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薄楽詩集

40
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2023年1月の記事一覧

【詩】きのうまでの恋

【詩】きのうまでの恋

 放置されている恋がある
 きのうまでの菫
 きのうまでの薔薇
 きのうまでの山査子
 一輪挿しの残酷な幸福をありがとう
 あざやかな絶望が
 いま 日付をまたいでいる

 もどっちゃだめよ
 たぶん 君は そういうだろう
 もどるもんか
 ぼくは 昨日の君に
 希望を投げつける
 どうしようもなかったのよ
 好きになるのも嫌いになるのも
 君のむなしい言い訳が
 山彦のように冬の夜空にこだまする

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【詩】裂けるチーズの朝

【詩】裂けるチーズの朝

裂けるチーズの朝

妻の好物は裂けるチーズだ
朝の食卓で
ぼくが棒状のそれを囓ると叱られた
こうやるのよ
しなやかに裂けゆく白いつやつやのひと筋

ぼくがやると 太すぎるといってまた叱られた
妻はじつに優雅に裂いて
そうめんのような極細のそれを皿に敷いていく
旨いのかそれ ときくと
バカね 裂くのがおいしいのよ といった

ぼくは 珈琲をひと口飲んで
こどものころさぁ
はじめてチーズ食ったとき

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【詩】新宿虎落笛

【詩】新宿虎落笛

  

新宿虎落笛

         満天に不幸きらめく降誕祭    
                 西東三鬼

満天に不幸がきらめいて
わたしのさみしいのうみそは
はまべのようによこたわり

満天に不幸がきらめいて
わたしのひえきったこころは
発光ダイオードのように青ざめる

満天に不幸がきらめいて 
地上では 青白いサイレンとともに
あなたの生誕を祝う花火が打ち上がり

満天に不幸がきら

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【詩】満天に不幸がきらめいて

【詩】満天に不幸がきらめいて

満天に不幸がきらめいて
脳みそが浜辺のやうによこたわつてゐるふゆまくら
”お誕生日おめでとう” 
サイレンの音して ウクライナ
聖夜にもミサイルが降る

書を捨てろ 
銃が先だ
この十字架が目に入らぬか

あ。シャボン玉。
あれは ばくだんよ

”お誕生日おめでとう” 

 カミはミテイル Yes!
 カミはミサイル Yes!
 カミはコガイル Yes!

  またサイレンだ

 まさしく 三鬼夜

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