コスプレ系AV監督の著者は、友人で”お嬢様”であるNに誘われ、はじめてメイド喫茶に足を踏み入れる。その途端「見た目が【直球ど真ん中のストライク】」であるメイドに心を奪われ、人生で初めて「推しのいる生活」がはじまった。しかしそれは、たった4か月で終わりを告げる――。

というわけで、2020年1月21日に突如「推し」の【再生停止】(『電影少女』設定なのか?)報告を読むところから幕を開け、さかのぼって2019年9月14日の出会いと、店での思い出がひたすら綴られる。それはあまりに情熱的であり、ハイペースで、ガチ恋だ。いくらかかってるのか?なんて、そんなことを気にしてどうなるというのか?

プレゼントが、次回”ご帰宅”した際に身に付けられていた喜び。誰にでも言えたAV監督という身元を、推しにだけはごまかしてしまう気持ち。デビューの日にいられなかった取り返しのつかない寂しさ。認定証をランクアップさせるためにコーヒーだけで会計し”お出かけ”と”ご帰宅”をくり返すテク。あれこれ意気込むのを「推しはそんなこと頼んでなくない?」と言われ頭を冷やした瞬間。イベントに合わせ、推しの同僚のチェキを撮り、推しへのメッセージを書いてもらったこと……。

すべてがあるあるであり、しかしこれだけの純度で文章化されることは少ないだろう。

筆者は、2019年9月から、2020年1月の間に爆速で「メイドカフェの楽しみと悲しみの総て」を経験してしまったのである。
(略)
私は7年間@に通っているが、たぶん私の7年の経験と同じ、もしくはもっと濃密な活動をしている。
というか、人って4か月の間に、推しに対してこんなに愛情を育めるものなの?(略)
筆者の推しへ感情と行動の全てが惑星くらいでかすぎて、ユユちゃんこれを受け止めてたの!?すげーな!と思うくらいである。
私は女なので、「ガチ恋」がよくわからなかったけど、ガチ恋ってこういうことなんだなとわかった気がした。
良く言うと「推しに人生の一部を、丸ごとささげたオタク」悪く言うと「キモ・オタ」なのだが、その清濁を両方同時に知れることはすごく貴重だ。

はてなブログ「水の人美です。」内
〈メイドカフェオタクエッセイ「再生停止のその後で」をおすすめし解説する記事です。〉


販売ブースで伺ったところによると、チェキを見かえしながら、その日にお店であったことを思い出し、書いていった。という。
自分はいま秋葉原あたりに住んでいるので、いまこの瞬間にも、こんな近くにこんなドラマが隆起しては消えていっているんだな――と。

ストリップでも、「推しは推せるときに推せ」は同じだし。

そんななか(嫌な視点かもしれないが)面白いのは、この著者が仕事ではコスプレ姿の女優さんとナニしているっていうところだ。

それはもちろん何の矛盾でもないし、かといって単線で結ばれるものでもない。



水の人美『季刊性癖』

さて、いまブログを引用した〈水の人美〉さんの本。まだ年齢制限じゃありません(一応)。
「性は「性質」の性」という言葉を掲げて発行している、各号8ページのフルカラー誌。あらゆる「好き」に関するインタビュー。内容は濃い。

各号、表紙絵のイラストレーターさんが異なる。

今回、最新号ということで無料(!)だった「vol.47」の特集は
「掃除機でスカートを吸引することに性的興奮を覚える男」
「女が男をブッ飛ばす映像作品の総本山 Club Q代表インタビュー」

など。

バックナンバーには、「樹海散歩の達人の20年」「経血食レポの人の現在は人気リョナ作家だった!」(vol.45)「メンヘラ暴力バー ちんちろりん 訪問体験記」「ヒルをこよなく愛し自分の血で育てる男 吉田さん」(vol.43)「飲みサー画像に性的興奮 2019年上半期40万円分の写真買取をした男」「樹海に10回死体観察に行ったギャル」(vol.36)などの文言が並ぶ。
ちなみにvol.36、死体観察ギャルはいつも同行を頼んでいる「師匠」がいるとインタビューで答えていたのだが、それがvol.45で「達人」として現れた御人である。人と人の縁がつなぐアンダーグラウンドの世界ヨ。

最近はわからない人にぶつかりにいってわかるための努力をしたのに全然わからなかったー!ってことが楽しいということに気づいて。私がわからなくても、わかる人が読者にいるかも?と思って性癖の記事を書いてます。”自分”と同じであることが必ずしも「正」ではないし同じじゃなくても何の不便も不快感もないんですよね。そういう人がいる世界が当たり前なんだって勉強になります。

vol.47より 発行者:水の人美インタビュー

ここ1年弱ちょこちょこ、コーネリアス事件でまた地表にあらわれた「’90年代の悪趣味」について考えていたのだけど、こういう態度はたのもしくて。
’90年代のなかの、ある領域にあった(……擬音でいうと「アッヒャッヒャ」みたいな……)あれ、なんなのか。それを自分もどれくらい引きずっているのか。
なんてことはともかく。

ちなみにこちら、第1号を「vol.15」とウソこいて発行しており、通算号数はてきとうとのこと。

(「季刊性癖 vol.47」2022年5月刊)



田島大
『4泊で4カ国! 弾丸ヨーロッパ鉄道旅行記 また自由に旅ができる、その日のために』
『密な旅路で 世界一短いベネチア珍道中』

急カーブして、旅行記です。
なんならいちばんふつうに楽しんで読んだかもしれない。ゆっくり読んだ。旅行者の気分で、その場にいる気持ちで旅した。

作りは簡素ながら、左は98ページで200円。安い!

2019年末の12月25日に職場である高校を早めに退勤し、羽田へ。北京で乗り継ぎ、ドイツはミュンヘンから、鉄道移動でオーストリアのウィーン、イタリアはヴェネツィア、フィレンツェ、ローマ。そしてバチカン市国も入って4カ国を回りおえ、ローマ・フィウミチーノ空港を12月30日の夜に発つ。そして大晦日の夜に日本へ帰るまでの旅日記。4泊7日?かな?
風景スナップも多数で、雰囲気がよく伝わってきた。
執筆の現在時は2020年の5~6月で、自身のサイトで掲載していたらしい。

基本的には「実用を心がけて」書いた、との弁のとおり、羽田空港からのレンタルWi-Fiとか、鉄道の予約のとり方、ヨーロッパによくある「1日市内乗り放題券」などの情報がしっかり書かれてあり、また文章的な修飾も少なく、構えたエッセイ的に時間軸を前後させたり伸び縮みさせたりすることもないので、ほんとうに旅行をそのまま追体験しているようだった。

それでも、文章というのは人となりを隠せない。ミュンヘン中央駅では、

動き出した機関車が「ドレミファー…」というインバータ音を奏でる。日本ではすぐに消えてしまったが、シーメンスの本国ではこの音が健在だ。(p.14)
行き止まりの側から列車を見ていく。電気機関車・2等車4両・食堂車と1等席が半々ずつの客車・1等車が2両という8両編成。機関車が行き止まり側…つまり後ろに連結されているが、先頭の客車に運転台があり、そこから遠隔で機関車を操縦して後ろから押させる仕組みだ。(p.24)

などという記述があり、おや?と思う。各都市ではよく路面電車に乗る、4泊のうち1泊はウィーン~ヴェネツィア間のナイトジェット(寝台列車)……そう、著者はテツであった。
タイトルの『鉄道旅行記』も、うっかり読み逃していたが、あそこに力点があるのだろうな。

ミニ冊子『密な旅路で』のほうは、この旅のうち2時間だけ滞在したヴェネツィアの思い出を「小説の形」で書いたもの(小説とエッセイは文体で区別するものじゃないと思いますが)。
合わせて読むと、描写における縮尺の違いが見えて楽しい。

※これを読んでから、ひとの旅行記を読みたい衝動に駆られ、検索してみると旅行予約サイトにすごい数の投稿があるんですね。
「4travel」は海外・国内とも。「じゃらんnet」は国内。「STW」は海外のみで、コンシェルジュが書いたものとお客さんが投稿したものの2パターンあるもよう。
たとえば4travelの「パリ」旅行記だけでも、
15706件!!
だ。誰が読むねん。
読むけど。

(『弾丸ヨーロッパ鉄道旅行記』2020年11月初版
 『密な旅路で』2021年12月刊)



郷里の娘『キャバレー百物語』

2018年に閉店したキャバレー「白いばら」(銀座)元ホステスによるサークル「郷里の娘」が、閉店前の写真・記録本につづいて制作したという
キャバレー ヤベエ客エピソード集

ホログラム表紙

とにかく造本は綺麗だし、百物語という導入も見事。作品として仕上げる力がすごい。
もちろん内容のパンチ力もヘビー級で、おっさん(じいさん)達の言動から放たれる身勝手な世界観に、爆笑する人と心底疲れ果てる人と、分かれるかもしれません。

そんなひとには、第5章「闇夜を照らすほのかな明かり」(77話~90話)が、いい話を収録しているパートなのでおすすめです。

入店すぐのとき、長野の農協のおじいちゃんに住所を聞かれてうっかり教えてしまった。
半年後、家においしいきゅうりがたくさん届いた。

これは牧歌的な(?)第1章第3話

おもろうてやがてかなし、かなしゅうてやがていらだち。
販売ブースにいらっしゃった方とお話しして、キャバレー客のほうがストリップ客より、プライド高かったり、文化レベルの高さを鼻にかけてたりするのかな。かもなー。いや同じかな~? とか、思いました。

ちなみにキャバレーって何?と言われてもよく知らない。音楽やダンスのショータイムに、ホステスの接待がある店。だろうか。
「白いばら」と同年に「ハリウッド」(赤羽・北千住)も閉館し、東京にはもうキャバレーはなくなってしまったそうです。

ああ、記録本も買えばよかった。BOOTHで買えます。

(2019年8月刊)



はんこ屋トヨン『はんこ豆本 苔手帖』

すべて手作り・手印刷(はんこ!)でできた、苔の図鑑。
中身の文字も、苔の図も、はんこを作ってそれを押すことでできている……!

小さな紙袋入り。紙袋にもはんこが!
さらにグラシン紙(たぶん)で包まれている。
大きさ。綴じ目の花ぎれ、見返しの紙も何種類かあるそうな。

苔の絵がまたすばらしくて。
苔って、ググってみるとどれも小さい芝生、みたいになってしまうけど、もっとアップで見たのだろう、それぞれの苔の個性が出た色んな形が載っている。
苔への愛、はんこへの愛、本づくりへの愛、センス。なんとも愛おしい本。

そうなのよ、紙の本って、そうなのよ……。

(2020年5月刊)



アセロラ4000『嬢と私』(SW)

ブースで見つけて驚いた。この連載、知っている。
ウェブサイト「Story Writer」に掲載され、かのAV監督カンパニー松尾さんが推薦していた、キャバクラ文学(なんだそれは)である。
しかも、ちゃんと出版されている!

めちゃくちゃいい表紙
あらすじ

語り手=主人公は著者本人と思われるバツイチの派遣社員。コールセンターで日々薄れかけた夢(小説家になる)を抱えながら何となく生きている。職場の仲間も、バンドマン、芸人といった、ありきたりすぎて夢を追いかけているのかどうかもわからない者ばかりだ。
そんな中、ふとした偶然で入ったキャバクラで、彼はマリナ嬢と運命の出会いを果たすのだった――。

と、
マリナ嬢は覚えてたが、こんなにキャバクラにたどり着くまでのストーリーがあったとは……?

気になってウェブ連載を少し見直したら、この本はどうもそのシーズン1、2を主要部分にして(今はシーズン5まで来ている!)そこに前後のパートを加筆・修正したもののようだった。

連載部分が面白い。
アセロラ4000はもちろん「マリナ嬢」にメロメロになる。キャバクラの楽しさに放蕩し、マリナを描写しては、必ず「そして、巨乳」と付け加える。だが夢は短く、会計で我に返ることしきり。
家賃5万円。月収は18万円。キャバクラ1回、3万円はくだらない。指名料、ついつい延長料、最後にサービス税は25%だ。
マリナからの「ごはんいこ」に、ご飯は行くけどお店行けないよ、と返信していた初期のアセちゃん。同伴のお約束を飲みこみ、店に行き、金が足りずボーイに頼み込み明日にしてもらうアセちゃん。生誕祭の誘いを受け、プレゼントとドンペリの出費計算で頭がやられ、とうとう「身内の不幸」を理由にバックレてしまうアセちゃん……。

その(※恐らく本人には)身を切るような苦悶と恍惚の日々の描写におりおり挟まれる、古きよき昭和プロレス知識・芸能知識の比喩が、えもいわれぬ間抜けなトーンの文体を生み出し、この物語(っていうか実話だろ!)を得がたいものにしている。

のだが、この書籍版はどうしたことか!
そのマリナとの日々が、なんだか嘘くさいパートで、サンドイッチされているのだ。
たとえば派遣先の仕事仲間。人物がキャラ化していて、お話として書いている。マリナが関わらないパートはおしなべて「うまく構成しようとしてる感」があり、どうも地続きの読み心地にならない。
著者はおそらく、それなりに主人公「アセロラ4000」の成長物語として構成したかったらしい(前に「ずっこけ」と付くにせよ)。

だが、なぜ主人公が、自分の人生に向き合う必要があるのか?

出版に際し、そんな小知恵のついた自主映画脚本みたいな展開をしなければ、「小説」というものになれないと思ったのだろうか???

それよりもずっと「アセロラ4000」の小市民的金銭算段とマリナの馬鹿笑いこそ、「小説」であり「文学」なんじゃないのか。



これ、さいきん読んだ 社会学者 岸政彦先生のマイミクさんによる報告。面白すぎて、悲しすぎて、社会に潜んでいる罠が怖すぎて、でもやっぱり面白すぎる。
文学だと思う。

(まあ、社会学なんだけど)


アセさんには是非とも
「バカ、バカ、バカ、私のバカ。」
と言って、猛省していただきたい。

ともかく連載版と書籍版は、なかなかちがうものに仕上がった。
連載版もお読みいただきたいな。


上に書いたdecさんの『再生停止のその後で。』と続けて読むと、お店の子に入れ込む、という以外は全然違って、すごい気分になります。
『再生~』には書かれなかった金銭不安が、アセさんの主要テーマでもあり、
ペンネームは、割り物のアセロラを「4000円」と言われたことに由来している(嬢の勘違いか計算か、実際は2000円)。



藤色ガーゼ『Sight』

ブースでうかがった、制作方式が面白い。
コロナ禍のGoToキャンペーンがきっかけで、格安になった高級ホテルで撮影を敢行、できた素材をランダムで複数枚ずつ知り合いの物書きさんたちに送り、そこからインスピレーションを受けてショートストーリーを書いてもらった、とのこと。
被写体の彼女、と語り手との様々な関係性の物語たち。

写真で一言、ならぬ一段落。
いい企画だなあ。

ちなみにこのかた、ブースに「生ぬぎパンツあります。 って言ったらみんなはどう思う?」と看板を置いてて、ボーダーラインをはかってた。

(奥付に年月日記載なし)


『梅園京子の実家体験記』

生い立ちと実家(父親・母親)に関する思い出。著者自身はツイッターのプロフィールに「発達障害(ASD・ADHD)+自己愛性人格障害(自己診断)」と書いている。
不勉強な自分が何か言えるものではないけれど、堅い筆致できっちりと、これだけ振り返り書き出すのは並大抵ではなかったろうと思う。

本書の目的は、親への復讐や当てこすりではなく、似たような家庭環境に育った方とのお話の機会を得ることです。本書をお読みいただき、もし自分も似たような家庭環境にお育ちだと感じたならば、是非ツイッターやLINEにコンタクトを頂ければと思います。

(●前書き より)

(奥付なし)


町中華探検隊『極私的町中華探検記』

どの町にもある中華屋で、個人経営、うますぎずマズすぎず、定食は充実、中華と言いつつカレーやカツ丼も対応、そして……行列してまで入る店ではない……それが「町中華」

裏表紙は青で、中華ツートンカラーだ。

2014年頃からライター北尾トロ氏によって提唱され、やがて雑誌連載を持ち、2016~2019年にかけテレビでも一般化していった、という概念である。詳しい経緯は町中華探検隊もう一人の創始者、下関マグロ氏による巻頭文「「町中華」というワードの誕生と普及について」でまとめられている。

(自分も、由来は知らないまま「あそこのお店、町中華って感じで~」などと、バイトのお客(この辺メシ屋ありますか?)に言ってたりした。たかだか8年間のワードだったとは!)

一見統一感ありそうな装丁にして、テーマが町中華であればエッセイ、研究、落語(!)、ポエム(!)と何でもあり。

特に労作は、町中華に頻出する店名「五十番」の来歴を追った「五十番研究 ~昭和町中華のホームラン王~」だろう。
かのホームラン王・王貞治の実家であった墨田区の中華「五十番」。王の両親は店ごとこの屋号を買い取り、昭和3年(1928年)に開店したのだが、由来はさらに昔にさかのぼる。
明治時代、横浜。
外国人居留地の建物には〇番館という数字があてがわれており、その「五十番館」にいた中国人が店を開いた際、自らの住所を店名にしたという。
そこで働いた従業員が独立していくなかでさまざまに「五十番」を名乗り、中でも「神田五十番」は商標を登録し、のれん分けと店舗展開を進めていった……。
という、説明文はしかも、日本の最北、北海道は「東京五十番」(創業昭和36年)のサイトに載っているそうな。

しかし、登録商標を得た「神田五十番」系だけが五十番ではなく、本書には著者驚きの発見が記されている。
日本には様々な「五十番」の血脈が息づいていた。
「家系ラーメン」とか「二郎系」などは町場の研究者も多いだろうが、
「五十番」。
今回の研究も、また続報が待たれる。

(2022年5月刊)


番外 ~文学フリマで貰った紙(フリーペーパー)編~

買ってない、タダでもらっちゃったもののご報告。

余談ですが、いくら文学(読んでみないとわからない)とはいえイベント。
どうやって目を惹くかという販促作戦が
(結局のところ、残念ながら)
必要なんですよね……。運営の方も「本屋と同じ悩みになってくる」とおっしゃっていた。

内容をどうわかりやすく広めるか。
こちらとしては「優れ(すぎ)た嗅覚」をもちたいけど、大量に取りこぼしたものがあるだろうし。

そんななか、無料で試し読みさせてくれるフリーペーパーは、なるほど大事なんだなぁぁと思いました。初 文学フリマにて。


黒井ひとみ ※タイトルなし

いまや日本最北端のストリップ劇場となった「ライブシアター栗橋」(いうて埼玉県)に所属されている踊り子、黒井ひとみさんの「妄想」小説。
配布前はこんな告知がされていて、私もちゃんと黒井さんの好きなところ書きました。
面白いよ~黒井さんは。

内容はそういうわけだから書けないけれど、小説だからこそ、逆にものすごく生々しい、色んな感情が伝わってくるのでした。
そして、前書きにかいてあるが、

続きは劇場で。

なのです。



どろろ衆『どろろ考・百鬼夜半之草々 号外』

手塚治虫のマンガ『どろろ』の研究サークルによる。タイトルは「ひゃっき よわ の くさぐさ」。
どろろ主人公 百鬼丸の着物の柄(船のイカリ模様)は、虫の「イカリモンハンミョウ」が由来ではないか? という考察だ。

この虫は石川県で主に生息し、初めて記録されたのは1935年。1928年生まれのオサムシ先生が通った宝塚昆虫館(1939年~1968年)にも資料があった可能性は高い。
また、百鬼丸のイカリ柄は頂部がロープをとおすような穴になっていない=虫の頭部のデフォルメという可能性があるのではないか、とのこと。

なんちゅう微に入り細を穿つ研究!

「どろろ衆」は、うめこ さん河原端がら さんが主宰とのことです。リンク。


梅生(うめお)『泣き女、亡き女』『私、さっき本屋でうんこもらしました』

短編2編。

ログイン中の利用者とランダムに通話を繋ぐアプリ「佐藤さん」。そこで知り合い、一度も合わないまま不思議な友情を育んだ2人。しかしある日突然、葬儀への出席を頼む葉書が届く――。
この距離感と、初めて出会う彼女の家族、やけに人の少ない葬儀の様子、佐藤さん(もちろん「斎藤さん」のこと)の使い方で通じ合う誇らしさ、とか、いろんな描写が描きすぎず離れすぎず、定型の言葉になっていない感情を紡いでくれて。
それが『泣き女』。

もうひとつのほうは実にタイトルがミスリードだけれど、会社で自分を嫌う相手との、表面化されない戦いの話。無視をするが自分のファッションは真似てくる、など、敵対心を持っているのはわかる。だが「わかる」と言った瞬間に、考えすぎ・被害妄想・あの人こわいです、に持ち込まれるだろう。マウントと見下しの心理戦を事細かに描いていてたまらなかった(夏目漱石の『明暗』の心理戦がむちゃくちゃ好きなので)。
また対立だけでなく、2人と違う次元である清掃員さんの存在が、またよかった。

これが、タダかあ。すごいなあ。


文藝同人無刀会 チラシ

公式サイトの通販で買えるサークル誌と、Amazonで買える同人メンバーの著作が載ったチラシ。
富山県のサークルさんだそうな。

あんまり関係ない話だけど「同人誌」について考えた。というのも、もはやコミケのほうで目立つのは1人のサークルが多く、サークル名も作者名も同じか状態。言葉のとおり「同人」が集まったサークルというのは(そもそも発祥がそっちだが)いまや文芸ばかりなり。貴重だなあ。

れもんサワー1500「おじさんの恋愛」

レンタル彼女やパパ活に身を置く女性を描いたマンガ『明日、私は誰かのカノジョ』の、書評に題を借りたショートエッセイ。
パパ活から片思いしてしまった、アラフォーおじさんの恋愛(恋愛じゃないだろ、という意見も含め)。
アセロラ4000さんのブースでいただいた。名前がね。どういう関係性なのか。
アセさんに比べて、こちらの筆致はしっとりめ。

渋澤怜『クリエイターのための『内発性』というガソリン、またの名を愛。』

帯に「書きたいけど書けない人、スランプ中の人、始めたいけど始められない人が読む本。」と大きく書いてあり、こっちがタイトルかと思っちゃった。
世は大SNS時代であり、褒められるために書いてしまう、実は内発するクリエイティブの意思がない「ゾンビ状態」に陥ることはよくある。自分が本当に目指している地点、本当に創作したいものを取り戻すための、著者自身の体験を踏まえて書かれたもの。
タイトルのとおり、それは「愛」なのだと。まずはどれだけささやかでも、もらった愛、返せた愛の収支を毎日書いてみよう。というアドバイス。
noteでも全編無料公開されています。
また「愛」に関する童話(寓話)「空と番った海、鳥と番った魚」も挟み込み。こちらも無料公開中。



文学フリマで買った本 ~年齢制限?編~


ヴァーグマン『AV監督10年やったけど、分からないことだらけです。』

AVメーカー「LUNATICS」の監督ヴァーグマンさんのエッセイ本。

どれも、AV知識がなくても読めるように丁寧で落ち着いた筆致。AVの企画に頭を抱え、演出に悩み、痴女役の女優さんに本性を見抜かれ、編集でまた知恵を絞る。性欲と業界への適性はまた別物であるとか、さまざまなトピックがあげられていて興味深いです。
ローションが取れなくて困ったら「にがり」をかけて分離させるといい、などは本当にお役立ち知識。ご本人のnoteにかなり公開されているようなので、試し読みされてはいかがでしょう。

(2020年9月刊)



さくらあずき(さくらいろ)
『AVエキストラ日記』
『精液の味』

『AVエキストラ日記』
AVの”脱がない人”を務めた撮影日記、なんと78作品分
家で、教室で、カフェで、プールで、飛行機で、MジックMラー号の前で、"すぐそこで致されているが気づかない"人たち。 細かなエピソードで、撮影現場のまともさと異常さの片鱗が見える1冊。です。やっぱりあの業界も産業なんだよね。

『精液の味』
何を食べるとどんな味変が起こるか? を、サンプル取りし続けた報告。
のべ 4年9ヶ月 105人 400回!!

さまざまな食品ごと、また嗜好品などの別も載っているが(バリウムは最悪だったらしい)、どうもうんこやおしっこと同様、摂取したものの影響をそのまま受けるようで。

体に悪いとされている食べ物ばかり摂っていると精液もまずくなり、逆に体に良いとされているものは口に含みやすい(おいしい)味になります。

5ページ

そうして最終的に至る結論は、
「バランスのとれた食事が良い」
という健全極まりないものだった。この不健全図書にして この感動とばからしさはひとしおです。

イグノーベル賞!!!

あと同じかたが『ビッチ、処女に戻る』というのも売っていたので、それを読めばこのサンプル数のサイドストーリーが書かれていたのかもしれない。。。

(『AVエキストラ日記』2020年11月刊
 『精液の味』2019年12月、増補第4版)


OJAICO『Wandering Tokyo VOL.2』『Wandering Tokyo! vol.3』

自称”逍遥カメラババア” OJAICOさんによる、東京アングラ界隈体験記。
メンズストリップやBLクロッキー会等々を巡るさまが一人称で綴られておりました。
ちなみにvol.1は品切れ、現在はnoteで無料公開されているようです。(vol.1だけ手書き)

本職(?)のカメラ仕事、恐山の写真集(『巡礼』)や、馬の写真集(『んま。』)も出品してらしたのに、アングラ趣味でこっちだけ買ってすみません・・・。
青森の尻屋崎あたりで放牧(!)されているという寒立馬(かんだちめ)は、一瞬「これ馬か?」と思うほどゴツゴツの、競馬のやーつとは全然違った体躯をしております。すごいよ。

(『VOL.2』2018年8月刊
 『vol.3』2019年12月刊)



ストリップ関連本 10冊


と、ここまででもはや1万7000文字。

こちらは別項を立てて書こうと思います。。。


お付き合いいただきありがとうございました。

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