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【さっき見たヘンなユメ】無口な恋人

ぢんまりとした地下街で、私は無口な恋人とウィンドウショッピングしている。

旅行代理店の前を通りかかると、店の中から酔っ払って大騒ぎしている若者たちが出てきた。その中の一人が、巨大なダンゴムシのような生物を長い針金に突き刺しブンブンと振り回していて、それが私の頬をかすめた。

気持ち悪さに激昂した私は素早く前にステップして若者に思い切り蹴りを入れようとするが、筋肉の反応よりも感情が先走ったせいで、見事に空振ってその場にひっくり返ってしまう。

若者たちはダウンしている私には目もくれず、小型衛星の個体燃料について議論を交わしながら、さっさとその場を去っていった。気づけば、大切な恋人も姿を消してしまっており、私は精神耐性と自尊心にいくらかのダメージを受けた。

なんとか平常心を保った私は、落ちていた針金で自分の下腹部を切り裂き、体内から砂だらけのダチョウの卵を取り出して恋人のBluetoothに接続すると、いつもの待ち合わせ場所にただちに戻ってくるようにメッセージを送信した。

そこで私は目が覚めた。

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