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極めて私的なブックランキング2020

これは本当にここだけの話なんですけど、ぼく毎週金曜日に『広告本読書録』というnoteを書いているんですね。広告に関連する本の読書感想文。ええ、もうそろそろおしまいにしたいなあっておもってるんですけど。

で、こないだ友達とzoom飲みと称したGoogleMeet飲みをやってたときに「ハヤカワって広告の本しか読んどらんやろ。お前、頭の中身が偏ってまうで」と言われてしまいまして。いやいやいやいや。ぼく広告本以外も読んでますよ。読んでますって。

と、いうことで今回は2020年に広告本以外で読んで良かった本を紹介するナリ。ざっくりと100冊ぐらいある中から上位5冊に絞ってご開陳します。あなたの知っている本は果たしてランク入りしているでしょうか!

第5位:遅いインターネット 宇野常寛 著

これを読み始めたのは第一回目の緊急事態宣言発出の頃でした。内容をかいつまんで言うと「インターネットによって失われた未来をインターネットによって取り戻す」という…全然かいつまめてないですね。

要するに最近のよくないことのほとんどが速すぎるインターネットによってもたらされているんだからもっとゆっくり考えろよオマエラ、という提言です。ちょっとニュアンス違うかもですが、まあアウトラインはそんなかんじかと。そしてこの提言、熱烈支持します。ページをめくるごとに納得感が深まる一冊でした。

ちなみにこの本を読みはじめた瞬間、ぼくのMacBookProは物理的に遅くなりました。立ち上がらないわ、繋がらないわ、アプリはクルクル虹が回ってばかりだわ。遅いインターネットどころか遅いMBPです。やれやれ。

第4位:「仕事ができる」とはどういうことか? 楠木建×山口 周 著

ぼく常日頃から仕事ができたい(新しい日本語)とおもっているので、こういうタイトルの本があるとイチもニもなく飛びつくんですね。一橋ビジネススクール教授の楠木さんと、電通出身の著作家である山口さんの対談です。

これまではスキルがもてはやされてたんだけど、これからはセンス勝負の世の中になるよ、って話。ほら、よくいるじゃないですか、何でも資格取ってからやる、みたいな人。あるいはビジネス書「ばかり」読んで頭良くなった気がしている人。そういうのはもうオワコンですよって話。

多くの紙面を割いて「センスがいいとはこういうこと」の事例を紹介しているんだけど、いちばん好きなのは若きコルトレーンがマイルス・デイビスのバンドにいた時のエピソード。ソロが長いコルトレーンにしびれを切らしたマイルスが「最近のお前、ソロが長いぞ」と怒るんです。するとコルトレーンは真顔で「どうやってソロを止めたらいいかわからない」という。

そこでマイルスは「いいか、ソロを止めたければサックスを口から離すんだ」…どうですかこのアドバイス。最高でしょ。

で、そうかそうだよなということでステージに臨むんですが、また見事にソロが終わらない。とうとうマイルスが怒ってステージを降りる。観客もブーイングの後、会場を後にする。ほかのメンバーも帰って照明も落とされた。それでもコルトレーンはサックスを吹き続けていた、という。

このエピソードを楠木さんと山口さんは「素晴らしいインサイド・アウト」「内発性の発現」と絶賛します。ね、超わかりやすいでしょ。

第3位:ネット興亡期 杉本貴司 著

これは読み応えあった。なんたって757ページもあるんだよ。なんでそんな長編なのかっていうと日本のインターネットビジネスを先導してきた立役者たちの物語だから。サイバーエージェント、IIJ、iモード、ヤフー、楽天、ソフトバンク、Amazon、オン・ザ・エッジ、ライブドア、ミクシィ、LINE、メルカリ、USEN、GMO…一斉を風靡したサービスや社名が並びます。

登場人物は藤田晋、堀江貴文、宇野康秀、熊谷正寿、笠原健治、山田進太郎、そして孫正義。ほかにも懐かしい人から最近頭角をあらわしてきたヤング起業家、さらには天寿を全うされた人も。そんな彼らの栄光、挫折、裏切り、欲望、大志、失望、失敗…インターネットという新しい産業が生まれる際の成長痛がぎっしり詰まっています。

これ一冊でWeb界隈の相関図が頭に入るから渋谷界隈のリーマンは必読かもしれません。

私事で恐縮ですがぼくがWeb転職サイトの会社に飛び込んだのが2000年。当時のことをおもいだしながらこの本を読みました。ちょうどサイバー藤田さんが史上最年少で上場した年。まだホリエモンはオン・ザ・エッヂの頃。楽天も小さかった。ガリバーヤフーは転職ポータルをリクルート一社独占契約にした。懐かしい…なにもかもすべて。

第2位:細野晴臣と彼らの時代 門間雄介 著

ぼくが心から尊敬してやまない偉大な音楽家、細野晴臣さんの評伝です。ご本人曰く「もうこれ以上話すことはない」というぐらいの膨大なインタビュー、資料、周辺の取材によって構成され、過去の細野本といくぶん重複する内容があるにせよ、全体を通しては読み応えある仕上がりです。

タイトルの「彼らの」がポイントで、細野さんだけでなく周辺の人間関係、あるいはそれぞれの個のエピソードやヒストリーにも言及しているところが特筆すべき点。小坂忠さんとの再会のくだりは、往年のファンにとっては落涙必須でしょう。

考えてみればぼくが細野さんの音楽にはじめて触れたのは小4のとき。日本中を熱狂の渦に巻き込んだYMOブームの洗礼を受けました。そこからが面白いもので細野さんのルーツに向かってトロピカル三部作、HOSONOHOUSE、キャラメルママ、はっぴいえんどと遡っていったのです。

当時はもちろんインターネットなどもなく、頼りになる情報ソースはレコードの裏やライナーノーツに書かれたクレジットたち。もう貪るように読んでこの曲のドラムは誰、ギターはどいつだ、キーボードは?と人物特定していったものです。

それだけに「彼らの」記述がしみじみ読み応えある一冊に感じられました。

第1位:やさしいレシピのおすそわけ#おうちでsio 鳥羽周作 著 

なんとなんと2020年ぼくにとってナンバーワンの一冊はレシピ本でございました!いやこれほんと、買ってから何回読んでるか。ま、料理作るたびに読むから回数稼げるっちゃあ稼げるけど。でもそういう問題じゃないの。とにかく絶賛リピート中の本。こうなると名著といってよいのでは?

と、いうのもここに載ってるレシピは他の料理本と違い、本当にカンタン。しかも超絶おいしく仕上がるのです。

監修は代々木上原の一つ星レストラン『sio』オーナーシェフの鳥羽周作さん。お店のレシピからコンビニ食材を活用したオリジナルカンタンレシピまで、ミシュランシェフなのに全くもったいぶらずにご開陳してくれます。もう感謝しかない。

『無限パスタ2』なんて最高に美味しくて最高にカンタンです。ぼくも5回以上つくったおかげで、さすがにレシピが頭にはいっちゃいました。ステイホームで家メシが増える中、強い味方といえるのではないでしょうか。

そしてとうとう好きが高じて2021年の1月1日、限定販売の贅沢弁当おせちらし重と日本酒ペアリングセットを求め、緊急事態宣言発令後も姉妹店の『パーラー大箸』に週イチで通い詰めるまでになったとさ。

リアル店舗に足を運んでおいしさの答え合わせができるのも、この本の優れたところではないでしょうか。

ちなみにいくつかのレシピはクラシルの動画にもなっています。

本とあわせて動画もチェックすると、より再現性高くつくれますよ!

■ ■ ■

いかがでしたか、ブックランキング2020。ふりかえるともっとイキった本も読んだ覚えがあるのですが、二回以上繰り返して読んだとなると、まあこんな感じになりますな。

あ、でも振り返ると小説がランク入りしてないな。村上春樹の新作とか読んだはずなんだけど…2020年に読んで印象に残っているのは新刊ではないね。たとえばこんな。

番外:思い出トランプ 向田邦子 著

去年、書店で見かけて懐かしくて買いました。いまさらですが向田邦子さん、いいですよね。味わい深い13の短編です。

さて、なかなか緊急事態宣言が解除されそうにありませんが、そして旅に出ることがままならない日々ですが、読書は見知らぬ世界に旅立たせてくれます。心が自由になります。食卓が豊かになります(俺だけ?)。太ります(俺だけ)。アマプラネトフリTwitterに飽きたらぜひ、活字に現を抜かしてみてはいかがでしょうか。

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